新たな可能性
……駆け出すゴンゾウ。それを追いかけるスカイくん。この状況においてそれは致命的なものとなる。狙ってくださいと言っているようなものだ。
だが一人と一匹を止める手段もなく、ただ見逃してしまう。
無防備に駆けるその存在を認めた恐竜型魔物は、その巨大な足を上げ……一人と一匹に狙いを定め、何の躊躇もなく足を下ろす。
私も、エドさんも、ユメちゃんも助けることは間に合わず、逃げ出すことも出来なかったスカイくんとゴンゾウは無惨にも踏み潰された。
「あ……スカイ、くん……」
「ゴン、ちゃ……そんな……」
思い切り足を踏り下ろしたことで砂煙が立ち、辺りを包む。視界が晴れるとそこには……スカイくんとゴンゾウを踏み潰した、恐竜型魔物の巨大な足があった。
私も、エドさんも、ユメちゃんも……最悪の事態を想定した。あの巨大な足に潰されて、無事でいられるはずがない。ましてや子供と、魔物とはいえ子犬のような小さな動物だ。
恐竜型魔物は、ゆっくりと足を上げる。そこには、無惨に踏み潰され肉片となったスカイくんとゴンゾウの姿が……
「……ん?」
……なかった。そこには、足を振り下ろしたことによる巨大なクレーターこそ出来ているものの、スカイくんとゴンゾウの姿はどこにもなかった。
肉片が残らないほどに凄まじい力で潰された……という可能性はさすがに考えにくい。どのみち辺りに血などそういったものがないのはおかしい。
……スカイくんとゴンゾウは、どこに?
「……っ!?」
と、疑問が浮かんだその時だった。辺りの魔物達とは別に、突如として膨れ上がる魔力……それが、私の感覚を刺激する。まるで、突然そこに現れたかのような。
……何だ、この力。いきなり膨れ上がって……どういうことだ? それになんだか、この魔力はゴンゾウのものと似ているような気がする。それにしても、力の大きさが違うのだが。
感じた気配の方向へと、振り向く。すると、そこにいたのは……
「グルルル……!」
膨れ上がる魔力の正体を見るため、視線を向けたその先には、一つの影があった。
砂塵が吹き荒れる中で聞き覚えのある声で唸る存在は、少し離れた岩場に立ち恐竜型魔物を睨みつけているようだ。何せ、恐竜型魔物に対しての"敵意"を感じるからだ。
己に注がれる敵意を感じたのか、恐竜型魔物も同じく敵意を返す。同時に、他の魔物達の意識も同じ方向に向けられている。魔物達の敵意を一心に受ける中で、砂塵の中から姿を現したのは……
「……スカイ、くん?」
そこにいたのは、人の形をしていて……姿がはっきり見えると、驚くことにその顔は、姿はスカイくんと同じものだった。……というより、スカイくんがそこにいた。
今、潰されたはずのスカイくんがだ。
恐竜型魔物の踏み付けから逃れている。たいして離れた距離ではないとはいえ、決して近くはない距離に移動している事実。それには素直に驚きがある。
いったい、どうやってあの一瞬のうちにあそこに? ……それとは別に気になることがある。様子がおかしいのだ。
スカイくんの体なのだが、全身が紫色の毛並みに包まれている。それだけでなく牙や伸びた爪……さらには犬耳のようなものまであり、アカリちゃんに借りたことのあるマンガの中にあった、獣人というやつを連想させる。
そしてその特徴が、ゴンゾウのものと類似しているのだ。
「あの姿は……?」
「……スカイくんから、ゴンゾウの魔力と同じものを感じる」
ゴンゾウの姿と類似した姿。正確には、魔力が形となって牙や爪、犬耳などを形作っているのだ。紫色のオーラが、さも毛並みのように見える。
ただ、姿だけじゃない。魔力も、ゴンゾウと同一のものを感じた。それはつまり……
「……スカイくんとゴンゾウが、合体……した?」
たどり着いた可能性。それは、到底信じられないながらも、そうとしか考えられないもの。合体、あるいは融合……言葉にすると安直になってしまうが。
……ありえない。魔物と、合体……?
そんなの、聞いたこともない。けど、今スカイくんから感じる魔力はまさしくゴンゾウのもので。
……どうなってるの……?
それは、未知の力。みんながみんな、人間と魔物が合体できるとは思えない。その合体の力はゴンゾウのものなのか、それとももしかしてスカイくんのもの……?
もしもこの、合体の力が解明できれば……それは、新たな可能性となるかもしれない。




