表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
黒い少女
179/314

心の底にあるもの



 枝が深々と、手のひらに突き刺さる。



「こえーよなあ。いつも目にしてる変哲もないものが……ちょっとしたことで凶器に変わるんだ」



 愉快に話す少女の声。だがその声に、一瞬の揺らぎがあったように思う。が、そんな些細な問題はすぐに痛みに塗り潰される。ただの小枝が……今では私の体を封じ、手を地面に拘束している。



「これでお前は終いだ。そこの女も、もうじき死ぬ」



 話の途中にも、起き上がろうとするが……力を入れているのに、全然力が入らない。それどころか、足に力を入れられ腹を圧迫される。



 再び反撃しようにも、刺された小枝に力を加えられたり、ぐりぐりとかき回され……思考が、痛みに支配され無理やりに反撃の意思を中断させられる。



 彼女が視線を向ける先には、毒に苦しむオルちゃんの姿。手を地面につき、四つん這いの状態で苦しんでいるオルちゃんはそれでもなお、私に視線を向けている。



 その瞳は、まるで私のことを心配しているように揺れていて。



 こんな時でも、自分のことより……



「はぁ、はっ……ぐっ」



「どうした? あぁそうか、お友達のために頑張らなきゃなぁ」



 体をよじる。痛み……それが、何だと言うんだ。ここままじゃ私だけじゃない。オルちゃんは毒にやられ、その次はユメちゃん、それにエドさんやスカイくんも狙われるだろう。



 わかったことがある。……この子は、ただ純粋な、破壊衝動、それだけのために動いている。ただの悪魔とは、全然違う。



 そんな存在を放っておけば、仲間達がどうなるか……だから、ここで痛みなんかに負けている場合ではない!



「しな、せない……みん、なを……絶対……私が、みんなを……!」



 手がちぎれても構わない。内蔵が飛び出ても構わない。だからどうか、ここでこの子を止めるだけの力を……



 その言葉を口にした瞬間……彼女の肩が、少しだけ震えた気がする。



「死ぬんだよ、みんな。お前のせいで」



 私の決意を嘲笑うように、降りかかる冷たい声。それはなぜか、熱くなっていた私の心を、一瞬で冷やしてしまうかのようで。まるで、氷の入った冷水を頭から被ったようで。



「わた……しの……?」



「お前にも覚えがあるだろう」



 私を見つめるその瞳は……私の心を、見透かすかのようなもので。その言葉は、私の心に恐ろしく入り込んでくる。



「知ってるぜ? 天使の子供のお前がいたせいで、父親が襲われた。お前が救えなかったせいで父親が、そして友人が死んだ。お前がいたせいで、そこの青髪女は苦しみもうじき死ぬ。お前がいたせいで、周りの人間は不幸になる」



「ち、違う……」



「お前が、お前が……」



 私を責めているのか。いや、それとも……?



「お前がいたからお前のせいだお前が悪いお前さえいなければお前には誰も救えない」



「な、にを……それは、私のこと? それとも……」



「……アンタなんか、生まなきゃよかった」



 饒舌になっていく少女は、私を責め立てる。いや、これは本当に私のことなのだろうか? 確かに……私のせいで救えなかった命がある。それを、指摘されもした。私も認めることだ。



 ……だけど、その瞳には私は映っていない。これはまるで、自分の……



「……この、疫病神が」



 そこまで言い切り、彼女は一度手で顔を覆う。そうして、次に顔を見せた時には、その瞳には私の姿を映していた。そして、ゆっくりと足を上げる。その足に、闇のエネルギーを集中させて……



「せめてもの慈悲だ。バランダ……それがアタシの名前だ。自分を殺した相手の名前くらい知っとかねえとな」



 言って、少女……バランダは、笑みを浮かべる。バランダって……確か、組織『天』で天使に化けた悪魔サラリアが言っていた、バックについている悪魔の名前……



 考えている頭が、思考を放棄し始める。視界がぼやける。このまま何もしなければただ殺されるだけだ。抵抗しなければいけないのに……体が、頭が、言うことを聞いてくれない。



 体に蓄積された苦痛が、『発作』による苦痛が、バランダに投げ掛けられた言葉の刃が……それら全てが、私の心を切り裂いていく。



 もう何度も想像した、私を責め立てる声。それが、再び聞こえてくる。お母さんが、お姉ちゃんが、お父さんが、アカリちゃんが、エルシャが、みんなが……



 ドクンッ……



 私が……私がいるせいでみんなが苦しむ。不幸になる。だったら、私は……



 ドクンッ……



「あばよ、リーシャ・テルマニン」



 別れのアイ拶を残し、闇のエネルギーをマトッた足がついにふりおろさレル。



 ……私はそれをただ、見つめていた。もう抵コウするちからも、避ける力さえモ残っていナい。



 このマま殺されて……オルちゃんの毒も、解ドク出来ずに……みんな、殺される。わたしが、私がふがイナいから……みんな、ごメん…



 ぼウ然と顔に迫り来る足を見つめている。マルで、そレガすろーもーしョんになったかのように、景色がゆっくりミエル。だけドそれが、反撃に繋がル隙になるかといえばそんなこトハなく。



 かおを潰され、息絶える。己のサイ期を予かんした。……ごめんみんな、わたし、守レナカった。でもできルナラ……死ななイで。……アカリちゃん、今から逝くね。



 ……そこで、私のイ識は途絶……






 ドクンッ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ