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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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悪をも殺す狂気



「何だよ、お前らも大罪魔獣とやらを倒してたのか?」



 そこへ声をかけてくるギィルディルヒ。多分私が、残る大罪は五つ、と言ったせいだろう。それにより、会ったことがあると考えたのかもしれない。実に愉快そうな表情を浮かべている。



「それは…………それより、あんたやっぱ、強いんだ」



 けどそれは、結果逃がしてしまった。その事実を正直に話したら、また強烈に煽ってくるに違いない。だから私は、わかりやすくも話題を変えた。



 いかに気に入らない人間だとはいえ、その強さは本物だ。大罪魔獣を倒したという話も、認めざるを得ない。



「そうさ、オレァ強えのさ。魔王ってのも、ぶっ殺してやるよ」




 揚々(ようよう)と語るこの男は、本気……というよりも、ゲーム感覚でいるのかもしれない。本気でゲームを楽しんでいる……これが一番近いんじゃないだろうか。



 それだけならばまだしも、その考え方に実力が伴っているからタチが悪い。その狂気が、とりあえずはこちらに向いていないのが幸いといったところだろう。



 この気まぐれにも思える男の『ゲーム相手』の矛先が、いつこっちに向くともわからないけれど。



「ま、過度な期待はしねぇでおくか。雑魚はともかく、魔王に魔神、大参謀ってぇのが名前負けしてねぇのを祈るばかりだが」



 期待だの、祈るだのとやはりゲーム感覚なのだろう。こんな感覚で人を手に掛け、連続殺人鬼として世間から恐れられた。その恐れられた理由は、何の勘違いもない、ただこの男が異常者であるからだ。



 だから、戦力としては申し分なくても……私達は、この男を信用はできない。旅に同行させようとも思わないし、申し出ても断るだろう。



 とはいえ、悪魔や魔物を倒すという利害だけは一致している。都合のいい話かもしれないけど、この男が私達に牙を向かないか、この世界が終わらない限りは私達はこの男を倒そうとも捕まえようともしないだろう。



 大罪魔獣を倒したという実力は本物だし、ちょっと悪い言い方だけどこの男なら一人でも死ぬことはそうそうないだろうし。



「あなたは……全部、倒すつもりですの? 魔王も……大参謀、も」



 魔王を倒す、と、それだけでなく明らかに楽しんだ言い方。あっさりととんでもないことを言うギィルディルヒに、オルちゃんが反応した。気のせいか、大参謀、との言葉が出るときに間が空いていたように感じた。



「叶うならそうしてぇなぁ。が、オレの体は一つ。オレの目の届かねぇとこで退治されちゃどうしようもねぇしなぁ。ま、オレ以上につえぇ奴がいるとは思えねえがな」



 私達が倒すかもしれない、他の人が倒すかもしれない……そんな、自分にはどうしようもできないことが起こることを除けば、自分が全てを倒したいと豪語している。相当な自信家か、やはりただの異常者か。



 その言葉だけなら全面的に応援したいほど、まるで主人公のような文面だが……残念ながらその本人が、これをゲーム感覚でやっている。真面目に取り合うだけ無駄だ……そう、思っていた。



「……そう簡単にキルデは……大参謀は、倒せはしませんわよ……」



 けれど予想外に、呟いてみせたのは質問した張本人であるオルちゃんだった。言った本人自体、自分が矛盾したことを言っているのに気づいているのだろう、複雑な表情を浮かべている。悲しそうな……倒さなければいけないんだという、義務感が。



 もしかしたら……自分こそが、キルデを倒さないといけないと思っているのかもしれない。偽りの記憶とはいえ、キルデとは幼なじみで……そして、彼に対して抱いている想いは、本物だろうから。



 その言葉の意味がわからないギィルディルヒは、わけがわからないと眉を寄せている。今まで飄々とした態度だった男の困惑顔は、何だか新鮮に感じる。



「……ま、いいか。獲物を取られたくないなら、少なくともオレより先回りするこったな」



 オルちゃんの言葉の真意には触れず、それを何と受け取ったのか……宣戦布告と受け取ったのかもしれない。あなたに倒される前に、私が奪う、と。だからギィルディルヒは、それに対して宣戦布告した。



 私達に背を向け、木刀を肩に乗せてから歩き出す。



「行くの?」



「あぁ。ま、久々に人と話せて楽しかったぜ。縁がありゃまた会おうや」



「できることならお断りしたいですわね」



「ケケッ、嫌われたもんだな」



 表情は見えないが、それでも愉快そうに笑っているのがわかる。背を向け歩きながら、木刀を持っていない方の手を挙げぶんぶんと振っている。残念ながら、それに応えて手を振る陽気な人は私達の中にいないけど。



 遠ざかっていく男の背中を、私達は無言で見つめる。狂気に染まった人物であろうと、私達と同じく戦いに身を任せる一人。オルちゃんの言うように、また会おうとは思わないけれど、なぜだろう……少し、胸がざわつく。



 ううん、きっと気のせいだ。別に互いの連絡手段を知ってるわけでも、居場所を知ってるわけでも、互いに会おうと思い合っているわけでもない。もう、会うことはないだろう。



 私達は、振り返り……ギィルディルヒとは反対方向に向かって、歩き出していく。

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