状況整理
「まず、今の状況を改めて整理しないか」
新たにユメちゃんが旅の仲間に加わることになり、気持ちも一新していた頃……手を挙げて申し出る人物がいた。エドさんだ。口を開いたあとにみんなの視線を集めながら、さらに続ける。
「ユメちゃんもついて来ることになったわけだし……ここで一つ、状況整理をしてみてはどうだろう。先程の悪魔のこともそうだし、新たに出てきた情報も……纏めてみてはどうかな。というかぶっちゃけた話、僕もあまり深くは聞いていないから、そうしてもらえると助かる」
エドさんが提案したのは、情報整理……新たにメンバーに加わったユメちゃんへの説明も兼ねての情報整理をしようというものだっだ。
最後に本音が出ていた気がするけど……確かに、これからどう動くかを決めるにしても、現時点での情報を纏めておくのは賛成だ。
「そうですね、情報を纏めましょう」
私とオルちゃんが持っている情報を筆頭に、情報を整理することにする。
「確認だけどまず、いいかな。えっと……この世界を支配してるのが悪魔。そいつらと戦ってるのがリー姉達"双翼の星"、って認識でいいんだよね」
「そうだね。まあ、もう二人だけなんてことはないんだけどね」
最初は、私とオルちゃんだけだった。けど、今ではエドさんもいる。戦う力はないけど、スカイくんやユメちゃんも。もう、二人だけ、ではないんだ。
「"双翼の星"は人々の希望、なんて言われてたもんねー」
「あっはは、恥ずかしいな……」
「その正体は子連れの女の子とか、話し方のおかしい青髪娘とか、ロリ天使とかいろいろ言われてたけど、実際どれも合ってたよね」
「あはは恥ずかし……あれ、三つ目初めて聞いたんだけど?」
私達について人々の間でどう言われていたのかはあとに置いておくとして……先に、情報整理をしないとな。そこで、いろいろ対策なんかも出てくるかもしれない。
「おっほん。話を戻すけど、私達が戦っている悪魔についてだけど……」
本題に戻り、みんなが集中する。私は、私達が旅を始めることになった経緯……神力学園が悪魔に侵攻された時のことを、簡単に話す。簡単に、とは言っても……やっぱり、内容が内容だけに無意識に口調が重々しくなってしまうんだけど。
平和だった学園が一気に地獄に変わったこと、アカリちゃんが死んだこと、神様であるエルシャの存在と彼女が死んだこと、そして……ヒロトが魔王になってしまったこと。
途中、ユメちゃんは何度も声を上げそうになっていたが、何とか堪えているようだった。
「……これが、学園に起こった出来事だよ。そこから、私達の旅が始まったの」
「……なるほど、神様に魔王、とんでもないな」
こういった込み入った話はエドさんにもしていなかったので、彼は多少なりとも驚いているようだ。まあ実際に悪魔を目にしていても、神様や魔王なんて聞いてはまた別の驚きがあるだろう。
「神様……エルシャ……そういえば、お姉が話してたっけ。オル姉に負けず劣らずの騒がしい友達ができたって」
「……そっか」
「……あれ、今さりげなく私のこと騒がしいって言いました? 言いましたよね?」
ユメちゃんは、アカリちゃんとはちょくちょく連絡をとりあっていたらしく、学園での交友関係は一通り理解しているようだ。エルシャについても、名前や性格を聞いていたらしい。
「ヒロ兄にはちょっかいかけるし、お姉自身もちょいちょいいじられるし、これはオル姉以上に厄介な人が来たーって嘆いてたなあ。でもどこか嬉しそうに」
「今、騒がしいに加えて厄介っていいましたよね? ねえ?」
まるで懐かしむように、語るユメちゃん。おそらく、その時のアカリちゃんとの会話を思い出しているのだろう。その表情はどこか穏やかだ。
そこで、何かに気付いた……いや思い出したかのようにユメちゃんが私を見る。突然の視線に私は困惑してしまうが、その困惑と、横からやいやい言っているオルちゃんを気にすることなくユメちゃんは口を開く。
「そういえば……そのエルシャって人と、リー姉の仲がよろしくないとも言ってたような……」
「うっ」
そして口から出たのは、私にとって一番グサリとくるものだった。それは、当時私がエルシャに対してとっていた態度……まあ、わかりやすいものでいえば無視だ。他にも、刺々しい言葉をかけたりいろいろ……
それというのも、当時の私は、エルシャがお姉ちゃんを殺したのだ、という概念にとらわれていた。
天界に悪魔が侵攻した際、それにより天使達は蹂躙され、神様であるエルシャさえも。そこで、エルシャがお姉ちゃんを犠牲にして生き延びたのだと。
……しかし真実は、殺されそうになったエルシャをお姉ちゃんが庇い、エルシャを逃がした、というものだ。
その事実をわかっていながらも、お姉ちゃんを失った怒り、悲しみをエルシャにぶつけていたのだ。ぶっちゃけ、逆恨みだ。
そのせいで私はエルシャにひどい態度をとった。しかも、本当に最期の時まで。
そんなひどいことをした私に、エルシャは笑って逝った。気にしてないとでも言うように。それどころか、お姉ちゃんを死なせたのは私が原因だからと、最期まで私を気遣ってくれたのだ。
そんな彼女に、私は最期になってようやく、謝ったのだ。だけど、それで納得は、到底できない。本当なら、もっと……
「……リー姉?」
「……はっ」
ふいに響いたユメちゃんの声が、私を現実に引き戻す。どうやら、物思いにふけってしまっていたらしい。急に黙ってしまった私を、みんな心配そうに見ている。
「大丈夫……?」
「う、うん。平気」
そうだ、今は……ユメちゃんが、エルシャの話をアカリちゃんから聞いたという話をしてたんだ。その中で、私に突き刺さる言葉がきたものだからつい……
エルシャとの関係、それはユメちゃんの言うように、アカリちゃんから見ればお世辞にもいいものではなかった。
エルシャとわかりあえた……というより、私の逆恨みが晴れたのはエルシャの最期の時だ。その時にはアカリちゃんはもう……
……なので、私とエルシャの関係がよろしくない、という情報で止まっているのは当然だ。そもそも、私が天使と人間のハーフだとアカリちゃんは知らなかったのだから、その関係を推測すらできなかっただろう。
「何か、リーシャとエルシャの仲直り大作戦考え中なんだ、とか言ってたよ」
「仲直り、か。はは、アカリちゃんらしい。……でも、仲違いとは言ってもエルシャは悪くないよ。悪いのは私で……」
知らないところで、アカリちゃんにも迷惑をかけていたんだな。……いや、違うか。アカリちゃんならそう考える、そんなのはわかることだ。わかっていたのに、な。




