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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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死が身近な世界



 はぁ……仕方ない。一応謝っているわけだし、もう少しだけ付き合おう。たった一人で今まで過ごしてきたというのなら、私達に会ったことでテンションが上がったと思えば、まあ何とか……耐えられる。はず



 軽くため息をついて、振り返る。その時私の目に映った男は……そのへらへらした表情が、一瞬驚愕に変わったように、見えた。



「な、何です?」



 何だかわからないが、すごく視線を感じる。今までの言動から、どこか身の危険を感じると体を抱きしめるようにして、身構える。また変な言葉でからかわれるんじゃないかと思って。



「おめえ、よく見たら…………いや、何でもねえ。気のせいか、全然ちげぇし」



 だが、私に向けられて言われたのは、何とも歯切れの悪い言葉だった。まじまじ、というほどでもないが私を観察するように見つめていた彼は、目をそらす。今の言葉の真意はわからないが、察するに、もしかして私が知り合いにでも似ていたのだろうか?



 とはいえ、何だかすごく失礼なことを思われている気がする。鼻で笑われた気がする。



 何を考えているのか、少しの間目をつぶり……開いた時には、もう先ほどまでの真剣な表情は消えていた。不敵な笑みを浮かべた、何だか胡散臭い表情に。サングラスに紫色の髪、おまけに木刀を持つ姿は完全に不良だ。



「……その木刀……」



「あぁ、これか?」



 どうやら無意識に呟いていたらしい。私の言葉を聞いた男は、わかりやすく上機嫌になって木刀を見せつけてくる。



「どぉよこいつ、いいもんだろ。この辺りの艶めきなんかそりゃ格別でなぁ」



 そこからなぜか、木刀の自慢話が始まった。正直な話、何を話しているのかよくわからないが……自身の使用する武器ともなれば、愛着も湧くのだろう。私にはそんなものはないから、わからないけど。



 それに……艶めきはともかくとして、その威力に凄まじいものがあるのは確かだ。あの魔物を簡単に斬り、殴り飛ばし……何か、木刀に秘密でもあるんじゃないかと思えるくらい。



「木刀っつっても……そこいらのナマクラより、よっぽどいいだろ?」



 自慢話中も、煽ることは忘れない。ちらりとではあるが、エドさんのことを見ていたような気がする。



「今、視線を感じた気がするんだが……気のせいかな?」



「気のせいだよ自意識過剰野郎……と言いてぇところだが、事実だよ。そいつがナマクラなのか、使ってる人間がヘボいのか……無様なもんだなぁ」



 敵意を、というより挑発を隠そうともしない。先ほどの魔物との戦いのことを言っているのだろうが、それにしてもこんなにストレートに言ってくるなんて遠慮のかけらもない人物だ。



 初めて会った人間に、そんなにはっきりと……



「おっと怒んなよ? オレァ正直者なんだ。それに兄ちゃんは、図星つかれたと感じてんじゃねぇか?」



 木刀の切っ先をエドさんに向け、男が笑う。彼の言う通りなのか、エドさんは何も言い返さない。



 エドさんが何も言えないのに、私達が何を言うわけにもいかない。悔しいけど、この男の言葉を黙って受け入れるしかないのだろう。



「しっかし、さっきのでけぇ魔物、少しは期待したんだけどなぁ。もう少し、楽しませてくれるかと思ったが、図体だけのデカブツか」



 木刀を肩に乗せ、男は退屈そうに語る。その言葉に、私は信じられないものを聞いた。今この男は、期待と……楽しませて、と言ったのだ。



 それは、つまり……



「あなた……まさか、この状況を楽しんでますの?」



 信じられない、とばかりに告げたのは、オルちゃんだ。私が感じた、気持ち悪いくらいの違和感。魔物を屠る姿が楽しそうであったり、誰彼構わず挑発したり……そして、今の言葉だ。



 その問い掛けに対し、男は……



「あぁ? ……ったりめぇだろ、こんな死が身近な世界、そうそう経験できるもんじゃねぇ」



 当然だと、狂気の瞳で、そう笑った。



 ぞわっ……と、嫌な気配が背中を撫でる。この男は、戦いを……生き物を(ほふ)ることを、何とも思っていない。魔物とはいえ生き物には違いない。いかに、倒さねばならない相手とはいえ……この、男は……好んで、生き物を殺している。



「……あなた、いったい……」



 戦いを楽しむ男に、オルちゃんが問い掛ける。男の中に眠る、狂気……それは、こんな世の中になってなお、大きくなっているようだった。いやむしろ、戦いが間近になったこの世界になってから。



 戦うのが、殺戮が楽しいと語る男。これを、本気で言っているのだ。死に近い世界……ここで過ごすことに男は、一切の躊躇がない。自分も他者も関係なく、命というものの価値観が私達とは根本的に違うのだ。



「オレか? オレはギィルディルヒ……ギィルディルヒ・バトンだ。長いし言いにくいだろうからギィルでいいぜ」



 何者かを問われた男は、本気かちゃらけているのか、自らの名前を告げる。本人の厚意からなのだろうか、愛称のようなものまで伝えられるが……そんないきなり、距離を詰められようとしても困る。



 ……が、何だろう。その名前を聞いた瞬間、頭の中で警報が鳴る。本人も言うようにこの特徴的な名前……初めて聞いた気がしない。どこかで聞いたことが……見たことがある名前な気がする。

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