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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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神様と天使



 買い物を終えた俺達は、寮へと帰宅した。俺とエルシャ、アカリとリーシャはそれぞれ部屋が違うため別れ、今は自室だ。



「ふう…」



 さ、さすがに疲れた……あれからもずいぶん買ったし、しかもそれは当然のように俺が荷物持ちだ。所々でリーシャが気にかけてくれなかったら逃げ出していたかもしれない。



 しかしあれだね、荷物持ちはまだいいにしても……帰ってきた後、アカリが自分の荷物を神力で自分の部屋に運んで行った時は泣きたくなったよね。俺が持つ必要はまったくなかったよね。何この無駄骨感。



「だらしないわねえ、男でしょ?」



 ベッドに腰掛けた俺をねぎらうこともなく、こいつもこいつで偉そうにしやがって……エルシャのやつ。神様だか何だか知らないが、今は力もないただの女の子じゃないか。こいつが偉そうにする理由なんて……



 ……やめよう。こんなことごちゃごちゃ考えてても仕方がないし、考えるだけ無駄だろう。



「ま、いいわ。私お風呂入ってくるから」



 そう言って、そそくさと風呂場に行ってしまう。気楽なもんだねえ、まったく……



 まあ、何だかんだ言っても今日は楽しかったよ。あんな風に、アカリ以外の人と一緒に出掛けることなんて久しぶりだったし。エルシャも楽しそうに目を輝かせていたし。さしずめ、神様の冒険ってやつだろうか?



 ……けど、その中でも気にかかることはあった。あの時は結局聞けなかったけど……あいつが風呂から上がってきたら、思い切って聞いてみるとしよう。リーシャとの間に、何かあったのかと。



 それからしばらく、ベッドの上でごろごろして待っていると……ようやく風呂から上がってきたらしい。やっぱりエルシャの風呂は長い。それとも、女の子はそうだろうか? 風呂といい買い物といい、俺にはわからん。



「はあー、さっぱりしたー」



「なあ、ちょっと聞きたいことが……」



 早速話し掛けようと首を動かし……エルシャの姿を見て、愕然とした。見た限り、ワイシャツ一枚しか来てないのだ。こいつはまた、こんな格好を……



「お前、またそんな恰好を……今日買ったのあるだろ?」



「だって窮屈なんだもの」



 窮屈っ……じゃあ何で買ったんですかねえ!? ……仮に窮屈だからからって、やっぱりその恰好は……刺激が強い。目のやり場に困る。



 しかもわざわざ隣に座ってくる辺り、絶対からかってやがる……こいつ、しまいには襲うぞ。



「あらー、やっぱりドウテイくんには刺激が強すぎたかしら?」



「どっ……な、何言ってやがる!」



 本気でしようとしていたわけではないとはいえ、こんなこと考えてたタイミングで何てこと言うんだこいつは! はしたないよ!



 ……否定できないのが悲しいところなんだけどさ!



「あっははは! やっぱりキミ面白いわ!」



「そりゃドーモ」



 からかわれるアカリの気持ちが、少しはわかった気かするよ。この女……いつか見返してやるからな。



「で、聞きたいことって?」



 笑いすぎて目に溜まった涙を拭いながら、こちらを見る。何だ、俺のことからかってるから聞いてないのかと思ったが、ちゃんと聞いてたんじゃないか。



「あぁ……昼食の時にさ、俺とアカリが席外した時、リーシャと何話してたのかなって……あの後、様子が変だったし」



 少しむくれながらした質問。……しかし、その質問をした瞬間、エルシャの笑い声が急に途絶えていた。



 何事かとその姿を見ると、まるで固まってしまったようになっていて……しかし、その額からは冷や汗が流れ、心なしか青ざめていた。



 この反応は……やはり、ただ事じゃないよな。やっぱり無理に聞くのは、良くないのかも……



「あ、話したくないなら無理には……」



「……覚えてる? 私が天界にいた頃の話……悪魔が侵攻してきて、殺されそうになって……って話」



 聞いたのは俺だけど、無理には……そう思い断りを入れようとしたのだが、エルシャはそのままぽつぽつと語り始めた。



 その瞳はどこか虚ろで……まるで、話してはいけないこと、話したくないこと、それらが彼女の中でごちゃまぜになっているかのような。



 自分の中で、その気持ちをどうしたらいいのか、しまえばいいのか吐き出せばいいのかわからないような。



「あぁ、覚えてるよ。対抗したけど、力が及ばなくてって」



「そう。私が殺されそうになった時に、助けてくれた親友がいたのね。その……彼女の妹だって……リーシャ・テルマニンが」



「……えっ……」



 話されたのは、予想以上に衝撃的な内容だった。エルシャのその話からはどこかまばらで、言いたいことがまとまってないように思えた。



 それにしても……リーシャが、エルシャを助けた親友の妹? そんなことってあるのか?



 ……って、待てよ。確かその話って、天界での話だよな。つまりその親友って……



「エルシャを助けてくれた親友って……」



「そう、天使だよ……」



 俺の疑問に、エルシャはあっさりと答える。……え、マジで?リーシャは天使の子だっていうのか!? Cランクの、“空腹の魔女”である彼女が!?



「私のことは、気づいてたみたい。私の方は、力を無くしたと同時にいろいろ鈍っちゃって。……それで二人になった時……話してくれたわ。私の親友……ファルニーゼとは、種違いの姉妹だって」



 俺とアカリが席を外していた時に二人が話していた内容……それは、リーシャの正体に関わるもの。リーシャと、エルシャの親友の天使とは姉妹でありながら種違いだという。



 種違いって確か、母親が同じで父親が違う、って意味だったっけ。



「ファルニーゼの母親は、それぞれ別の男性を愛して子を産んだの。一人は同じ天界の男性を、一人は人間界の男性を……つまり、ファルニーゼは純粋な天使、リーシャ・テルマニンは天使と人間のハーフということよ」



 続いて明かされるのは、リーシャの正体にさらに踏み込んだもの……天使と人間のハーフというものだ。……それが、リーシャの正体か。驚きすぎて素直に驚けねえ。



 ……けど、この事実を話されたからと言って、エルシャがあんな……脅えるような態度になるとは思わないんだが。そう、思っていた時だったら、



「そして、リーシャ・テルマニンは言ったわ……『お姉ちゃんを殺した貴女を許さない』って」



 ちょうど考えていた俺の疑問。まるでそれにに答えるかのように、エルシャは続ける。同時にそれは、エルシャが怯えていた理由も明らかとなった。……だけど、お姉ちゃんを殺したって……



「え、お姉さんは、エルシャを庇って殺されたんじゃ……」



「そう、私を庇った……庇った『から』殺されたの。それを、彼女は恨んでる」



「そんな……そんなのちが……」



「違わないよ。私も後悔してた……私なんかを庇わなければ……一人でも逃げてれば、死なずに済んだんだって。私が殺したようなものだよ」



 お姉さんを殺した……そう思っいるリーシャから、そのことを告げられ、エルシャは怯えてしまったというわけか。エルシャの方も、自分を助けたから……という自責の念が、彼女を苦しめているようだ。



 エルシャの親友でありリーシャのお姉さんである天使……彼女がエルシャを庇い命を落としたことを、エルシャは自分を責め、リーシャはエルシャを恨んでいる。



 ……けど、そんなのは違う。一番悪いのは……攻めてきた、悪魔達だ。お姉さんがエルシャを庇ったのだって、親友だったからこそだと思う。……とはいえ、割り切れというのも無理な話だろう。



「お姉ちゃん、か…」



 あのリーシャが……まさか天使と人間のハーフなんて。リーシャからしてみれば、突然姉を奪われたんだ……許せないのも、仕方ないのかもしれない。何を憎めばいいのかもわからず、その憎しみは彼女が庇った者へと向いて……



 だけどそれでエルシャを恨んでほしくなんかない。それじゃ……エルシャとリーシャの二人……、いやお姉さんを含めた三人とも救われない。



「はぁ……私、もう寝るね」



「え、飯は……」



「いらない」



 これで話は終わり。そう言って、ベッドに潜り込んでしまった。気丈に振る舞っていても、やっぱりショックなんだろうな。そっとしておこう。



「……はあ」



 一人でこうしていても仕方ない。エルシャも一人になりたいかもしれないし、とりあえず部屋から出るとするか。



「……星が綺麗だな」



 外に出て、目的もなく歩いた。空を見ると星が広がっており、思わずため息が漏れる。一つ一つは小さな星でも、しっかり輝いている……力強く。



「……ヒロトさん?」



 そこへ、聞き覚えのある……というか、さっきまで一緒だった声が。それも、今しがた話題になっていた人物だ。内心焦りながらもそれを表に出さないよう努め、声のした方向に視線をやると……



「リーシャ……」



 ついさっき話題の中心だった人物が、そこにいた。彼女も一人であり、この静かな空間に二人きりだ。あんな話を聞いてしまったから何となく、気まずくなってしまい視線をそらす。



 不自然に思われなかっただろうか。



「どうしたんです? こんな時間に……」



「リーシャこそ」



 すると彼女は、単なる散歩だと答えた。俺も、まあ似たようなものだし「そうだ」と答えておいた。それから会話が途切れしまう。元々リーシャは内気な性格なんだろうし、俺からは何だか話しかけづらい。



「綺麗ですね、星」



「そ、そうだな……」



 せっかく振ってくれたバトンを落としてしまう。ヤバい、会話が……つい先程まで天使だのどうだのって話をしてたせいか、うまく頭が回らない。



 何を話す? 「お前天使と人間のハーフなんだって?」……ダメだ、脈略がない上にエルシャが喋ったと文句を言う可能性がある。



 このタイミングでエルシャをさらに追い詰めるわけにいかないし、俺から聞き出した節もある。エルシャだけに文句を言わせるわけにもいかない。



「どうしたんです?」



「な、何でも……あはは……」



 そうだ、こんな風に考えてるからいけないんだな。普段通りにいこう普段通りに。……リーシャと話すの今日が初めてなんだけどな!



「風が気持ちいいなって思ってさ」



「あぁ、そうですね。気持ちいい……」



 風になびく髪を押さえているリーシャ。その様子を見ていると、何ともいえない感情が沸き上がってくる。こうして見ていると、普通の女の子だよな。それが、まさか人間と天使のハーフで、エルシャを恨んでいるなんて……



「ずっと、こんな風にのんびりして平和ならいいのに……」



 誰に言うでもないその言葉は、しかし俺には届いた。死んだ姉のことを思い出してるのかもしれない……こんな平和な世なら、殺されることもなかっただろうと。



 その願いがいつか叶い……そしていつか、エルシャとリーシャの確執が溶ければいい。……この時の俺は、そんな些細な願いをするだけで満足していたんだ。

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