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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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不在の精霊



「でねー、強いしカッコイイし……それに水色の髪がとっても綺麗なんだー!」



「へー!」



 ユメちゃん達に対しての状況整理が終わり、思い出に浸っていた私は自分でも驚くくらいに嬉しそうに話している。



 多分、思い出を振り返り懐かしさを感じられるのと、こうしてユメちゃんが興味を持って聞いてくれたのが嬉しかったのだろう。



 特に先生、ティファルダ・アラナシカの話は、ユメちゃんだけじゃなくエドさんも興味ありげに聞いていた。手合わせしたいと言っていたけど、同時に話を聞く限りでも相手にもならなさそうだ、と苦笑いを浮かべていた。



「ところでリーさん、さっきからどうしましたの?」



「へ?」



 話が一区切りしたそんな時に話しかけてきたのは、不思議そうな顔をしたオルちゃんだ。どうしましたのって、私そんな変なことはしてないと思うんだけど……



 するとオルちゃんは、私の目をじっと見つめて。



「話も一段落したでしょうに、この場から動こうとせず何かあるのかと思いまして」



 ……と、告げたのだ。



「あー……やっぱりわかっちゃうか」



 あまり意識しないようにしていたのだが……どうやら、オルちゃんにはわかっていたらしい。私が、ここから動こうとしないのを。それは、ただ思い出話に花を咲かせているから、だけではなかった。



 隠しても仕方ないし、正直に話そう。



「実は……レイがね」



「精霊さん?」



「うん……ずっと、姿を見せてくれなくて」



 その理由は、私と仮契約中の精霊、レイの不在である。実はあれ以来、レイは姿を見せてくれないのだ。バランダに対して暴走してしまった、あの時から。



 呼びかけても反応はないし、言ってしまえば無視されている。というのも、いなくなった、というわけではないからだ。



「どうやら近くにいるらしいってのはわかるんだけど……私の呼びかけにも応えてくれなくて。だから楽しい話をしてたら、ひょっこり出てこないかなーなんて」



 そんなことで出てきてくれるなんて、そんな可能性は限りなく低いことくらいわかっている。相手は子供じゃない。バカげた考えだと、自分でも思う。



 でも、それくらいしか思い浮かばない……そんな自分が情けない。



 理由は、何となく……いや、確実にこれだとわかるものがある。バランダに対して暴走してしまった私、その後のタイミングで出てこなくなったレイ……これが偶然だなんて、あるはずない。



 あの時のことは、覚えていない。ただ時間が経つにつれて、ぼんやりとではあるがあの光景が頭の中に、刻み込まれるように思い出される。



 バランダに対して行ったこと……とても、天使と呼べるものではない。意識を失った相手に対しても、あんな仕打ちをしてしまうなんて……自分で自分が、恐ろしい。



 そんな、天使らしからぬ私の前に現れてくれるはずがない。それに私自身、ああなってしまった原因がわからないのだ。命の危機に対する防衛本能……ならまだ、まだいい。それならば、まだ。



 けど、そうでなかった場合。防衛でなく破壊本能だった場合。私は……またいつああなってしまうか、わからない。



 ああなってしまった私が、オルちゃんを、スカイくんを、エドさんを、ユメちゃんを……仲間を、襲わないとも限らない。もしそうなったら、私は……



「っ……」



 自然と、唇を噛みしめる。その際唇が切れて、血が流れてしまうのも構わないほどに……



「……さん! リーさん!」



耳元で、声が聞こえた。それにより我に帰ると、オルちゃんが私の耳元で声を上げていることに気付く。あまりに考え事に集中しすぎて、黙り込んでしまっていたようだ。



 耳元で大声を上げられるものだから、我に帰った今ちょっとうるさいと思ってしまうが、私のことを心配してのことだと思うとそうも思っていられないな。



「お、オルちゃん、どうしへぶっ!」



「目を覚ましてくださいな!」



 呼び掛ける彼女に返答……しようとしたところで、頬を思いっきりビンタされた。すっかり油断していた私はあまりの衝撃に体勢を崩し、私を押し倒してオルちゃんは馬乗りになってきた。



「ち、ちょっぶっ! 待っへぶっ! も、もう元に戻っへばっ! だから落ち着いぶひゃっ!」



 考え事をしていたためにちょっとぼんやりしてしまっていたが、戻ってきた……そのことを伝えたいのに、喋る暇もないくらいに往復ビンタが両頬を襲ってくる。



 逃げようにも乗られているために動けもしない。



「うわあぁぁぁん! リーさんが! りーさんがぁ! 考え事の世界に行ってしまいましたわ! 戻ってきてくださいぃいいいい!」



「ぶふふふふふふっ!」



「お、オル姉待った! そんなにしたらホントに逝っちゃうから!」



 それからビンタの嵐がやんだのは、ビンタに対して痛みを感じなくなってきた頃だった。



「……も、申し訳ありません」



「ぶんん、ぶびゃびばいぶぇ。べんべんらいびょうぶばぶぉ」



「……申し訳ない」



 かなりの数の往復ビンタを浴びせた張本人は、バツが悪そうに小さく正座をしている。私は「うんん、気にしないで。全然大丈夫だよ」と返したのに、尚も彼女は気まずそうだ。



 大丈夫というのに、そんな執拗に謝る必要はないんだけどなあ。



 そもそもは、私が黙りこくっちゃったのが悪いんだし。ちょっと、たんこぶによって視界が狭くなったのは気になるけど。



「顔があんなに腫れ上げて……女性は怖いな」



「オルねーちゃん容赦ない……」



「ワゥン……」



 縮こまっているオルちゃんと側にいるユメちゃんとは別に、男二人組と一匹は少し離れたところでボソボソ何か話している。何だか、気の毒なものを見るような目でこっちを見ている気がする。

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