暗闇の中に
……暗い。どこまでも暗い世界。右も左も、上も下もわからない。
地に足をつけているのか、それとも宙に浮いているのか。息をしているのかしていないのか。目があるのか、口があるのか、生きるための器官があるのか。生きているのか死んでいるのか。何がどうなっているのかもわからない。
以前にも……というより、ほんの少し前にも似たようなことがあった。まるで無間の地獄にでも放り込まれたような感覚だった。あの時と似ているが、どこか違う。あの時とは何かが。
今回のこれはまるで、自分の中の黒い部分……闇の部分に呑み込まれてしまったかのよう。そして自分の一部であるはずなのに、ひどく気持ち悪い。
自分の中にこんなおぞましい感覚が眠っていたのかと、吐きたくなる。
視覚も、触覚も、聴覚も、嗅覚も、世界を感じとるための感覚は何も感じることができない。唯一働くことのできるものは記憶だ。
記憶だけが、自分が自分を見失わないでいられめに必要なものだ。
記憶を頼りに、こうなってしまった直前に何が起こったかを思い出す。私、どうなったんだっけ……と。そして、次第に記憶は鮮明になっていく。
そうだ、確か、悪魔と人間のハーフだという女の子と戦っていたのだ。戦って……しかし、その力は強大だった。力及ばず……なんて生易しい言葉では済ませられない。
まったく、敵わなかった。一方的にやられて、殺されそうになって……それで……意識がとぎれたのだ。それならばここは、死後の世界だろうか?
……そっか私、死んじゃったんだ……
結局、何も出来なかった。力敵わず殺されて、結果毒に侵された友達も救えない。そして、他のみんなもきっと殺される。
……自分の力不足のせいで、みんなが……
『リー……!』
……ふと、声が聞こえた気がする。こんな暗い世界に、声? ありえないとさえ思えた。幻聴だろうか? そう考えた方が、幾分か納得できることが……
『……ゃん、……て! リ……!』
今度はさっきより、しっかり声が聞こえる。間違いない、これは声だ。これは……呼んでる? 誰を? 何で?
……その声に反応するように……目の前に一筋の光が射す。自然それに『手』を伸ばしていく。光は、次第に辺りを照らしていく……




