仲間という光
「……ぁ……」
「あ、リー姉ちゃん!」
視界が、開く。声も、出る。音も、声も聞こえる。最初に映ったのは、薄暗い天井で……聞こえたのは、私の名を呼ぶ声。そして……
「リーさーん!」
「ふばぁ!」
無防備な体に、いきなりダイレクトな衝撃が伝わる。所々柔らかいが、油断……というより何が起きたかわからずぼーぜんとしていた私にはその衝撃は何かに激突されたかのよう。
というか、実際に激突していた。
「起きたー、よかったですわー……!」
「……おる、ちゃん……?」
衝撃の正体、激突してきた犯人は、私の胸に顔を埋めて押し付けて来る青髪の少女、オルちゃんだった。
そして視線を動かすと、目の前には目に涙を溜めたスカイくんと心配そうな表情を浮かべたエドさんがいた。
「あれ……私……」
どうして目の前にみんながいるのか。というより、ここはどこなのか。場所を確認するために視線を巡らせる。先程のばか広い空間とは似ても似つかない、少しだけ広々とした部屋。
薄暗く、明かりはない。開け放たれたままの扉の向こうに見えたのは、見慣れた景色。……そうか、ここは……
……ここは、エドさんの村の女性達がいると思われるあの大きな場所。そして、誰か人がいないかと探し回り、その際に見た風景が扉の外に広がっている。
つまりここはその時に見た、他よりも大きな家。その中に入りさっきの空間にいたはずなのだが……
「ここ……私、どうして……」
「時間になっても戻って来ないし、探しに来たらここで倒れてたんですのよ! 呼んでも起きないし、死んではいないようでしたけどどうすればいいかと……」
どういう原理かはわからないが、あの家の中はこれが本来の姿。そしてあの空間が、偽物の姿。何物かによる転送か、それとも偶然のことなのか……
「……そっか。ごめんね、心配かけ……あた、いたたた……痛い! 痛いぃい!」
迷惑をかけてしまったことを謝罪しようとするが、それはオルちゃんにめちゃくちゃ締め付けられることで断念。
抱き着く力が強く、それだけ心配させてしまったんだとわかるが、それにしても痛い。背骨が軋む音がする。
体を締め付けられる感覚に襲われながらも、しかしそれは、私が生きてここにいることを確かに実感させてくれる。
「ホント、ごめんね。それに、ありがと」
あの時、永遠に続く暗闇の中で私の存在を引き戻してくれたのは、オルちゃん達が呼び掛けてくれたことに他ならない。
抜け出せないと言われた地獄からの脱却。あれはただのハッタリだったのか、それとも彼女達の想いがそれを勝ったのか……
わからないけど……いずれにせよ、私一人ではあのまま、自分という存在すらわからなくなっていただろう。思い出しただけでも、身震いがする。
結局……あそこに飛ばされたと思われる先生は、その後どうなったのか。あの地獄を体感した身としては、安否の不安がより深まった。
私が体験したことを、みんなに話すべきだろうか。……いや、今は止めとこう。
私自身まだ整理がついていないし、ここに来た元々の目的は、誰かいないかを確認することだ。発見もできていないのに、新たに不安材料を与えることはないだろう。
「それはそうと……みんな、よく私がここにいるってわかったね」
「それはレイのおかげだよ。集合場所にキミだけ戻ってこなくて心配していたところへ……精霊の輝きが、僕達を導いてくれたんだ」
みんなが私を見つけることができた理由。それは、倒れた私を心配したレイがみんなを呼びにいってくれたからだという。
……ここで疑問。レイは、私と一緒にあの空間に飛ばされたわけではなかった、のか? いくら呼び掛けても返答がなかった理由はそれで納得できるけど……
そのおかげで、みんなを呼んできたことを考えると結果オーライというやつか。理由はわからないけど。……それとも、あれは、夢?
……いや、あのリアルな感覚は、夢だとは思えない。即座に否定できる。あれは現実だ。
「オルちゃんオルちゃん、もう大丈夫だから」
未だに胸に顔を埋めたままのオルちゃんの背中を叩く。それに反応して顔を上げる彼女の目は、少しばかり赤くなっていた。
「も、もう起きなかったらどうしようかと……」
「大丈夫だよ、ちゃんとここにいるから」
余程、心配してくれてくれたのだろう。その気持ちを思うと、嬉しくなると同時に少し胸が痛くなるくらいでもある。
こうも心配してくれた嬉しさ、こうも心配させてしまった申し訳なさ。
「オル姉ちゃん、すごかったよね。わんわん泣いてた」
「確かに、あれは見ている方も必死さを増さざるを得ないというか……」
「ちょっ、お二人とも!?」
私が寝ている間に起こった、オルちゃんの恥ずかしい話が暴露される。顔を赤らめて慌てる姿は、何だか珍しい。




