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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
19/314

神様の楽しい学園生活



 翌日……



「おーい、いつまで寝てんだよ」



「んん……後五時間……」



「長いわ! せめて五分だろそこは!」



 未だ寝たままのエルシャに、声を掛ける。昨夜、結局あれからリーシャとたいした話もせず、お互いに帰宅した。その時には、こいつは一人ベッドで眠っていたのだ。くそ。



 仕方ないので俺は床で眠り……いつも通り起床。寝る場所が違っても習慣とは体に染み付いているものだ。今日は休み明け……エルシャにとっては、学園へ初登校となる日だ。



 だというのに、こいつは気持ちよさそうに眠ってばかり。このわがまま娘め……



「ほら、おーきーろー」



 こうなったら強行手段、布団を剥ぎ取るだ。結構力強く引っ張るのだが……こいつ、どれだけの力で布団を握ってるんだ……? これでも俺、男なんですけど。



「わーかった、わかったあよぉ……」



 ……と、俺が布団を剥ぐよりも先にエルシャが折れた。何とか起こすことには成功するが……もしかしてこれからもこれが続くのか? 勘弁してくれ……



「んー、いい気持ち!」



「それは良ござんしたね……」



 起きると言いつつベッドから動きやがらない。その後何とか引っ張り準備を済ませ、登校のため外に引っ張り出したが……その頃にはもう、さも自分で起きたといった顔をしていた。こ、この女……



 何だか、朝一番から疲れた……これが子を持つ親の気持ちなのだろうか?いや、全然年齢的には違うんだけどさ。……母さん、毎朝鬱陶しいとか思ってごめんよ……



「……あれ?」



「お、どうしたの?」



「いや……」



 ……何だろう、この感じ……というか、違和感?何か突然、ズゥン……と頭に何かが圧し掛かってるような、そんな違和感。痛いのとも違うし……



「あ、おはようヒロト! エルシャ!」



 俺の妙な違和感は、向こうからやって来たアカリの声によりかき消された。まあ、いいか。別に痛いわけでもないし。



「お、おう……おはよう」



「おはようございます、ヒロトさん」



 そして、アカリの後ろからはリーシャが。ルームメートだからか、一緒に登校しているのだろうか? それにしては俺、アカリとリーシャが一緒に登校してるとこ見たことないんだけど。



「おはよう、リーシャ」



「あ、あの……おは……」



「……さ、行こうアカリちゃん。ヒロトさんも」



 挨拶を返した俺に続いて声をかけようとしたエルシャだったが、それは叶わなかった。行こう、と言って、エルシャに見向きもせずそそくさと行ってしまう。うーん、これは……



「ど、どうかしたの?」



「いや……さあ」



 今のやり取り、一応事情を聞いていたから対応できるけど……事情を知らないアカリからしたら、訳が分からないだろう。



「どうしたんだろ……リーシャ、人見知りではあるけど挨拶はきちんとする子なのに」



 エルシャが自分を許せないのと同じくらいに……いや、ひょっとしたらそれ以上に、リーシャがエルシャを許せない気持ちは強いのかもしれない。思っていた以上に、話をさせるのすら難しいのかもしれない。



「と、とりあえず行こうぜ! な、エルシャ!」



「……うん」



 予想以上にショックだったようで、俯いてしまっている。あの元気の塊みたいなエルシャが。これは……やはり、仲介役がいないとダメかもしれない。じゃないといざとなっても話すらしてくれないぞ。



 となると、アカリにも事情を知ってもらってたほうがいいとは思うが……うーむ、どうしたもんかな。



 ……結局どうしたらいいのか答えは出ず、今は教室にて席に座っている。人の事情をペラペラ話すのはどうかと思うし、何よりアカリとリーシャはルームメートだ。



 共に過ごすというのに、ギクシャクした関係になるのは勘弁だろう。



「おらお前達、席につけ」



 そこへ、担任であり神力テストの担当教員、ティファルダ・アラナシカ先生が入ってきた。毎度のことだが、何かいろいろ男らしすぎてたまに女性であることを忘れそうになる。



 俺は神力が使えない……こういう言い方でいいかわからないが、その代わりに先生の手伝いや頼み事を引き受けている。それを対価に、成績が落ちないようにあれこれしてくれている。



 色々お世話になっており、頭が上がらないのだ。



「いきなりだが今日は編入生を紹介する。喜べ野郎共、転入生は女子、しかもかなりの上玉だぞ」



 その言葉に、一気に教室内(男の声のみ)が沸き上がる。女子も盛り上がっているのかもしれないが、それをかき消すほどの声だ。う、うるせー……



「さ、入れ」



 教室に入ってきた人物を見て、さらに盛り上がる男共。まあ、気持ちはわからんでもない。見た目だけなら、それこそ学内でもトップクラスだろう。が……こいつ、相当腹黒いぞ。



「……初めまして、エルシャです。皆さん、よろしくお願いします」



 何て爽やかな笑顔だろう……そして礼儀正しくお辞儀。見ただけだと、どこぞのお嬢様を感じさせる。その様子に、俺はぽかんとするしかなかった。



 だ、誰だ……お前は誰だ?



 俺が戸惑っているうちに、空いている席……まあ俺の隣の席へ座るように案内されていた。うげ、隣かよ……何か周りからの視線が痛いんだが。



「何であんな落ちこぼれの……」



「調子に乗ってんじゃねえぞ、落第生が……」



 はは……俺が何かしたとかじゃないのになあ……てか聞こえてるって。陰口を隠す気もないのか俺が耳がいいだけなのか。



 俺には聞こえてるが、果たして彼女には聞こえているのかいないのか、エルシャが一歩踏み出そうとしたその時……



「エルシャさーん!!」



「!?」



 驚いたようにエルシャが……というより全員が声の方を向く。するとそこにいたのは……



「……」



 オルテリアが、ぶんぶんと手を振っていた。本人はとても嬉しそうだ。一瞬の静寂。



「……ぷっ」



 みんなが唖然とする中、笑いを抑えるようにエルシャが口を抑える。別にそんな意味で言ったんじゃないだろうけど、何だか場が楽になったような気がした。



「……サシャターン、話はホームルームが終わった後でな?」



「はいですの!」



 そして改めて……エルシャは、俺の隣の席へと腰を下ろす。



「よろしく……ヒロト君」



「……あぁ」



---



「はぁあ……疲れた……」



 あの後、転入生のお約束というか、エルシャの周りには人が集まっていた。ちなみに隣の席の俺は邪魔物扱い。



 その間も、誰だこいつと突っ込みたくなる態度を振り撒きながら一々すべてに対応していたエルシャだったが、昼休み……屋上にて顔見知りだけになると、長い長いため息をつく。



「あははて…お疲れ様」



「全く……こんな美少女誰も放っておかないとはいえ、あんまりしつこすぎると鬱陶しいわね」



 こいつはあくまでも高飛車なままなんだな。クラスのやつらに、この態度との差を見せてやりたい。そうしたら多少はおとなしくなるだろうに、何で猫を被るのか。



「それにしてもあんた……いつもああなの?」



「え、俺? ああって……」



「陰口。聞こえないわけないでしょ、聞こえるように話してたんだから……温厚な私も、もう少しでキレちゃうとこだったわ」



「え……」



 俺の陰口に、キレそうだなんて。ろくでもない奴だと思っていたがこいつ、案外いいとこがあるんじゃ……



「私嫌いなのよねー、影でこそこそああいうことやってる連中。変態落第生のことはどうでもいいけど、居心地悪かったわ」



 前言撤回。こいつは俺のことなんて微塵も気にしてないらしい。というか変態ってやめてくれません?誰かに聞かれでもしたら誤解を生む。



「へん、たい?」



 ほら、事情を知らないオルテリアが興味示しちゃったよ! ……ちなみにこの場にいるのは俺とアカリ、エルシャ、オルテリアの四人だ。リーシャはどうやら、昼飯は別の友達と食べてるらしい。



 人見知り克服のために自分以外の人とも接さなきゃ、とはアカリの言葉。今朝疑問に思った登校も同じ理由らしくアカリとは別なんだとか。



 スパルタかよとも思ったが、アカリなりにリーシャのことを考えてるんだろう。



 ……と、話を戻すか。変態に反応しちゃったオルテリアだが、言えないよな、エルシャと初めて会ったときの経緯なんて……そのせいで度々変態落第生とからかわれることになってるんだから。アカリからもたまに変な目を向けられる。



「な、何でもない何でも! あはは……」



「そうですの?」



 どうやら誤魔化せたらしい。変に追求しない、素直ないい子だ。



 以前から、どこか憎めない明るいキャラ、って感じだったが……こうして一緒に過ごすようになってから、ますますいいところを見つけられている。



「どうしたのヒロト?」



「え、いや……何か、嬉しいなって思って」



 今朝もそうだったが、俺は落第生ということで色々言われたりもしている。あまり気にしないようにはしているつもりだ。一つ一つ全部相手にしてたらキリがない。



 けど……それでもやっぱり、寂しいとか悔しいとかは思うもので……こんな俺と、一緒に飯を食べてくれる人達がいる。何て幸せなことだろう。



「ふーん……あんまり根詰めすぎちゃダメだよ」



 アカリは、何か察しているらしいのか優しくそう告げてきた。昔から一緒にいるからか、おちおち隠し事もできない。やっぱり、敵わないな……



「ヒロトは昔から色々抱え込むことがあるんだから……一人で抱え込まずに、ちゃんと言ってよ」



 全くもう……と呆れたように話すアカリは、どこか嬉しそうだが……それを見たエルシャが、にやにやと笑みを浮かべている。あ、これまた……



「へー、ヒロト君のことなら何でも知ってるアピールですかな?」



「な! 何言ってんのよ! べ、別に関係ないわよ!」



「何の話だ?」



 幼馴染だし、大抵のことは知ってても不思議はないだろうに。なぜそうも顔を赤くして否定する必要があるのだろうか。



「お二人は仲良しですのねー。仲良きことは良きことですわ」



「別に良くない!」



「ぷぷ……」



 しかしこの三人が一緒にご飯食べてると絵になるよな。ただでさえその見た目から人気な上、二人はAランク、一人は神様ときた。



 とはいっても、事情を話された俺とアカリ、アラナシカ先生…そして天使と人間のハーフであるリーシャ以外はエルシャの正体は知らないんだが。



 色々と大変な事情を抱えてる俺達けど……このまま、こんな風にみんなが笑いあって過ごせる日々が続けばいいな。目の前で笑ったり怒っている三人を見つつ俺は……そんなことを思いながら、空を見上げた。あぁ、雲一つないいい空だな。



 のんきに過ごしていた俺は……いや俺達は、この時誰かに観察されているという事実に気づかなかった。それが、終わりの始まりを告げることになるとも知らずに……





「見つけましたよ……か、み、さ、ま♪」

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