マッドサイエンティスト
ここはどこかにある、何らかの部屋。中にはあらゆる機材、実験器具、水晶等が置かれており、薄暗い部屋を照らすのは光は心許ない。ぼんやりと、部屋の一角を照らすことしかできない。
光を放つのは、複数ある水晶。その中には色々な映像が映っており、端的に表すならばそれはテレビのようだ。そこに映るのは……
「あらあらアラ、やれヤレやれ……死んでしまったようダネ」
己が発明した、『天使に化ける薬』を服用した悪魔……サラリアと言ったか。彼女の成れの果ての姿が、そこにはあった。
苦しそうなその表情は、映像越しに見てもリアリティがある。それはまるで、苦しさとは別に何かに恨みを向けているかのようでもある。その恨みの対象が、自分にあることを知りながら。
「敵に捕まり、情報漏洩を防ぐために仕込んだ自害システムが作動したということカ。ふむフム。おぉっと、そんな目で見てもダメだ! こちらの情報をペラペラ話されては敵わないから……ナ!」
しかしマッドサイエンティストは、ケラケラと笑い恨みの感情を茶化す。自害システム……それを、彼女に仕込んだ。もしも彼女が捕まった場合、敵に情報を流さないための処置だ。
こちらには何の非もないだろう。
「バランダもサラリアもわたシのことを嫌っていたようだが、わたシの仕込んだ自害システムには気づかなかったようだネェ」
仕込んだのは自害システム。たとえ彼女が、どれほど口の固い、頑固の塊のような性格だとわかっていても。たとえ自害システムのことを、彼女に意図的に伝えていなかったとしても。
こちらには何の非もないのだ。
「シカシ、人の身でありながら悪魔を翻弄するとは……情報通り中々に興味深い逸材!」
絶命した悪魔のことは忘れ、次へ。そこに映ったのは、悪魔を倒した青髪の少女。集めた情報に違わぬ強さ、強さ、そして気高さ。
「しかしかし……気になるノハ、のはのは……この少年!」
独特的な喋り方で、次の標的を映す。そこには、己が発明した薬で、天使に化けた悪魔……その正体を見破った少年がいた。精霊をも欺いた我が傑作を、ただの人間の子供が見破るとは。
「面白い……実に面白イ! わたシの発明を見破った少年! 人の身にして悪魔と渡り合う少女! 名刀三王剣の一つ『星剣』を有する人間の青年! そして、してシテ……天使と人間の、ハーフぅ!」
四つの水晶に、それぞれ四人の人物が映る。いずれ悪魔の脅威と成りうる、存在を。
愛しそうに、水晶を撫でる。その瞳に、底知れぬ狂気を宿して。
「さあ……もっとだ、もっと見せてくレ。この、悪魔四神ドッマの退屈を吹き飛ばすような何かヲ!」
バランダとサラリアに『天使に化ける薬』を渡し、リーシャ達への情報をも流した悪魔。自身への嫌悪を隠しもしなかったが、まさか自害システムを仕込んだなんて思わないだろう。
無から有を作り出す能力を持つ、悪魔四神メルガディス。
有を無に帰す能力を持つ、悪魔四神メルギィス。
時間が経てば経つほど戦闘能力を増す能力を持つ、悪魔四神ゴディルズ。
残る一体、悪魔四神であるドッマの魔の手が、確かにリーシャ達に伸びていた。




