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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
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格の違い



 私の前に現れたのは、予想外すぎる人物。それどころか、ここに来てから予想外続きだ。



 ちょっと大きめの家に入ったかと思えば謎の空間が広がっていて、そこには死んだはずの……いや、実際に死んだアカリちゃんがいて。



 ……それにより麻痺してしまったのか、目の前に現れた存在に対してそこまで驚きはなかった。



 会ったら、ぶん殴ってやろうと思っていたその顔が、すぐ側にある。それなのに、驚きはないのに、体が動かない。ショックから立ち直れてない故なのか、それとも魔王のプレッシャーに当てられてなのかはわからない。



 ……振り向き、体ごと向き合うのがやっとだった。



「……ヒロト……」



「……? 誰だ、お前は」



 呟くように口から出た言葉は、彼の耳に届いたらしい。しかし、返ってきたのは私という存在を、記憶していないというものだった。



 ……やっぱり、人間の頃の記憶はなくなっている。



 あの時は怒りや悲しみで考える余裕がなかったが……今のやり取りで、はっきりした。ヒロトから、人間の頃の記憶が失われている。



 でなければあの時、アカリちゃんに対してあんなことをした説明がつかない。



 彼女を殺してしまったヒロトは狂ったように叫び、同時にどす黒い魔力の放出があった。異様ともいえるその力が収縮したその瞬間から、彼の中に感じる何かが変わった。



 そして、その腕の中で冷たくなっているアカリちゃんを……"コレ"扱いし、放り投げた。まるでゴミを捨てるように、無感情に、無造作に。



 その行為は、普段の彼ならばありえないことだ。アカリちゃんを手にかけた時には、まだ意識はあったのだろう。アカリちゃんを手にかけたことにより、彼の中の何かが狂ってしまった。



 それにあの時、キルデは言っていた。『最も愛する者を自らの手にかけること……それこそが、復活の最終段階』と。



 それは、ヒロトが最も愛する人、アカリちゃんを手にかけることで、彼の魔王としての力と記憶が復活する、という意味だったのだろう。



 そして見事それを果たし、ヒロトから人間としての記憶は消えた。学園でのことも、私達のことも、アカリちゃんのことも。皮肉なことに、そんな形で二人の両思いが証明されてしまった。



……わからないのは、そのアカリちゃんがなぜ、ここにいるのかということだ。



「何で……何で、アカリちゃんがここにいるの! あなたは……何を……!」



 今のヒロトにとっては、もはや何の因縁もない存在。しかも、その命は失われている。



 だというのに、こんなところで……まるで、保存してあるかのように。死後までその存在を辱しめるつもりか! その真意を、問いただす。感情的になっていると、理解した上で。



「……質問してるのはボクだ」



 だけど……自分の質問に答えてもらえなかったのが不服だったのか、低く響く声が届いた直後……まるで、思い切り重力が乗りかかってきたかのように、体が重くなる。



「ぐっ……ぁ……」



 これは……魔力、じゃない? これは……プレッシャー? ヒロトはそこから一歩も動いていない。なのに一瞬でも気を抜けば地に伏してしまうであろうほどに、体が重い。



 ヒロトから……魔王から放たれるプレッシャーが、とてつもなく大きい。私という小さな存在を押し潰してしまいそうなほど。



 これが、今のヒロトの力……!?



 息が詰まる。汗が流れる。体が震える。足が震える。目の前がぼやける。意識がはっきりしない。集中力が切れる。動けない。動けない。動けない動けない動けない動け……



「……っぷぁっ! ……っは……!」



 唐突に、プレッシャーが消える。詰まっていた息が通い、思い切り息を吸い、吐く。



 流れる汗を拭う余裕などないほどに、深呼吸を繰り返し体内に酸素を取り入れる。足が、生まれたての小鹿みたいに震えている。



「……もう一度聞く。ここで、何をしている? それと、お前は誰だ?」



 落ち着きを取り戻そうとしている私を気遣うでもなく、先程と同じ質問が放たれる。それはさっきと変わらない声色であるが……



 あのままプレッシャーを掛け続けられていたら、どうなっていたかわからない。この質問を答えさせるためにプレッシャーを解いたことを考えると、これが最後のチャンスと言っているようだった。



 それに……プレッシャーだけで、あの様なのだ。今の私では太刀打ちできないと、思い知らされたようにも感じる。



 ……この質問に答えなければ、私はあっという間に消されてしまうだろう。先程のように感情的にならないように、最後に大きく深呼吸をして……口を開く。



「……私は……ここにいる、アカリちゃんの親友。会いに来た……って言えたらカッコイイんだろうけど、何でここに来たのかはわからない。突然……まるで、さっきまでいた場所と扉越しに別の空間に飛ばされたみたいに」



 ……嘘は言ってない。ただ、自分で言っていても要領を得ない内容だとはいうのはわかる。



 さっきのプレッシャーで余裕がなくなっているのを隠すように、余裕があるように話してみたけど、うまくいっただろうか。



 それに……今の言葉を聞いて、ヒロトが何を思っているのか。無言で私を見る彼の瞳は何を思っているのか。……いや、私を見てるんじゃない。私の後ろにいる、アカリちゃんを見てるんだ。



「……ふぅん」



 その彼が何を言うのか身構えていたが……呟くように出てきたのは、たった一言。自分から聞いておいて、その答えにはまるで興味がないかのような、そんな一言。



 それと、確信出来たのは……私がここにいることと、ヒロトの意志は全くの無関係だということ。質問が出た時点でほとんどわかっていたことではあるけど。



「……私は質問に答えた。なら私の質問にも……答えて。何でアカリちゃんは、ここにいるの……ここは、何なの……!」



 正直、話し合いが通用する相手なのか、そういう場面なのか。それはわからないが……力で敵わない以上、こうして会話をすることで少しでも情報を引き出すしかない。



 ぶん殴ろうと思っていた相手に話し合いを持ちかけるなんて、我ながらおかしなことをしている。

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