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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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限界以上の力



 武器の力を引き出す……その行為自体には不思議はない。使用者が達人であれば、それこそなまくらを名剣に変えることだってできるだろう。



 だけどそれとは、根本的に違う。ただ面倒だから力を引き出す……引き出させる。それも、力を使いこなすのではなく自ら武器に身を任せている。



 武器を使っているのではない、使われているのだ、この男……いや、『怠惰』は。



「それだけじゃない。例えば……こういうことも」



 片手で攻め、片手でパチンと指を鳴らす。すると周囲……空から、地面から、視界の向こうから……魔物が、現れる。



 どこかに潜んでいたのか、それともベルフェゴールの指鳴らしによりどこからか来たのか。ただ、魔物には異変が感じられた。



 普通の……というのも変だけど、これまで見てきた魔物とどこか違う。違和感、というのか。どこが変とはっきり言えないけど。迫り来る魔物は私達を獲物と見定め、じわじわと狙っている。



 私は、スカイくんとユメちゃんと、気絶したままのオルちゃんの傍へと固まる。



「お前、魔物を操って……いや、まさか……!」



 ベルフェゴールの剣撃を防ぐエドさんは、現れた魔物を視線を移すや目を見開く。状況が悪くなったと、その表情が語っているようだ。



 この状況は確かにまずい。複数の魔物に、私は戦えない状態。だけど、私もある疑惑にたどり着く。もしこれが正解だとしたら……



「お前の能力は……武器だけでなく、まさか魔物にも……?」



 私が抱いた疑念は、エドさんと同様のものだった。この魔物達は、魔獣であるベルフェゴールに従っている。そう考えるのが自然だ。



 だが『怠惰』の能力を考えるなら、事はそう単純ではない。



「そう……戦うのが面倒だから、こいつらに任せるわ」



 言って、ベルフェゴールは……いや奴が使っている剣は、力を込めて一押し。するとエドさんは、一歩押されてしまう。その隙にベルフェゴールは距離を取り、二人の間を魔物が立ち塞ぐ。



 『怠惰』の能力は、武器に眠っている力を限界以上に引き出すもの。そう思っていたがそれは、何も対象が武器だけではないのだ。魔物も同様に能力の対象内。



 つまり、この魔物達は、自身の限界以上の力を引き出されている。



 ただの剣が、『星剣』と打ち合えるほどに力が増すのだ。魔物とはいえ、どれほどのものになるのか。しかもベルフェゴールに従っているのではなく、奴の変わりに戦いに身を投じている。



 それは似て非なるもので、そこに魔物の意思は介入しない。知性のない動物でも、恐怖といった感情は存在するはずだ。それが身を守る手段となるからだ。



 だが今の魔物達にはそれがない。だからどれほど魔物を(ほふ)ろうと、それに対する恐怖はなく向かってくるのだ。



 力を限界以上に引き出された、ただ戦うだけの意思のない人形。そう表現して問題はないかもしれない。そう分析しながらも、状況がただ最悪だと、私は冷や汗を流す。  



 疲弊してなくても、この数で限界以上に力を引き出された魔物の相手は難しいかもしれないのに……今私は戦えるだけの力が残ってない。



 スカイくんとユメちゃんは戦えないしオルちゃんは気絶中。エドさんは魔物に囲まれている。



 獣型、人型と様々な魔物が私達を取り囲んでいる。さらには地面が割れ、巨大な魔物が姿を現す。人なんか簡単に踏み潰せてしまう恐竜型の魔物だ。



 太い腕、足。鋭い牙、爪。首から上が二つに割れており、二つの頭を持っている。他の魔物同様目が赤紫に光り、私達を見下ろしている。普通の魔物は赤い瞳だというのに。それだけ、強大ということだろうか。



 その時だった。さっきまでユメちゃんの腕に抱えられていた魔犬もといゴンゾウが、彼女の腕から抜け出したのは。本能が、この場は危険だと判断したのかもしれない。



 だがこの状況でそれは、自殺行為だ。



「……あっ、ゴンちゃん!」



 ワンテンポ遅れて、ユメちゃんの声が届く。真実を知って頭が真っ白になっていたせいなのか、ゴンゾウが自分の腕から抜け出したことに気づけなかったらしい。 



 追い掛けようとするのを、止める。暴れるユメちゃんだが、私は抱きしめて離さない。



 魔物とはいえゴンゾウはユメちゃんに懐いてるようだったし、ユメちゃんも大切にしていた。それは知ってるが、やはり魔物……いや、例え魔物じゃなくても、そのためにユメちゃんが命を落とすことだけはあってはならない。



「いや、離して! ゴンちゃん!」



「待って!」



 瞬間、私は目を疑った。スカイくんが、ゴンゾウを追い掛けたのだ。ユメちゃんを抱きしめていたために私は止められず、むざむざ見過ごしてしまう。



 魔物ひしめく混乱状態。そんな中で、無防備になった存在。それを、魔物が見逃すはずもなくて……



「グォオオオ!」



 咆哮するは恐竜型魔物。その赤紫の瞳は、獲物を捉えたことを確認するように目を見開いたように思えた。感情の高ぶりを表すように雄叫びと上げると共に足を上げて……



「スカイくん!!」



 私の声も、魔物に囲まれたエドさんも間に合うわけもなくて。巨大な足からスカイくんの速度で逃げきれるはずもなくて。



 人一人簡単に踏み潰せるその足は……スカイくん、そしてゴンゾウを踏み潰した。

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