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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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前途多難な道筋



 ……場所を移し、ここに集められていた人達の死体が転がっている所へ戻ってきた。初見ほどの衝撃はないものの、実際に戻ってくるとショックが大きい。



 こんなにもたくさんの人が……



 外で、風も吹いているのに肉が腐敗したにおいが充満している。むしろ、風がそのにおいを運んできているかのようだ。ここに長く留まっていたら、鼻がおかしくなってしまいそうだ。



 この場所に戻ってきたのは……ユメちゃんたっての希望だ。みんなの、お墓を作りたいと。なのでもちろん、この場には言い出しっぺのユメちゃんがいる。



 そして、私とエドさん。オルちゃんは、スカイくんとゴンゾウ改めゴンちゃんを連れてこことは別の場所にいる。この光景をスカイくんには見せられないからね。



「ごめんね二人とも……私のわがままに付き合わせちゃって」



「わがままなんてことないよ」



「あぁ、むしろこちらから願い出たいくらいだ」



 ユメちゃん一人だと、この人数のお墓を作るのは相当な時間がかかるだろう。それに、そんな作業を一人でさせられるはずもない。いや、私達自身もやりたいことだ。



 だから、たとえ頼まれなくてもこちらから願い出ただろう。



「じゃあ、始めようか」



 私達にとっては関わりのない人達でも、ユメちゃんにとっては共に過ごしてきた人達だ。だからか、たとえ死体であってもユメちゃんは怯えることなく、悲しそうに、慈しむように向き合っている。



 怯えがないのは共に過ごしてきた、というのもあるだろうが、死体に見慣れてしまったというのもあるのかもしれない。そんな悲しすぎる慣れなど……辛すぎる。



 対して私は……スカイくんに会うまで、生きている人にも死んでいる人にも、出会ってこなかった。だから正直、気分が悪くなる。



 ……けど、弱音なんて吐いていられない。



「……これで、最後の一人だね」



 作業の間、たいした会話をするでもなく黙々と動いていた。そして多かった死体も残り一人となり、その頃には作業を始めた時よりもずいぶん時間が経っていた。



 神力を使えばもっと時間を短縮できただろうが……それは、何だか違う気がした。



 どれだけ時間がかかっても、ちゃんと自分の手で弔う。それが大事なことなのだと思う。ユメちゃんも、自分の手で弔いたかったのだろう。



 作業中ユメちゃんは、『原型を留めている』死体は一人一人名前を呼んで埋めていった。残念ながら誰だかわからないものもあったが、それでもユメちゃんは、何らかの想いを持って向き合っていたのだと思う。



 ……そして、最後の一人を埋め……長い黙祷を終えた後、静かに目を開ける。そのまま、私の方を振り返って私を見るその目は……私の親友で彼女の姉であるあの子に、そっくりな強い瞳だった。



「やっぱり私……旅に同行したい」



 自分の想いを、告げる。



「もうこんな……悲しい想いをする人達を出したくない。だから……だから!」



 話している最中、ユメちゃんの瞳から涙が溢れ出す。言いたいことがうまくまとまらないのか、言葉になっていない。それでも、この想いだけは嘘ではないと、訴える。



「そりゃ、みんなに比べたら私なんか力不足だよ。でも、少しは武術も学んでる、自分の身は自分で守る……足手まといに、ならないように……する、から!」



 その表情に、涙に、心が揺れる。ひどいことを言うようだが、感情論ではどうにもならないことなんていっぱいある。今回のがまさにそれだ。



 ユメちゃんの気持ちだけを汲み取って同行させ、それで取り返しのならないことになったりしてしまったらと思うと私は……



「大丈夫ですわよ、ユメちゃんは」



 揺れていた私の背後から、声がかかる。振り向くとそこにはオルちゃんがおり、笑みを浮かべている。不思議と、気持ちが和らいだ。



「い、いつからそこに……?」



「ちょうどユメちゃんが泣き出した頃ですかね。終わった頃を見計らって来たのでスカイくんにはあの光景を見せていませんからご安心を。……それより、いろいろ悩んでいるようですけど、大丈夫ですわよ。強い目をしていますし……アカリさんの妹ですしね!」



 底抜けに明るい笑顔で、まったく根拠がない言葉。何をもって大丈夫なのか、その自信はどこからくるのだろう。ホントに、オルちゃんはいろいろ考えてるんだか考えてないんだか……



 でもなぜだろう。本当に、大丈夫だという気持ちになってくるんだから不思議だ。エドさんは折れたし、オルちゃんはこう言ってるし……もう、反対意見はないようだった。



 ない、というよりはユメちゃんの根気に負けた、というべきだろうけど。それに……私もだ。こんな目でお願いされたら、断れないよね。



「……わかった、一緒に行こう」



「ホント!? やった!」



 最終的には私も折れ、結果としてユメちゃんの同行が決定した。この子は本当に、頑固というかなんというか……我が強いのかもしれない。



 いや、しれない、ではなく強い。多分アカリちゃんよりも。



「キミ、お姉ちゃんより頑固だねぇ」



「えっへへ……ヒロ兄にも言われたよ」



 否定しないどころか、言われたことがあるらしい……ヒロトに。ヒロ兄、か……実際、このメンバーの中で彼と一番因縁が強いのはユメちゃんだろう。



 私やオルちゃんは所詮同じ学園の生徒というだけ。オルちゃんは、同じクラスでもあったっけ。スカイくんとエドさんに至っては会ったことすらない。



 私は……アカリちゃんを通じて、ヒロトと接していたに過ぎない。そのアカリちゃんを殺したのが……ヒロトだ。ユメちゃんにとっては、実の姉を、兄と慕っていた人物に殺されたのだ。



 唯一の救いは、その光景を見ないで済んだことか。



 私にとっての親友は、ユメちゃんにとっての姉。今は気丈に見えるが……その心情は、心の傷は……私より、ずっと深いのかもしれない。



「ん? どしたのリー姉」



「! 何でもないよ。……って、リー姉?」



 無意識に、ユメちゃんをじっと見つめていたらしい。いけないいけない、不思議に思われてしまった。多分何とかごまかせたけど……今言ったリー姉ってもしかして、私のこと?



「そっ! これからよろしくね、リー姉!」



 アカリちゃんとうり二つの顔で、そっくりな笑顔を浮かべる活発な少女……ユメ・ヴィールズが、こうして私達の旅の仲間に加わった。

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