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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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不明事態



 今確かに踏み潰したはずの相手、それが離れた場所に立っている事実に、恐竜型魔物も不思議そうだ。さらにその相手が、ただの人間の子供が急に魔力を放ったために、恐竜型魔物は敵意と同時に若干の警戒を見せる。



 すぐに攻撃して来ないあたり、魔物もバカではないらしい。未知の相手に対する警戒心。それがかすかにある知能による警戒なのか、本能による警戒なのかはわからないけど。そのために、じっと両者睨み合いのが続く。



 ……かと思いきや、その緊張はすぐに崩れた。



「……これ、は……?」



 緊張を崩した困惑の声を漏らしたのは、睨み合いを続けていたスカイくんだ。自分の両手を見て、首を傾げている。



 どうやら、自分の姿に驚いているようだ。自分の手を、確かめるように開いたり閉じたりしている。



 それは、つまり今の状態は少なくともスカイくんの意思ではないということか。それに、その様子から、どうやらスカイくんの理性は残っているのだろうということはわかった。



 魔物と合体したことで理性がかき消されたらどうしようかと思ったけど……



「……スカイ、くん……だよね? ……私、わかる?」



 気になることは、山ほどある。だけど、それを追求する時間はない。だからせめて、スカイくんに呼びかけることに。もしかしたらだけど、魔物との合体の影響で記憶が曖昧になってるんじゃ……?



「……リー、姉ちゃん」



 私をその瞳に捉え、スカイくんは答える。口元から覗く牙が目に入るが、私の名前を呼ぶスカイくんの、記憶はどうやらしっかりしているようだ。それに、安心した。



 だから、私は気付くのが一瞬遅れたのだ。



 安心し、気を抜いてしまったその一瞬に、一体の魔物が飛び掛かってきていた。背後から迫る魔力の気配に、ようやく気付いた時には鋭い爪先が私を斬り裂かんと迫っていて……



「グォオオオ!」



 魔物の雄叫びが、轟く。私はせめて、ユメちゃんを守ろうと彼女の体を抱きしめ、自分の体を丸め込みユメちゃんを体の内側に。



 私自身も、残った力を振り絞り防壁を展開、これで何とか……



「……っ……?」



 ……だが、いつまで立っても衝撃がこない。体にも、防壁にもだ。いったいなぜ?



 そんな疑問が浮かび、恐る恐る目を開ける。するとそこには、飛び掛かってきていた魔物の姿はなく、代わりに一人の男の子の後ろ姿があった。



「す、スカイくん……?」



 そこにいたのは、先ほどまで離れた位置にいたはずのスカイくんだ。襲い掛かってきた魔物は少し離れた場所に倒れている。



 状況を察するに、先ほどの場所から移動したスカイくんが、魔物を吹っ飛ばしたということだろうか。



 それにしたって、あそこから急いでも間に合うとは思えない。それとも、間に合うとは思えない、という私の常識を上回る速度を持っているのだろうか?



 ……ふと、スカイくんの足元から、集中的な魔力を感じた。それが気になり、視線を彼の足元に向けると……



「魔力が……足に?」



 先ほど、オーラのように全身を覆うようにしていた魔力。それが今は、足の部分に集中しているのだ。



 これはいったい……?



「グルルルァアア!」



 そこに、倒れていた魔物が立ち上がり、再び襲い掛かってくる。



 獣の唸りをあげ、目の前の敵、スカイくんを牙で噛みちぎるか爪で斬り裂くかそれとも他の方法か、自身の凶器を用いて襲おうとしている。



 その凶悪な殺意は、おそらく常人ならそれだけで動けなくなってしまう。ましてや子供ならばなおさら。今までのスカイくんなら、泣いて固まっていたはずなのに……



「ふっ……!」



 魔物の爪を飛んで避け、さらに"空中で"ジャンプ。魔物の頭上に位置どり、その場で回転して勢いを乗せた右足の蹴りを顔面におみまい。



 魔物は吹っ飛び、その際蹴られた顔面はその威力に耐え切れず破裂。残った体も、岩にぶつかり動かなくなった。



「あ……」



 あまりの光景に、言葉が出ない。あのスカイくんが、魔物を相手に戦い、倒した。それも、至って冷静に対処している。



 今の攻撃の威力……つまり、魔力で体の部位の部分強化をしているということか? だから足に魔力が集中しているし、あの威力だ。



 それに、あの離れた場所から即座に移動できる速度も手に入れた。



「スカ……」



「グルァアアア!」



「ギァアアアア!」



 その背中に、声をかけようとする。が、それを遮るかのように周りの魔物達の叫び声が轟く。先ほど倒された一体の魔物の姿に、刺激されたのだろうか。今まで静寂を保っていた空間が、壊れる。



 獣型、人型、異形の姿……様々な魔物が、右から左から、前から後ろから襲い掛かってくる。いかにスカイくんが戦えるようになったとはいえ、四方八方から襲われては手立てが……



「ガァアアア!」



 だが、魔物達が迫っているというのに、怯むどころか同じく叫ぶスカイくんはその場でジャンプ。それは驚くほどのジャンプ力であり、人がジャンプできる高さをゆうに超えている。



 上空に飛ぶスカイくんに釣られるように、魔物達の視線は上空に。



 ……不思議なことに、みながみな。上空に飛ぶ相手よりも狩るのが遥かに楽なはずの、地面にへたり込む私達には目もくれず。



「らぁい!」



 視線を集めたスカイくんは、右手に魔力を集中。手に纏ったそれを手ごと振るうと、その動きに合わせて魔力は弾となって放たれる。



 が、直後に魔力は分散され、魔力はまるで雨のようになって下にいる魔物達に降り注ぐ。



 複数体の相手に対して、それは有効な攻撃手段。驚くのはそれをやってのけたのがスカイくんということだが、それ以上に驚くことがある。



「う、浮いてる……いや、立ってる?」



 驚くべきこと。それは、空中に立っているということだ。まるでそこに床があるかのように。見ると、スカイくんの足元に魔力が集中しているではないか。



 おそらくあれが足場のような役割を果たし、今の状態を作り出しているのだろう。それにしたって、ただの子供だったスカイくんがあんなことを……いったい全体、どうなってるんだ?

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