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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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死ぬのもめんどい



「あー、みんなやられたのか」



 スカイくん達が助かったこと、オルちゃんが目覚めたことにほっとする一方、まだ残っていた問題に目を向ける。



 それは、エドさんが相手をしている大罪魔獣、ベルフェゴールだ。相変わらず、エドさんの剣撃を難無くかわしている。



「まあ期待してなかったけど、もうちっと頑張ってほしかったな。結局自分自身は楽できてねーし。はぁ……さっさと終わらせて帰りたいんだけど、めんどいし」



 無気力な魔獣は、その能力で武器の力を限界以上に引き出している。その力の前ではエドさんも防戦一方で、攻撃を返しても当たっていない。



 ベルフェゴールの能力は、他人任せ、武器任せの真骨頂だ。



 これで、能力を使う本人がやる気でないのが、ある意味救いかもしれない。もしもベルフェゴールが怠惰な性質でなければ、能力と連携してもっと優位に進められただろう。



 もっとも、怠惰な性質でなければこの能力は備わらないのかもしれないが。



 どっちにしろ、このままじゃ平行線だ。押しもしないが押されもしない。いや、疲れの知らない武器を相手にしている分、先に疲れが出るのはどうやってもエドさんだ。



 だとすると長期戦は不利に……



「そんなに終わらせたいのなら……望み通りにしてやろう」



 その瞬間……空気が変わった。正確には、エドさんから発せられる空気が。何と言ったらいいか、離れていても、対峙していなくても感じる、肌がぴりぴりする感じ。喉が、渇く。



「……あ?」



「いかに武器の力を引き出そうと……それは、キミ自身の力ではない。それでは、僕には勝てない!」



 防戦一方だったエドさんの動きが……変わる。今まで剣で受け流していたものを、その身一つでかわしていく。



 防がれていた剣が、より速いものになり隙と隙の隙間をくぐり抜けて剣撃が届く。形勢が、逆転していく。



 流れるような剣裁き。意思の通った剣は、意思の通わない剣を上回っていく。それはただ武器の力を引き出すだけのベルフェゴールより、これまで剣の修業に明け暮れてきたであろうエドさんの気概が上回った瞬間。



 そして……



「“十二星”『獅子(レオ)』!!」



 ベルフェゴールの獲物を弾き飛ばし……居合いの構えから放たれたエドさんによる『星砕き』の横薙ぎの斬撃が、ベルフェゴールの体を真っ二つに斬り裂いた。



「……!」



 腹部を中心に、上半身と下半身か繋がりを分かつ。魔獣とはいえ人の姿をしているためになかなか衝撃的な光景だ。



 スカイくんは気絶しているため見てはいないが、ユメちゃんにはきつい光景かもしれない。そう思ったが、ユメちゃんは視線をそらすことなく見ている。



 ……そうだ、ユメちゃんはあの惨劇の場所でのただ一人の生き残りなんだ。焼けた死体、潰れた死体……死体、死体、死体を、見てきたのだ。



 こう言うのは気が進まないが、死を見慣れてしまったのだろう。



「……倒したの?」



 そのユメちゃんから漏れたのは、目の前の死に対する嫌悪ではなく、それによって相手を倒すことができたのかというものだ。



 普通に考えれば、体を切断したのだ。それで生きていられるわけがない。



 ……とはいえ、相手は魔獣。普通の生物とは違う。それに、大罪魔獣なんてたいそうな肩書きを持つ存在だ。本当にこれで倒せたのか、不安になるのも無理はない。



 ベルフェゴールを斬った張本人であるエドさんも、まだ警戒を解いてはいない。



 斬られた上半身が地面に落ち、下半身はその場に立ったままという不気味な光景。切断面から血が流れるということもなく、まるで人形を斬ったのではないかと思えるほどだ。



 それを見ながら、警戒を解かない中……異変が、起こった。異変と言っても、些細なことだ。おそらく、魔力を感じとることが出来る私しか気付かなかっただろう。



 上半身と下半身にまだ残っていた魔力が、いきなり消えたのだ。



 いや……正しくは違う。『消えた』のではなく、『移動』したのだ。魔の者にとって魔力が生命力と同じであるならば、命がその体から移動した。



 それがどういうことか、わたしに私にはひどく嫌な予感に思えて……



「あー、殺されちゃったかー」



 その予感が的中したかのように、めんどくさそうな声が辺りに響いた。



「この、声……!」



 聞き間違えるはずもない。ついさっきまで聞いていたのだから。少なくとも間近で相対していたエドさんは、その正体がすぐにわかったようだ。



「ベルフェゴール……!」



 私は、魔力が移動した先を自然と追っていた。そこには、一本の枯木。その枝に止まる、黒い鳥がいた。カラスだ。それには何の疑問もない。



 だが問題は……その体からは魔力を発していること。それも、ベルフェゴールと同様の。



 先ほど、切断された体から移動したベルフェゴールの魔力。それが移動し、同質の魔力をカラスから感じる。それはつまり、そういうことなのだろう。



「まさか、あのカラスに魔力を……魂を移して、生きてる?」



 自分が絶命する寸前に魔力……魂を移動させ、それを別のものに入れる。そうすることによって、死ぬのを阻止したということだろうか。もしそうだとしたら……



「あー、当たらずも遠からず、みたいな?」



 カラスが口を開き、言葉を話す。それはやはりベルフェゴールのもので、あのカラスがベルフェゴールだということはもう疑いようもないだろう。けど、私の予想は少し違うのだという。



「それ、どういう……あなた、一体……!」



「あー、説明めんどいんだけど。死ぬのもめんどいし、生きてんのもめんどいわー」



 答えるつもりがないのか、のんきに欠伸をしている。そののらりくらりとした反応に苛立つが、今の反応だけで察しがついた人がいるみたいだ。



 「死ぬのもめんどい……」、その言葉に引っ掛かりを覚えたエドさんだ。彼はその言葉の意味をかみ砕くように復唱すると、顔を強張らせる。



「まさか……死ぬと、別のものに魔力が移る。それも……自動的に」



 その言葉によって、私も理解する。なるほど、当たらずも遠からずとはよく言ったものだ。



 私が言ったのはベルフェゴールの『意思で』魔力を移動させるというもの。エドさんの見解は、意思関係なく自動的に魔力が移動するというもの。



「へー、やっぱ頭いいな剣の兄さん。まあ別のものって言っても、魔力の通った器じゃないとダメだけど」



 そして、ベルフェゴールの言葉はエドさんの見解が正解だと告げていた。つまり目の前の魔獣は、殺しても死なない不死身の存在だということ?

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