地獄に咲く花
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……………………どれほどの時間、こうしていただろう。歩き回っている感覚だけが残り、辺りを見回す感覚だけが残り、その感覚を頼りにすることで何とか"私"は"私"の存在に縋り付く。疲れはないから、動き続けられる。
永遠に続く闇は一切の光もなく、時間の感覚を狂わせ、私の存在そのものを否定するようだ。五分しか経っていないかもしれないし、一時間経ったかもしれない。もっと少ないかもしれないし、もっと長いかもしれない。
"私"を"私"であり続けさせるために、唯一残った記憶という武器に頼る。そうすることで、消えてしまいそうなこの気持ちを、少なからず引き留めて置くことができる。しかしそれでも、その記憶すらぼんやりしていく。その度に、記憶の中にある名前を叫ぼうとするが声は出てくれない。
ここから出るために歩き回ったのに、疲れはない。そして無理にでも出ようと、力を使おうとしても、発動しない。翼も、出ない。傍らにいるはずの精霊の存在も、ない。"私"にできるあらゆる手段はことごとく通用せず、心に諦めの文字が走る。……そもそも、心なんて存在しているのだろうか。
何もない中ではっきりしているこの感覚も、いずれはなくなっていくのだろうか。こうして思考を止めないことでわずかでも希望に縋れるかと思っていたが……それももう、意味のないことなのかもしれない。このまま一人で、孤独に、"わたし"は……
『---』
……なんだろう。どこからか、おと……ううん、こえのようなものがきこえたきがする。……いや、きのせいだろう。こえどころか、ここはおとさえないせかい……げんちょうか、なにかで。
『-リ--ん!』
こんどはさっきよりはっきりきこえる。そしてそれは、きえかけていた"わたし"のこころにかたりかけているようで……
『リー--っか--い!』
『--ねえ-ん-!』
こえは、しだいにふえていく。ひっしなそのこえは、"わたし"を……
『リーさん! しっかりしてください! ……リーシャ・テルマニン!!』
……私を、呼び戻してくれるその声は……聞き覚えのある、ものだ。それはまるで私を導くように温かくて……闇に沈んだ心を、引っ張り出してくれるようだった。その声に導かれるように、私は……




