死神の行く先
『ではデハでは……お話モこれくライに、そロソろ切り上げルとするヨ』
どうせこの声も、変な実験の成果だろう。声の発信先を悟らせないとか、そんな類の。声の場所も魔力も感じない……悔しいが、お手上げだ。
『人造人間はデータさエあれば復元でキるし……そうダ。そこにハアナタ以外いなイト言ッたが、最後にそいツの相手でモしてモラえると助かル。でハ~』
勝手に会話が切られ……何も、聞こえなくなる。随分身勝手な悪魔だ。これまでの悪魔とは違い、奴にはその悪魔的な頭脳と考えを実現させる技術がある。さらにその思考は、とても危うい。
死神は、決意する。奴を止める、と。明確な標的を決めて、行動を起こすこととする。
そう、決意を固めた時だった。そこへ……ズシン、と何かが着地したような、巨大な音が鳴り響いたのは。
「グルォオオオ!」
地を揺らすほどの雄叫びを上げる、そこにいた生物は……ドラゴンだ。それはリーシャと戦闘を繰り広げた、ポチと呼ばれていたドラゴン。死神を獲物と捉え、大きな口を開けて吠える。
自分はさっさと退散しておきながら、こうしてドラゴンをぶつける。それに最後の奴の言葉から、このドラゴンは死神を倒すためのものではない。少しでも死神の戦闘データを集めるためだけの、ただの材料だ。どうせどこかから観察しているのだろう。
ふざけた奴。人造人間とはいえ二体に対しても、慈悲はなかった。それどころか、自身の命にも感心はないのではないか。冗談ではない、これ以上奴の好きにさせるか。
「……ふっ」
だから、奴の思い通りにデータをあたえてやるつもりはない。死神はその場でジャンプし、見上げるほどにあるドラゴン、ポチの顔の位置まで跳躍する。
目の前に死神を捉えたポチは口の中に、炎のエネルギーを溜めるが……
「--!」
大きく開いたポチの顎を思い切り蹴り上げる。すると溜めていた炎は口の中で爆発し、口の中が大惨事に。体の外は鋼鉄のように硬くても、中はそんなことはないのだ。
よろけるポチ。その隙を死神は見逃さない。揺れるその脳天に、思い切り拳を叩き込む。
「--シッ!」
「……!!?」
ガンッ、と、強烈な音が響いた。
……リーシャが精霊の力を借りてようやく殴り飛ばし地に叩きつけることのできた生物、ドラゴン。それを死神は、ただの拳で、たった一撃で地に叩きつけ、既に意識まで奪っていた。
地に降り立った死神は、ポチの眼前へ。気を失っているため反応はないが、死神にとっては何の問題もない。起きてようが気絶してようが、脅威となりうる存在を排除するだけだ。
ドッマに作られ、最後まで利用されただけの存在であったとしても……もしここで息の根を止めなかったら、今度は人間達を襲うかもしれない。そうさせないためにも、ここで消しておく必要がある。
死神がポチの体に触れ、手先に力を集中させる。何をしたのか手を離すと、ポチの体が徐々に赤くなり始める。
その場から離れ、背を向けると同時にポチの周りにドーム状に結界を張り……次の瞬間、赤くなった体が内側から爆発し、それは結界の中で無残にも粉々に砕け散る。
結界のおかげで爆発の被害はなく、爆発によりポチの体は無数の肉片となりその生命活動を完全に停止させる。残ったのは、中身のない肉体が転がっている光景だけだ。
もうここには、死神以外の誰も居はしない。ならば、もうここに居続ける意味はない。
戦闘……と呼ぶにはあまりに一方的な戦い。戦いの終わりを告げるようにビュゥと風が吹き、死神のフードが外れる。フードの中に収めていた、髪がなびく。一切の汚れを感じさせない、真っ白な髪が。
黒をイメージさせる死神とは正反対の、長く美しい白髪を手で押さえながら……死神は、定めた標的を求めて歩き始めた。




