表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
139/314

天使か悪魔か



 唐突に放たれた、衝撃の一言は……その場にいた全員の言葉を失わせ、緊張を与えた。



『お姉さんさ……悪魔、でしょ?』



 その言葉の意味をかみ砕くのに、理解するのに、時間を要したのはそれがあまりに信じがたいものだったから。……いや、いくら考えても、それは理解の及ばないもので。



 その言葉を発したのはスカイくん。まるで、学校で先生にわからないところを聞くように、何でもない風に……何の悪意もなく、ただそれは紡がれた。



「……え?」



 みんなが固まる中、その言葉を真正面から受けたサラリアさんは……笑顔を浮かべたまま固まっている。何を言われたかわからない、といった風に首を傾げている。



「だから、お姉さん悪魔なんでしょ?」



 聞こえてなかったのか……と言わんばかりに、次いで二度目を告げるスカイくん。同じ言葉の繰り返しは、それが誰の耳にも聞き間違いでなかったことを確認しているかのようにみんなにも伝わる。



「何を、言って……」



「スカイくん……どうして、そう思うの?」



 冷や汗が流れるのを感じる。だってありえない。彼女は間違いなく天使だ。それは私よりも、彼女とこの場で長い時を過ごしたカーリャさん達他のみんなが知っているはずだ。



 彼女が悪魔だとして、ここに受け入れておく理由がない。そもそも、彼女からは魔の気配を感じない。純粋なる天使の気だけで。なのに……それが、悪魔だなんて。悪い冗談にもほどがある。



 仮に、仮にだ。スカイくんの言うように彼女が悪魔だとして、どうしてそれがスカイくんにわかる? 他の誰にも、一緒に過ごしてきたみんなもわからないのに天使であるカーリャさん達でさえ。なのに、今日会ったばかりの、こんな子供がなぜ。



「んー、わかんないけどわかるの」



 とぼけているわけでも、ましてや嘘を言っているわけでもない。スカイくんは本気で、彼女が悪魔だと言っている。むしろ、どうしてみんなわかってないのか……そう言いたげな純粋な感情を、瞳に宿している。



「あく……ま……?」



 目の前の、この女性が? 紛れもなく天の力を感じさせている彼女が? いや……魔の力を持つ悪魔が、よりによって真逆の力を持つ天使に化けることなど、不可能だ。それも、魔の邪な気配を一切感じさせないで。



「な、何を言ってるのかな? 冗談にしては、タチが悪いよ」



 悪魔の疑惑をかけられた本人は、苦笑いを浮かべて否定している。その額に冷や汗が流れているのは、すっとんきょうなことを言われたことに対してなのか、それとも……



「冗談じゃないもん!」



「だからって、確かめる術なんて……」



 傍から見れば、駄々をこねている子供をあやしている……光景は、ほほえましいものだ。……会話の内容が、それをぶち壊しにしているが。



 これがただの子供の戯言なら、いい。いや、よくはないんだけど。



 ……ふと、視界の端に映ったカーリャさんが、何かを呟いたのが見えた。それは、背を向けているサラリアさんからは見えないものだ。何と言ったか聞こえないが、直後傍らから赤い光が飛びだしたのを確認。その光は精霊であるセイのもので、カーリャさんがセイに何かを指示したのだとわかった。



 飛び出したセイは、ゆっくりとサラリアさんに近づいていき……一定の距離に入ったところで、まるで何かに弾かれたように後ろに飛び退く。



「……! 全員、警戒体勢!」



 カーリャさんの声が響くと同時に、辺りには先程とは違う緊張感が張り巡らされる。それは、この場の誰もがすぐに行動を取れるように構えていた。外から来た、私達を除いて。


「か、カーリャさん?」



「……セイが弾かれた。邪な気を持たない者に対してなら、こうはならない」



 カーリャさんの傍に戻るセイ。どうやら、精霊である彼もしくは彼女(そもそも性別はあるのだろうか)が、サラリアさんの一定の距離に近づいた時に弾かれたため、それが警戒の判断に至ったらしい。



 同じ天使や悪意のない人間相手ならば、こうはならないと。



「サラリア……あんたは一体……!」



「……あーあー……せっかくバカな天使や精霊を騙してうまく溶け込んだと思ったのに。お前のせいで台無しだよ……くそガキ!」



 サラリアさんの正体を問いただす前に、髪をかきあげる彼女は怪しく笑う。その瞳には狂気が宿っており、直接睨まれたわけでもないのに背筋に悪寒が走る。



 そして……次の瞬間には動いていた。近くにいた、この結果を招いたスカイくんへと、突き刺すように手が伸びていた。その手の先に、闇の魔力を纏って。



「スカイくん!」



 そのとっさの出来事に、体が動かない。その一瞬の差が、命取り。サラリアさんの手刀は、スカイくんの胸部へと向かう。このまま、魔の手がスカイくんの胸を貫いて……



「うらぁ!」



「ぶっ!」



 最悪の事態が想定される……と思いきや、その未来は怒らなかった。それは、サラリアさんの顔面に減り込んだ拳により崩れ去る。まともに拳を受けた彼女の体は、まるで紙のように軽々と飛んでいった。



 その拳を打ち込んだのは……



「み、ミシェルさん!?」



「スカイちゃんに乱暴働こうなんて、許されないことよ!」



 坊主頭が眩しい、筋肉ダルマことミシェルさんだった。どうやってかこの場の誰よりも早く、スカイくんを魔手から守っていた。さっきまで、スカイくんに素通りされて落ち込んでたのに。



「スカイちゃんには指一本触れされないわよぉ! うんぬらぁあああああ!!」



 お気に入りのスカイくんを傷つけられそうになったからか、異様なくらいに怒っている。怒りで、服が破けそうなほどに。その迫力は、先程感じた悪寒とは別の意味で寒気が走るもだった。



 ……え、この人何で悪魔に捕まってたの?



「あー……びっくりしたぁ」



 建物を巻き込み、木材の残骸が土煙を起こす中……ゆっくりと声が届く。さっき豹変した、サラリアさんのものに違いない。そこには、翼を広げたシルエットがあって。



「ったく……くはは……」



 煙が晴れ、姿がはっきりと見えてくる。その翼は、純黒に染まっていた。天使である名残は、どこにもない。真っ赤に染まった瞳は血でも塗りたくったかのようで、さらには異様に爪が伸びている。あれに引き裂かれれば痛いじゃ済まない。



 天使であるサラリアさんはもうそこにはおらず、その姿はどう見ても、悪魔であると断言するに相応しかった。



「本当に……」



「サラリア……!」



 あちこちから漏れる、動揺の声。今まで仲間だと思っていた人が、敵側だった……その心情は、計り知れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ