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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
ケモノとケモノ
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私がやったこと



「……して! リー……ゃん!」



「……」



「リー姉ちゃん! しっかりして!」



「……はっ!」



 遠のいていた意識が、覚醒する。と言うより、呼び戻される、と言った方が正しいいかもしれない。私のことをを呼ぶ声に、まるで引っ張られるかのように感じた。



 ……あ、れ……私……いったい……



「……スカイ……くん?」



 意識が戻ると、他にも注意が向く。体に違和感があり、何事かと視線を下に。そこには、誰かが私の体に抱き着いていた。



 ……スカイくんだ。彼が、私に抱き着いていた。私のお腹に顔を押し付けるようにして、そして必死に声を上げていて……



「……リー姉ちゃん! よかった……元に戻ったんだね!」



 まだ意識がはっきりはしないけど、顔を上げて私を見るスカイくんの顔が崩れていたのがわかった。それは、嬉しさに……悲しみに、いろいろな感情が渦巻いているようだった。



 その目に涙が溜まっているのが、とても気にかかった。



 何でこの子はこんなにも……それに、今の言葉の意味。……戻った、って言ったよね。それってどういう……?



 ……って、そうだ! 戦いは!? 今、悪魔と人間のハーフであるバランダと戦っていたはず! こんなことしてる場合じゃ……



「……え?」



 ようやく意識がはっきりして、直前の記憶を思い出す。今この瞬間にも、襲われてもおかしくないような状況だったはずだ。



 今、どうなってるかを確認するために、辺りを見回す……と言っても、視線を正面、スカイくんの背後に持っていっただけだ。



 ……血に染まった大地が、そこにはあった。それも、多少の量ではない。おびただしい量だ。一面を赤く染める程のそれは、まるでバケツいっぱいに溜めた血をぶちまけたんじゃないかと思うほどの量で。



「……こ、れ……」



 そして…視線の先には、その中心には、彼女が……ついさっきまで死闘を繰り広げていたはずのバランダが、倒れていた。



 仰向けに倒れ、顔から、腹から、体中から……無惨に血をぶちまけている姿が、そこにあった。生きている……なんて思えないほどの有様で。



「……え?」



 そこで私は、ようやく自身に起こっている異常に気づく。手に妙な感覚がある。液体に濡れているような、それとも液体が固まっているような……そして、見た。



 ……私の手は、真っ赤に染まっていた。



「これ……わ、たしが……?」



 私が、これをやったの……?



 私は、彼女と戦って……でも敵わなくて。殺されそうになって……そこで、意識が途絶えて。だから私、てっきりあのまま……



 なのに、この状況は何だ? 死んだと思った私が生きて……何で、私にとどめをさそうとしていた彼女が血まみれで倒れている?



 何で……私の手が、血に染まっている? 私が……?



「うっ……」



 胃から何かが込み上げてくる感覚。咄嗟に口を押さえるが、むわっとした鉄の臭いが鼻を犯す。



 この事態を私が招いたかもしれない……それ以外にも、スカイくんにこんな姿を見られた。いろいろな感情が、溢れ出しそうだった。



「リー姉ちゃん……オル姉ちゃんが……」



 そんな私の耳に、泣きそうな……いや、実際泣いているであろうスカイくんの声が届く。そうだ……オルちゃん!



 絶望してる暇はない、私は何のために戦ってた!? 彼女は、どうなった!? あれからどれくらい時間が経った!?



 オルちゃんがいた場所に顔を向けると、そこには……顔色が白くなり、小刻みに震えるオルちゃんの姿があった。どうやらまだ生きてはいるようだけど、傍目から見ても危ない状態だ。



「オルちゃん!」



 私は、駆ける。意識が途絶える直前まで動かなかった体は、なぜか動いた。力も、まだ使える! もう、あの時みたいな過ちは二度と……!



「急いで!」



 切羽詰まったエドさんの声が届く。どうやら傍にいるらしいが、それを確認する時間も惜しい。オルちゃんの衰弱具合……それは、残る時間が数十秒ほどもないことを感じさせられる。



 私がどれほど意識を失っていたか、それがうかがえる。



 あのまま目を覚ませなかったらと思うと……今度こそ、私は死にたくなるかもしれなかった。あの状況で私に呼びかけてくれたスカイくんに、後でお礼を言わないと。



「くっ……!」



 ズキッ……と膝が悲鳴を上げる。後数歩というところで、一気に全身疲労が襲ってくる。まるでフルマラソンを走った後のように息は上がり、汗も吹き倒す。



 体が内側から疲れきっているのがわかる。



 でも足は、止めない。手を伸ばす。届け……届け!



「オル、ちゃん!」



 弱々しく伸ばされた手に、私は手を繋ぐ。そこに私は、残る限りの天力をありったけ、流し込む。繋いだ手は淡く輝き、次第にオルちゃんの体が光に包まれていく。



 白かった肌は徐々に健康的な色を取り戻していき、汗も止まる。先ほどまで衰弱しきっていた体は、着実に回復しているのがうかがえる。



 それは、解毒に成功したことを意味していた。

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