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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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空腹の中の嵐



「うぅ、すみません……」



 少し早めの昼食にすることを決め、場所を探していった結果……現在近くのファミレスに入り、四人掛けの席に座っている。



 ちなみに、座っている順は俺、エルシャ。その正面にアカリ、リーシャという配置になっている。



 そんで今は、お腹が鳴っていることを改めて反省しているリーシャを慰めているところだ。



「いいよ。どうせ食べなきゃいけないんだから、荷物もない今のうちに食べてた方がいいし」



「はいぃ……」



 しかし人の前でお腹が鳴ってしまったことが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてうつむいたままだ。



 俺としても、お腹が鳴って恥ずかしがる女の子をフォローするなんて経験したことがないため、どうしたらいいか戸惑っている。しかも初対面の相手だ。



 ちなみに店に入ってからも度々お腹が鳴っている。



「私、お腹が空くと我慢できなくて……学校でも授業中でも鳴るから、もう恥ずかしくて」



「だから人と……特に男の子と話すのが苦手になっちゃったのよ。特にそういうの敏感な子だから」



 恥ずかしそうに自身の身の上を話すリーシャと、それに付け加えるエルシャ。



 授業中もか……そういえば、以前何かの授業で他クラスとの合同授業があって、誰かお腹が鳴ってるなと思ったことがあったが、この子だったのか。



「にしてもその音何とかならない? 周りからめっちゃ見られてるんだけど」



「す、すみません……」



 とはエルシャの厳しい言葉だ。エルシャの言い分ももっともだが、本人も悪気があるわけじゃないしなあ。



「こんな体質だからいつもお腹一杯にするよう心がけてるのに、今日は朝ごはん食べ損ねちゃって……」



「まあ寝坊なんだけどね」



 恥ずかしそうに赤くなる。こんな体質なら、昼食はどうしてるんだろう。二人の様子だとリーシャが一番仲がいいのはアカリだ。



 でもアカリは昼食いつも俺と一緒に食べてるし……腹の音が恥ずかしいから俺と一緒にって話にもならなかったんだろう。



 アカリの幼なじみでこうなのだから、他の人だと…………ダメだ、考えるのはやめよう。



 ……そういえば腹ペコ……みたいな二つ名を聞いたことがある気がする。何だっけか……うーん、確か……



「……“空腹の魔女”」



「はわわわ! 言わないでください!」



 ふと、思い出した程度にボソッと言ったが、聞こえてしまったらしい。そしてそれが正解であることも、同時に判明した。そういやそんな話題で一時期盛り上がってたな。



「あれリーシャだったんだ」



「うぅ……私だけ何か違うじゃないですか! みんなカッコいいのに空腹のって、常時お腹空いてるみたいじゃないですか! しかも魔女って何ですか、魔女って!」



「さ、さあ……」



 神力学園では、誰が付けたのか知らないが有名人にはしばしば二つ名が付けられる。俺の"落第の弾丸"然り、アカリの"閃光の輝き"然り。



 ……そう、有名人につけられるのだ。そこにどのベクトルで有名であるかは関係ない。



 余程その二つ名が気に入らないのか、顔を赤くしながら抗議するリーシャ。オルテリアの"爆炎の魔女"もだが、ほんっと関係ねえよな。



 とはいえそれをここで俺達に言われてもどうしようもないし……正直、常時お腹空いてるみたいってのは否定できない。むしろその通りだ。



「でも常時お腹空いてるのは正解じゃない? 今もぐーぐー鳴ってるわよ」



「うぅ~……」



 だけど言葉には出さない……とせっかく胸に秘めていたのに、身も蓋もないエルシャ。おいおいエルシャ、そんなにいじめてやるなよ……



 そこへ、彼女が一番待ち望んでいたであろう料理が来た。ちなみに彼女が頼んだのはパスタ特盛だ。平たく大きな皿に、これでもかというほどに麵が乗っている。



 一番に来たのが特盛なのは、なかなかに不思議だ。



「ふわぁ、美味しそう……」



「何なら、お先にどうぞ」



 まだみんな揃ってないが、さすがに腹に物を入れてやらないと哀れだ。あんな期待のこもった目を見て、それでおあずけをさせる気にはなれない。



 それを聞いて一人先に食べてしまうことを渋っていたようだったが、ほどなくして空腹に勝てなかったのか輝かしい顔で美味しそうに食べていく。



 うまそうに食うなあ。見てるだけでお腹いっぱいになりそうだ。



 そしてみんなの料理が揃った頃には、彼女は二杯目をおかわりしていた。無論特盛で。



「はぁあ、お腹一杯」



 結局あの後、俺達が食べ終わる間にリーシャはもう一杯注文し、計三杯特盛のパスタを食べていた。お、恐ろしい。あとそんなに食べて、栄養がどこに行っているのか。



「そんなに食べて、栄養はどこ行ってんのよ……」



 またも思っていたことを代弁してくれたエルシャ。リーシャの身長は、俺達の中で一番小さい。



 それに反して胸が大きい、ということもないので、食べた物がどこに行っているのか本当に謎だ。



「こんな調子だから、いつも食費がギリギリなのよ……」



 俺にしか聞こえないように、苦笑いを浮かべたアカリが言う。確かにこんなに食うなら、食費も相当かかるだろう。



 だがアカリは困ったように笑っていても決して嫌そうではなく、少し嬉しそうだ。多分、それだけリーシャと一緒にいるのが楽しからなのだろう。



「さて、じゃ行きますか」



 それからは服屋を回ったり、雑貨屋、本屋と様々と回った。特にアカリは、エルシャの服選びに気合いが入っていたようだ。



 何せエルシャは地上に落ちてきたときに着ていた服しか持っていなかったのだ。



 ひとまず、服屋を見て回り、買うのは最後にすることに。アカリやリーシャのも含めかなりの買い物になるだろうことから最後に回したのだ。



 まずどこが安いのか、いいのがあるか、サーチしている。



 服は別としても、小物類などは買い最中だ。ま、当然、荷物持ちは俺なわけだが……



「下界も捨てたもんじゃないわね。なかなか面白いじゃない!」



「え、下界?」



「え、な、何でもない!」



 時折うっかり口を滑らすこともあったが、何とか誤魔化しながら会話を楽しんでいた。エルシャの奴、自滅していないか? 俺は全然構わないが、バレたらいろいろ面倒だろうに。



 いろいろ見回り、今は一休みするために喫茶店に入っている。どうやらリーシャのオススメらしく、コーヒーが美味しいらしい。一人でよく来るんだとか。



 それに今座っている席は、周りから少し離れているので周りの視線を気にしなくていいし、内緒の話をするときにはうってつけなんだとか。



 内緒の話というと語弊があるが、要はリラックスできる席なのだ。



「ん、確かに美味いな」



「でしょ! コーヒーを飲みながら一人で過ごしたり、友達と雑談したり……とにかく落ち着く場所なんです」



 リーシャも、最初に比べればずいぶん打ち解けたように思う。人と話すのが苦手と言うが、慣れてしまえば何てことないんではないだろうか。



 それに、アカリ以外にもちゃんと友達はいたようだ。昼食とかいろいろな心配を勝手にしていたのだが、とにかくよかった。



「あ、私ちょっとお手洗いに」



「じゃ、俺も」



 しばらくの間談笑している中で、俺とアカリがトイレに立つ。なので、その場に残されたのは必然的にエルシャとリーシャの二人になる。



 二人だけにして大丈夫だろうか……とも思ったが今日の様子を見る限り、大丈夫だろう。



 エルシャはいつものように平常運転で、いじられ体質と狙いを定めたリーシャをからかっていく。



 ほのぼの……とは違うが、二人の間にもそれなりの距離感ができてきたのではないだろうか。だから、心配はいらない。



 ……そう、思っていた。



「ふいーっと」



 事を済ませ、アカリより一足先に戻ることにする。さて、目を離したのは少しばかりだが、少しでも場の空気が柔らかくなっているといいな。そう思いながら二人の待つ席へ戻る。



 席に近づくにつれ、二人の楽しそうな声が……とは、ならなかった。異様に静かなのだ。



 不審に感じながらも、足を進めて二人の姿を視界に捉える。するとそこでは……何と、あのエルシャが青ざめた顔でうつむいていた。



「ど、どうした?」



 それは、これまでに見たことのない表情。これまでに、いうほど付き合いは長くないが、少なくともエルシャが浮かべるには似合わない表情だ。



 俺が声をかけると、一瞬肩を震わせたが……何でもないと首を振る。どう見ても、何でもなくは見えない。



 そしてリーシャは……そんなエルシャを心配そうに見つめていたが、さっき一瞬……恐ろしいほど無表情に見えた。まるで、俺が現れたから慌てて表情を作ったかのような……



 この数分とない短時間の間に、二人の間にいったい何があったんだ?



「お待たせー」



 何かが起こった二人の間に気まずいくうき空気が流れ、俺はとてつもなく居づらい。が、それからしばらくしてアカリが戻ってきて、店を後にした。



 あのままあの場にいるのは、空気がもたなかっただろうしな。



 結局何があったのかはわからずじまいで、店を出てからもエルシャの発言はわかりやすく減っていた。さっきまでうるさいくらいに突っ掛かってきたのが嘘のようだ。



「ねえ、何かあったの?」



「さあ…」



 それにはアカリも不審に思ったらしく、顔をしかめている。俺に聞いたのは、多分二人の空気から話しかけづらく感じたからだろう。



 俺だって、今の二人には何だか話しかけづらい。ピリピリ、ともしみじみ、とも違う、独特的な話しかけづらい空気。



 その正体がわからないままに、二人の様子を観察する。いつもと違わない態度を心掛けようとしているようだが、やはりどこか違和感がある。



 二人の様子には……いや、二人の様子が……というよりは、違和感がわかりやすく現れているのはエルシャだ。



 エルシャが、一方的にリーシャを避けているような……そんな、態度なのだ。それは嫌いだから避けている、なんてものではなく……



 まるで、エルシャがリーシャを恐れているかのような……そんな、態度だった。

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