狂人
暫し想像に身を浸らせた後、落ち着いたのかコホンと咳ばらい。
「だから今の状況は、非常に、すばらバラしい! ブラボー! これからもわたシは、基本的には介入するつもりはないヨ。……基本的には、ね」
「……基本、的に」
「そう! 人生とは未知の連続! ……あ、この場合わたシは悪魔だから魔生? そんなコとはどうでもでもいい! 未知こそわたシの生き甲斐! 未知が現レた時……傍観のままかは、また別の話。例えば!」
話しているうちに、またも昂ってきたのだろう。興奮に息を荒げ、手を広げ、大袈裟な動きで天を仰ぐ。
「あの、少年。彼とは接触できなカッたのだね?」
「……謝罪。申し訳ありません。先程、脅威に思えないと言った二人……女は、力の半分を少年の防壁として使っていました」
「剣男……度々、少年注意」
片や言葉が流暢になってきたし、片やまだ片言だ。二人の遅れた報告を聞き、ドッマは……
「ふむ……ふむふむふむ。アァ、なーる。そういうコとですかぁ……報告は順序よく完璧に。ここはモぅう少し、学習が必要だぁネ……」
先程脅威に思えないと報告を受けた。
しかしそれは、青髪水女は力の半分を使い少年の周りに防壁を張ってバリアよろしく守っており、剣男は少年に危害が加わらないよう常に注意を向けていたためだった。
それでは最初の報告の信憑性に欠ける。詰まるところ、人造人間と戦っている時、相手側は全力ではなかったのだ。ハーフエンジェルはともかくとして。
「マァ、そこは今はいい。モォんだいは、少年の未知の力! わたシの薬を見抜いたその力! まさに未知! まさに不思議! まさにまさにまさにまさにまさにさにサニさにさにサニぃいいい!」
背をのけ反らせ、高らかに叫ぶ変態……いや狂人と、それを冷静に見守る人造人間。彼女は、彼は、何も言わない。何とも、シュールな光景が広がっていた。
スカイ・バランティア。ドッマの作った、天使に化ける薬を見破ったあの少年は、実に興味深い。見たところ、ただの人間にも思えるが。
「彼の存在が! わたシの好奇心ヲ! 血液ヲ! 焦がすほどに熱くサセる! 傍観とは言ったが……わたシの興味を引くことがあれバ……その時は……そノ時!」
ひとしきり叫んだ後……再び落ち着いた狂人は、怪しく笑う。傍観……それは、基本的にはだ。
もしもまた、今回のようなことがあればその時は、容赦なく動く。今回も、実はあの少年が一番の目的だったのだ。
残念ながら一番の目的は達せなかったが、まあデータは取れたのでよしとしよう。
「やはり……好奇心とは最高の薬ダネぇ!」
好奇心という薬を体に巡らせ……狂人の笑い声は、響いていく。




