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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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『怠惰』



「大罪……魔獣?」



 そう名乗った白い少年……怠惰の名を冠するというベルフェゴール。大罪、怠惰とくれば、思い浮かぶのは七つの大罪だ。



 色欲、暴食、嫉妬、強欲、怠惰、憤怒、傲慢の七つを罪として、七つの大罪と呼ばれている。



 大罪魔獣とは、この七つをモチーフにした魔獣ということだろうか。それが本当だとして、つまり怠惰以外の魔獣が他に六体……



「たいそうな肩書きだが……関係ないな。仲間がピンチで、戦えるのは僕しかいない。なら、仲間を守るために敵を斬る……これだけが僕のやるべきことだ」



 ベルフェゴールと相対するエドさんは、その肩書きに驚くこともなく、ただ目の前の敵を斬ることだけを決めている。



 その背中には頼れるものがあり、戦えるのがエドさんしかいないことを抜きにしても、この場を任せてしまえるほどの頼もしさか彼にはあった。



 構え……いつでも動けるような体勢だ。対するベルフェゴールは、剣を持っているにも関わらず棒立ち。そこにはこれから戦いに臨む者の気迫が感じられない。



 怠惰……名は体を表すとはよく言ったものだ。



「……行くぞ!」



 一瞬の緊張感。それはエドさんが先に動き出したことにより壊れる。先手必勝と言わんばかりの速攻は、開いていた両者の距離を一気に詰め、あっという間に剣のリーチ内だ。



 居合いの構えから剣を抜き、横払いに一閃。鋭い一撃は、助走の速度を加え目にも止まらぬ速さとなって放たれる。ただ棒立ちのベルフェゴールの体を切断した、と確信を持てるほどに。



「っ……!」



 ……それは、実現しなかった。エドさんの剣撃がベルフェゴールの体に届く直前、その動きは止まった。正確には、止められたのだ。



 つい先ほどまで棒立ちだったベルフェゴールが、その手に持った剣でエドさんの剣撃を受け止めたのだ。



 ただ受け止めたのではない。相応の反射神経がなければ見切れないであろう高速の剣を、何も考えてないように突っ立っていた状態から受け止めたのだ。



 いったい何が起こったのか……見ていてもわからなかった。だが、距離をとったエドさんの表情から察するに、剣撃を止められた本人すらもわかっていないのだろう。



「なら、これなら!」



 だが戸惑いは一瞬に、すぐに切り替える。先ほどの居合いに対して、今度は剣の突き。それを素早く、無数の突きを行うことで逃げ場のない剣撃の乱舞を繰り出す。



 それは真正面にいる相手を蜂の巣にしてしまうことだろう。これならば……



 だがまたしても、その予想は覆る。繰り出される無数の突きに対してベルフェゴールがとった行動は単純明快。剣撃を、防ぐというものだ。



 ベルフェゴールは、持っていた剣で、突きを弾くように打ち付ける。無数の剣撃の乱舞を、剣で弾いて防いでいたのだ。



 連続される突きを防ぐそれも、相応の速さ。両者目で追うのもやっとの速度で、剣を打ち剣で防ぎ剣で打ち剣で防ぎ剣で打ち剣で防ぎ……



「……ふっ」



 その最中、気合いの抜けた声と共に放たれたベルフェゴールの振り下ろされた剣を、エドさんが受け止める。剣と剣とが打ち合い、激しい金属音が鳴り響く。



 剣撃乱舞の一瞬の隙をつき、剣撃を止めることに成功している。



 それどころか、剣同士の打ち合い、それはわずかにエドさんが押されている。力比べで負けているとでもいうのか? あの貧弱そうな体のどこにそんな力が?



 そしてその状況で、ベルフェゴールは笑っている。余裕の笑み、とは違う。



「あーめんど……けど、いい感じになったわ。髪切るのめんどかったんだよ」



 いきなり、意味不明なことを話すベルフェゴール。しかしそれは、奴の姿を見て理解した。地面につくほどに長かった白髪が、腰までの長さになっているのだ。



 摩訶不思議な現象だが、奴の言葉を理解すると思わず背筋が凍った。



「僕の剣で、髪を切ったとでもいうのか……?」



 その答えを、エドさんが口にする。つまり奴は、エドさんの剣撃を防ぐだけでなく、それを利用して髪を切ったと。それはどれほどの余裕が為せる技か……?



 髪を切るのも面倒な『怠惰』は、その名に似合わぬ動きでエドさんを追い詰めていく。



「くっ……っ……」



 あの貧弱な腕に、あの平凡な剣に、どれほどの力があるのか。鍛えられているエドさんの、『星剣』の、その力をまるで上回っているよう。いや、実際に上回っている。



 あんな、型も動きもてんで素人の動きなのに、エドさんは防戦一方だ。



「この力は……一体。何か、妙な力を……?」



「あー……間違っちゃいないが……説明するのめんどくさ」



 何とか反撃しようとするが、それすらも弾かれる。形勢は完全に、向こうに傾いていた。やる気のない態度には似合わない力強さがエドさんを襲っている。



 そのやり取りでわかったことは、ベルフェゴールも悪魔四神同様、何かの能力を持っているらしいことだ。



 エドさんには、悪魔四神という悪魔がそれぞれ強力な力を有していることは話してある。



 サラリアもテレポートという力があり、さらにエドさんは知らないがヒロトとバランダの、神力を打ち消す力。悪魔四神だけでなく上級の悪魔なら何らかの能力を持ってる可能性がある。



 ベルフェゴールは魔獣と言っていたから微妙だったが、何らかの能力を持っていることは本人の口から証明された。



「その剣……ただの剣だ。なのに『星剣』と打ち合えるなど……」



「ただのへぼい剣には違いない。ま、この剣が本来出しうる力を限界以上に引き出してるだけの話だ」



 だるそうに語るベルフェゴールの言葉は、私には理解できなかった。限界以上に、引き出す? 一体何を言っているの? ……その答えに最初に気付いたのは、エドさんだった。



「まさか、お前の能力は……その武器の持つ本来の力を……いや、それこそ限界以上に引き出すこと?」



「だからそう言ってんだろ。自分がわざわざ力出すのは面倒だからな。こうして武器自身に力を振るってもらえば……」



 なまくらでも、名剣となり得る……にわかには信じられないが、目の前の光景がそれを証明している。

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