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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
152/314

ドッさん



「逃がしませんわよ! せいや!」



 竜を逃がすまいと、一足先に動き出すオルちゃん。割られてしまった氷を水に変化させ、そこから太めの触手を伸ばしていく。



 竜を捕まえるための、拘束具といったところだろうか。



「無駄」



 飛び立つ竜を、触手が捕らえるが、竜は先ほど私にしたようにその身に電流を帯びる。水と電気の相性プラス竜の凄まじい力で、水の拘束具を強引に引きちぎっていく。



「この……!」



 巨体は飛び立ち、みるみる上昇していく。その姿を見上げながら、背中から翼を広げ、同じく私も飛び立つ。飛ぶことのできる私が、何とかしなければ!



「リーさん!」



「無理だ! 一人では!」



 竜単体にさえ、精霊であらレイの力を借りなければ太刀打ちできなかった。それに加え、竜の背に乗るのはオルちゃんとエドさんを相手に互角に渡り合う二人だ。



 私一人じゃ勝てる可能性は低いけど、それでも!



「え……」



 力を込め、上昇。竜に追いつくために速度を上げるが、見上げるその先には私を見ながらこちらに手を向ける、人造人間(アンドロイド)の男の子の姿。切断された右腕ではない、左腕を向けている。



 一体何をと、考える間もない。閃光が走ったかのような輝きに目を閉じてしまうと、次の瞬間右肩に熱い衝撃が走り、そこから痛みが広がっていく。



「ぐっ、あぁああ!」



 確認すると、右肩に穴が空いているではないか。そこからは赤い血が流れ、何が起きたのか冷静に判断できなくなる。熱いから痛いのか、痛いから熱いのか……その判断すら、ままならない。



「危ない!」



 再び、光が瞬く。今度は直接見ていなかったため目をやられることはなかったが、光の直後に痛みが来たことを考えると回避行動が間に合わない。



 そう思っていた時、目の前に水の壁が生まれる。瞬間、私の身を守る壁となってくれたそれは役割を果たしてくれる。水の壁、それに衝突したのは……



「れ、レーザー……?」



 速すぎて確実に確認できたわけではないが、水の壁に衝突したのは、いわゆるレーザーだった。男の子の手の平から放たれた、光り輝くレーザー光線。あんなものまで、出せるのか。



 人造人間(アンドロイド)の体に、レーザー光線。そんな技術を作り出す『ドッマ』という謎の相手に思わず悪寒が走るが、それも放たれ続けるレーザーに思考を中断される。まるで、レーザーの雨だ。



 水の壁のおかげで私にレーザーが届くことはないけど、その代わりに身動きも取れない。それに、水の壁の耐久力も長くは持たない。



 そうしているうちに、竜は上昇して距離はどんどん離れていき……



「くっ……待てぇ!」



 痛む肩を押さえ、降り注ぐレーザーの雨にその場から動けない私は、ただ叫ぶしかできない。だけどそんなものは何の意味もなく、竜が止まってくれるはずもなく。



 その姿が見えなくなる最後……竜の背に乗る、人造人間(アンドロイド)の女の子と目が合う。その目はどこまでも無感情で、ただ目的を果たしたという達成感すら感じられなかった。



 今まで見てきた、人間を蔑む悪魔の目とも違う、本当に何の興味もないんだという目が、私を見下ろしていた。



「……」



 やがて竜の姿が見えなくなり、追いかけることもできなくなったため、地に下りる。その際、肩から流れる血が地面を赤黒く染めているのに、今気づいた。



「リーさん! 血が!」



「大丈夫だよ、これくらい」



 肩を貫通したレーザーの跡。それは痛々しく映るも、治せないほどの致命傷ではない。



 天力を集中させ、肩の傷の回復を行う。とはいえ、竜に振るった力で結構力を使っていたらしく、すぐに治せるほどではない。時間が、かかる。



「あ……レイ」



 すると、肩へと寄り添うように水色の光が輝き、温かな光が肩を包み込む。血が止まり、穴が塞がっていく。痛々しかった肩の傷は、ものの数秒で治ったのだ。



 精霊であるレイは、またも私を助けてくれた。私、この子に何かしたっけな? ホント、いい子だよ。



 傷も塞がり、オルちゃんとエドさんの回復も行った後、一息つく。辺りは、竜や人間離れした人造人間(アンドロイド)が暴れたことによりとんでもないことになっている。



 地面は割れ、草木は枯れ、クレーターが生まれ地形が変わってしまっている。



「何か、すごいことになっちゃったね」



 データ収集を目的に現れた刺客。その強さは相当なものではなく、そこいらの悪魔なんか比ではない。悪魔四神までとはいかなくても。



 しかし人造人間(アンドロイド)、データ収集という二つの要素から、もしもデータを書き換え更に強くなることがあれば……脅威度では悪魔四神よりも上かもしれない。



 それに、そんな存在を作り出す人物の危険度も計り知れない。たった二人と一匹で、この有り様だ。もしも複数体作ることができたらと思うと、考えただけでも恐ろしい。



「同じ場所に留まるのは危険だし、考え事は移動しながらにしよう」



 と、その場を後に。あんな激しい戦闘をしたのだ、騒ぎを聞き付けて悪魔がやって来てもややこしいことになる。



「それにしても、やっぱりリーさんもケンさんもさすがですわ! それに精霊さん、素晴らしいですわね!」



「うん、私も驚いたよ。まさかあんなに力を出せるなんて」



「なあ、ケンさんってどうにかならないか?」



 レイの力は、やっぱりオルちゃんも賞賛するほどに凄まじいものだ。



 これからも、レイの力を借りることができればこの先の戦いで俄然有利になることは間違いない。もちろん、頼り切りもいけないとは思うけど。



 一方、あだ名に納得のいかないエドさん。まあ、あだ名というより名前だし、当然といえば当然かもしれないけども。



「どうにかって……どうしろと?」



「いや、普通のあだ名が欲しい」



「うーん……」



 ケンさん以外のあだ名を求めるエドさんに、腕を組みオルちゃんは頭を捻らせている。腕の上に胸が乗っているというのは、私にとっては夢のまた夢の光景だ。自負してしまうのが、悲しいけど。



「あっ、閃きましたわ! じゃあドッさん、でどうでしょう?」



「……その心は?」



「エドさん→エドッさん→ドッさん」



「そこでエドッさんになった過程が今一わからないが……ケンさんでなければ、いいか」



 やっぱり独特なオルちゃんのあだ名。ケンさんでないだけまだマシなのかもしれないが、エドさんの顔はどこか不満げだ。だが、もう諦めたかのように肩を落としている。



 命名、ドッさん。

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