雨に濡れる涙
「はぁ……はぁっ、はぁ……」
姉が死んだという発言を受け、その衝撃は全身を走り……少女は走り出した。その少し前から降りだした雨は徐々に強くなっていき、少女の顔を、体を濡らす。だが、それで少女が歩みを止めることはない。
……どれだけ、走っただろう。少女が足を止める頃には、雨は大降りになっていた。だがそれで、少女の気持ちが流れ落ちることはない。
ザァアアア……
一人、佇む。雨に濡れて、髪も服もぴしゃびしゃだ。本来なら、髪や服が貼りついて気持ち悪い。だが、それも気にせず、少女……ユメ・ヴィールズはその場から微動だにせず立ち、空を見上げる。
そこには、闇に包まれた空があるだけだ。まるで、彼女の気持ちを表しているかのよう。
「……今日は、余計に暗いな」
黒い雲が空を覆い、いつもよりも世界を闇が包んでいるように感じる。雨も、強くなる。
ザァアアア……!
暗い空……だがそんなこと、今、ユメにとってはどうでも良いことだった。今、彼女の胸の中を占めているのは……たったひとつの想い。
「お姉が……死んだ……」
実感が湧かない。そんなこと、到底信じられるはずもない。……ない、はずなのに。
今日初めて会ったばかりの人の、その言葉をすんなり受け入れることができたのは……以前から、この胸にポッカリ穴が空いたような喪失感があったからだ。しかもそれは、世界がこんなになる少し前だった気がする。
もしかしたら、姉を失った事実が妹に伝わり、この空虚感を作ったのかもしれない。いや、いくら姉妹だからといって、こんなに離れているのにそんなことは……
ザァアアア……!!
いくら考えても、わからない。だが、確かに失ったものが、ここにあると、本能が訴えかける。胸の中にぽっかり空いてしまった穴があるように、彼女に訴える。
……姉が、死んだのだと。
全てを理解したユメは……空を仰いだまま、頬に何か冷たいものが伝うのを感じた。
それは雨の滴か、それとも……
ザァアアア……!!!
「―――!!!」
何かが崩壊したように、張り詰めていた彼女の気持ちが切れる。顔をくしゃくしゃにしてがむしゃらに叫ぶ彼女の声は……しかし雨音に隠れて聞こえない。
激しく降り注ぐ雨の音が、地面に打ち付ける雨が、ユメの声をかき消していく。一向にやむ気配のないその雨は、まるでユメの感情そのものを表しているようだった。




