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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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新たなステージへ



「……これが、私達が旅をするまでの、話だよ」



 ふぅ。これまでのことを一気に話したものだから、さすがに話し疲れた。最後まで聞いてくれたみんなは、途中で口を挟むこともなかった。



 私が物心ついてからのことを。


天使の血が流れていることを知ったこと

お母さんとお姉ちゃんの存在を知ったこと

お父さんが悪魔に殺されたこと

カーリャさんと一緒に生活しながら修行をつけてもらったこと

神力学園に入学したこと

アカリちゃんと出会ったこと

彼女を通じてヒロトにエルシャ、オルちゃんと出会ったこと

学園が悪魔に侵攻されたこと

アカリちゃんが殺されたことヒロトが魔王になったこと

エルシャが私達を逃がすためにその命を散らしたこと……



 話している間、目を閉じるとその光景がまぶたの裏に浮かんできた。決してもう戻ることはできない、平和な時間。こんなことになるなんて、思ってもみなかった。



 神様であるエルシャがいた。天使の血を引く私の正体がいつばれるかわからなかった。それでも、あの平和な時間が続くと、勝手に思っていたんだ。メルガディスの時みたいに、悪魔が襲ってきてもみんながいれば乗り越えられる、なんて……



「最初は私とオルちゃんの二人だけで旅をしてた。でもスカイくんに出会って、エドさんと出会って、そして、ユメちゃんに出会った」



 人魔戦争がなければ、ここにいるみんなには出会わなかったかもしれない。それでも、こんな形で出会いたくはなかったな。ユメちゃんには、アカリちゃんの紹介で会えたかもしれない。特殊とはいえ、神力を使えるエドさんとも会えたかもしれない。スカイくんとも、もしかしたら……



 少ない可能性。でも、ゼロではない可能性。私とオルちゃんだけじゃない。アカリちゃんや、エルシャや、それにヒロトや。ここにいるみんなが集まって、笑い合っている世界。そっちを願った方が、何倍もよかったよ。



「……そっ、か」



 話し終えた私は、ため息を漏らすように呟くユメちゃんを見る。今何を思っているのか。いきなりこんなに話されて、まとまってないのかもしれないな。



「なるほど……そんなことが、あったのか」



 その中で、一際早く内容を理解したように漏らしたのはエドさんだ。世界が悪魔に支配されることになった、始まりの出来事。神力学園での出来事を知らない人達にとっては、本当に突然、世界が変貌したのだ。



 悪魔に支配され、ある者は捕われ、ある者は殺され……平和だった世界が、身勝手に蹂躙される世界に成り果てたのだ。それは堪えられないことだろう。だから、一刻も早く……



「起こった詳しい出来事はわかった。……苦労、してきたんだな」



 早く、みんなを助けないと。そう決意を新たにする私に、エドさんはまるで労るかのように語りかける。確かに……自分でも、壮絶な経験をしているなと思う。生まれからすでに異質だというのに、その後の人生まで波瀾万丈だ。



 でも、私なんかより今、この瞬間にも他の誰かの方がよっぽど苦労しているはずなのだ。だから……



「苦労なんて、たいしたことじゃ……」



「ていやっ」



 私のことなんかたいしたことじゃない。そう言おうとして、頭に衝撃が走った。衝撃といっても痛みはなく、軽く何かが当たったくらいだ。確認すると、頭にチョップが振り下ろされていた。チョップの犯人は……



「……何してるの、オルちゃん」



 私の私の後ろに立つ、オルちゃんだった。いきなり何をするのか。そう思って軽く睨んでみると、またチョップされた。



「まったく……リーさんは、そういうとこがありますわよね」



「そういう……?」



 いきなりチョップされて、いきなり何を言われるのか。そういうところと言われても、心当たりがない私は首を傾げるしかない。また、チョップされた。



「何て言うんですの? こう……私なんか、とか私なんて、とか自分を卑下する傾向がありますわ。もっと自分に自信を持ってもいいですのに」



 オルちゃんの言わんとすること……わかるような、わからないような。自分に自信を……か。自信なんて、持てるはずもないよ。持てるような要素も見当たらないし。



「自信か……そりゃ、せめて私が誰かを救うことができたら、自信を持てるかもしれないけどさ」



「そう、それですわ! その、まるで自己犠牲も厭わないような……自己犠牲野郎精神が不安なんですのよ!」



「いや、野郎って私女なんだけど」



「泣き虫は治ったのだから、そちらも治してもらいたいものですわ」



「な、泣き虫じゃない!」



 頭を押さえて、擦る。痛いわけではないけども。腕組みしているオルちゃんだけど、ようやく言おうとしていることがわかった。



 自己犠牲、か。言われてみれば、そんなことはないと言えなくもない気がする。私が怪我をしても誰かを助けられるなら、なんて思ってるし。



「リーさんはかわいいんですから、もっと自分を大切にしないと!」



「かか、かわいいの関係ないでしょ!」



 そんな面と向かってかわいいなんて言われてしまうと、冗談だとわかっていても照れてしまう。ホントこの子は、物事をストレートにぶつけてくるんだから……



「ねえ、リーさんかわいいですわよね? ね!」



「え? あ、あぁ……」



「そこ! 恥ずかしいからやめて!」



赤くなった顔を冷ますために、深呼吸。ふぅ……少しは落ち着いた、かな。こうなったら、たまには私も……



「お、オルちゃんもかわいいよね!」



「へ? あぁ、ありがとうございます」



 ……失敗した。



「……こっほん! そ、それより話を戻すよ!」



「ごまかした」



「ごまかしたな」



「ごまかしましたわね」



「~!」



 おかしいな、私はいつの間にいじられキャラになったんだ?



「いいの! 私がかわいいとか、自己犠牲とかは今は置いといて!」



「自己犠牲の件は置いといちゃダメだと思うけど……かわいいリー姉」



「直すから! 気を付けるからやめて!」



 ここに机があったらバンバン叩きたい気分だよ。地面は固いからやらないけど。……何でさっき説明した時よりも疲れなきゃいけないんだ。



「まあ、彼女もこう言ってるしそろそろやめよう。涙目になってるし」



「なってない!」



「じゃあ、世界を支配してる悪魔の構成についてなんてどうです?」



「そこはそこで急すぎない!? 話題転換下手か!」



 ま、まずい……人数が増えた上に、みんなオルちゃんに便乗するものだから、ツッコミが追い付かない……いや、落ち着こう。別にツッコミ係なわけじゃないんだし。



 ともかく、せっかく話題が移ったのだ。その話題に乗っかっとこう。



「そうだね……一度、奴らの主力を整理しといた方がいいかも。それに、私の知らない存在もいるようだし」



 私がカーリャさんから聞いた悪魔情報、神力学園で新たに明らかになった悪魔情報、旅を通じて明らかになった悪魔情報……



 それらを、整理しよう。

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