表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
170/314

優しい嘘か、残酷な真実か



「ねえ……お姉は、元気かな?」



 唐突に突き付けられた……しかし、当然の問いかけに、私は心臓を掴まれた気持ちになった。息が、苦しい。



「お姉が神力学園に行ってからは、電話だといっぱい話したんだけど、あんまり会えてなかったから。それに、世界がこんなになってから電話も通じないし。お姉のことだから、心配はしてないけど……どうせなら、会いたかったかなぁ」



 当然といえば、当然の質問。彼女は、私達が散り散りになったことを知らない。学園関係者から聞いていたとしても、アカリちゃんがどこにいるのかを知る術はないのだ。



「今人々の希望って言われてる"双翼の星"は、二人のことなんでしょ? てっきりお姉のことかと思っちゃった。」



 間違えて恥ずかしい、と言わんばかりに舌を出して笑うユメちゃん。



 その考えは、正しい。普通、人々の希望って言ったら、そう言われるだけの強さを持った人ということになる。アカリちゃんにはそれだけの力があった。神力の強さでも、精神的な意味でも……



 オルちゃんがそう呼ばれるのも、納得だ。でも、私は……そう呼ばれる資格なんてない。友達を見殺しにした私には、希望なんて言われる資格はないのだ。



 ……ただ、今の問題はそんなことではない。一番の問題は、そう……



「お姉、あれで寂しがり屋だから、一人だと夜な夜な泣いちゃってるんじゃないかな」



 はにかむ彼女を見て、私は言葉に詰まる。一番の問題……アカリちゃんの居所、いや生死についてを、どう切り出そうか思考が停止してしまっている。……そう、アカリちゃんが命を落としたという事実を、伝えることを戸惑っている。



 その件を知らないユメちゃん。人魔戦争については世界中に広まっているが、その件は、学園の中でもあの場にいた限られた者しか知らない。だから、それが誰かに伝わることは、まずないだろう。



 だからユメちゃんは、アカリちゃん、そしてヒロトの件を知るよしもない。だから当然、今もアカリちゃんはどこかで生きていると信じているのだ。



 ……姉のことを嬉しそうに話す妹。その姿にデジャヴュするものがあり、こんな時にも関わらず私は目頭が熱くなるのを感じた。



「……どしたの?」



 そんな私の異変に気づいたのか、不思議そうに首を傾げるユメちゃん。私は何と答えるべきか少しだけ悩んで……



「何でもないよ」



 答える。私は少し、お姉ちゃんのことを思い出しただけだから。



 目頭が熱くなったのは……感慨深さによるものだけではない。当然、この先の展開をどうすべきか、真実を伝えるとしてその後の反応に、不安を示すものでもあり……



「そっか……二人とも、お姉の居場所は知らないのか」



 ユメちゃんは、うーん……と指を顎に当てる。私達が何も答えないのを、居場所を知らないと判断したようだ。情報を得られず残念といった風だ。



 ……何も知らない、と答えるのは簡単だ。きっと、どこかで元気にやってるよ……と。



 でもそれでいいのか? 希望を持たせるためとはいえ、嘘を。しかも、とんでもない嘘をついてしまって。



 ……とはいえ、こんなお姉ちゃん大好きっ子に真実を伝えるのは……気が引ける。しかも、こんな状況下で。



 私の考えがまとまらないうちにも、ユメちゃんのお姉ちゃん話は続く。



「お二人と仲良くしてもらってるみたいだけど……お姉が迷惑かけてるんじゃないかなぁ? そもそもお姉は、人がよすぎるんだから、少しくらいは……」



「亡くなりましたわ。アカリさん……貴女の、お姉さんは」



「人に甘えたりとか…………え?」



 ……私もユメちゃんも、覚悟していない中で……いきなり放たれたオルちゃんの言葉が、場を凍らせた。



「ちょ、オルちゃん!?」



「優しい嘘か、残酷な真実か……私は、後者を選びますわ。どのみち、いつかは真実を知ることになります。それに、言うのが遅くなるほど言い出しづらくなるだけです」



「それは……」



 そうなんだけど。でも、もう少しタイミングっていうか……心の準備が。



「亡く……なった、って……お姉、が……?」



 衝撃の告白を受け、絞り出すように言葉を出すユメちゃんは……引きつった笑みを浮かべていた。先ほどまでの笑顔が消え……その言葉が信じられない、きっと質の悪い冗談だと自分に言い聞かせているようで。



 ……残酷な現実が、幼い少女を襲っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ