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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
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精霊



 紆余曲折ありながらも、私達はみんなの所へ戻ることに。



「それにしても驚きですわね。こう、色々と」



 道中、オルちゃんを中心に会話が盛り上がる。カーリャさんとの再会や、ミシェルさんの件。色々ありすぎてお腹いっぱいだ。



 お互いのことを話し合いながら、しばらく歩き戻る。そこでは、ここにいた天使達と人達、連れてきた人達とが仲良さげに団らんしている姿があった。



「おぉ、みんなすっかり打ち解けてる」



 これからここで匿ってもらうのだ。早めに打ち解けるに越したことはない。そこへ……



「あ、リー姉ちゃん!」



 人の波から一人、こちらに駆け寄ってくる姿があった。スカイくんだ。駆け寄ってくる姿の、何とかわいらしいものか。



「あらん、スカイちゃん。元気じゃない」



「ひっ」



 直後、固まる。表情が強張り、じりじりと距離を取っている。この子もう、ミシェルさんに対して警戒を隠してないな。仕方ない部分もあるのかもしれないけど。



「そうだ、リーシャ。これからまだ旅は続けるんだろ? 食料やなんか、いろいろ持っていけ」



 スカイくんとミシェルさんのやり取りを尻目に、そう提案するのはカーリャさんだ。それは、願ってもない提案だけど。



「その……いいの?」



 それは果たして、カーリャさんの本意なのだろうか。親として子供に危ないことをしてほしくない……そう、言っていた。たとえ、世界のためであったとしても。



「……現状、私達は大っぴらに動けない。さっきはあんなこと言っといて勝手な話だけど、情けない話、あんた達に任せるしかないんだ」



 頭をかきむしるように乱暴に髪をなぜるカーリャさんは、申し訳なさと後悔を表情に宿している。



 大っぴらに動けない、というのは、何も天使の存在を未だ隠そう、なんて思ってのことではないだろう。



「今ある戦力を集結させ、悪魔を一網打尽……なんてスパーンといけばいいんだけどね。そうもいかない。元々天使ってのは戦闘には向いてないんだ。その上生き残りは僅かで、むこうは魔王率いる総本山。私達の存在を知られるのは仕方ないにしても、この場所を知られて攻め入られたら……間違いなく全滅する」



 悪魔にこの場所が見つかり、攻め込まれた場合。生き残った人々を保護しているこの場所に攻め込まれると、必然的にここが戦場になる。そうなると当然、巻き込まれる人は出てくるわけで。



 おまけに向こうが総力で攻めてくれば、瞬く間にここは陥落してしまうだろう。



「今ここを手薄にするわけにもいかない。もちろん慎重になりすぎて動けない、なんてことがないようにはしてるが、それでも……出来ることが少ないのが、歯がゆいんだ。……だからその……正直、、あんたらの頑張りには助かってるというか」



 後半になるにつれ、声が小さくなっていくのがわかる。けど、その意味は分かる。カーリャさんは、照れてるんだな。



「けど! だからってあんま危ないことはしないこと! あと……はい!」



 少しだけ赤くなった顔を誤魔化すように、口早に言って、手をグーにして私に差し出す。その意図がわからず、私は首を傾げる。



 これはあれかな、拳同士を突き合わせて親睦を深め合う、みたいな。昔、アカリちゃんに借りた漫画の中にあったやつだ。



 私も手を差し出そうをしたところで、カーリャさんのの拳が開かれる。その手のひらに、水色に光る小さな光の玉がゆらゆらと表れる。



「これ、は……?」



「いわゆる『精霊』ってやつよ」



 小さくも、己の存在を主張するように神々しい光を放つそれを、カーリャさんは『精霊』と呼ぶ。



「元々は、天界のとある地区に住んでいたんだけど、あんなことになって住む場所を無くしてね。私達と共に、悪魔達に一矢報いるチャンスを狙っているのさ」



「精霊……これが」



 精霊、と単語だけは聞いたことがあるけど、実際に見るのは初めてだ。生き物とかじゃなくて、光の玉なんだ。それとも、生き物もいるけどこれはその一部とか?



「……小さい、ですね」



「小さいからって甘く見るなよ? レイ……あ、この子の名前なんだけどな。レイは双子精霊の片割れで、こっちにいる片割れのセイと共鳴して、通信や、人や物を転送することが出来る」



 この子の名前はレイ。そしてカーリャさんのもう片方の手のひらに表れる光は双子の片割れであり、もう片方はセイ。レイとセイ……あぁ成程、セイレイ。



 そして双子同士共鳴することで、お互いの間で転送を可能にする。つまりそれは……



「旅の途中、生き残った人達を見つけたら、レイからセイにコンタクトを取って、この場所に転送する……ってのが、頼みたいこれからの流れ」



 レイがいれば、セイとコンタクトを取って生き残った人達をこの場所へと転送できる、と。



 へぇえ、それは便利だ。これならいちいち、この場所に戻って来なくて済むというわけか。すごいや。



「転送だけでなく、戦闘でも役立つと思うぞ? 単体でも下級悪魔を浄化することくらいなら余裕だし、契約すればその精霊は力を貸してくれる」



「契約?」



 精霊という存在は、戦いでも役に立つ。そう告げるカーリャさんの口から紡がれたのは、『契約』という言葉で。



「そ。契約すれば精霊の力を借りることが出来る。って簡単には言うけど、精霊に認められないと無理だし、契約出来るのも天使か、邪な心を持たない人間しか無理」



「精霊の力を、借りる」



「精霊ってのは、万物の根源をなしていると言われているからね。その精霊に認められるのは並大抵のことじゃない。中でもセイとレイは上位の存在だから、それこそ一筋縄じゃいかないよ。私の知ってる中でも、精霊と契約出来たのは二大天使と一部の上級天使。それに神様……とは言っても、神の力を奪われたエルシャ様は契約を強制解除されたんだけど」



 精霊と契約……か。口では簡単に言っても、難しいことなんだな。二大天使……つまりお母さんは契約してたのか。それに、エルシャも… …



「だから基本、精霊とは仮契約止まりって場合が多いかな」



「仮契約?」



「あぁ。本来の契約とは違い、力もほんーの少ししか貸してくれないし、何より気まぐれ。契約してない奴の言うことなんか毎回聞いてられるかー、って感じなんだろうね」



 契約と仮契約。それが精霊と繋がる術、か。



「契約と仮契約の差は大きく二つ。貸してくれる力の大きさと、信頼度。ちなみに今リーシャはレイと仮契約してる状態ね」



「え、そうなんですか!?」



 驚きの事実なんだけど! 私、いつの間に精霊と仮契約を!?



「さっき話した転送云々も、言ってしまえば精霊の力を借りてるわけだからね。まあレイの場合は、双子のセイがいるから転送に関しては力を貸してくれると思うよ」



 成程、言われてみればそうだ。それにしても、仮とはいえてっきり儀式のようなものがあるのかと……



「ちなみに、仮契約者があんまりだと精霊の方から出てっちゃうから気を付けて」



「ちょっ!?」



 精霊が出ていっちゃう、か。それって、精霊の方から愛想をつかされちゃダメ……ってことだよね?



「契約状態だと、そんなこともないんだけどね。ま、契約に至るには仮契約状態からお互いの信頼度がマックスにならないとダメだから、当然なんだけどね」



 契約に至るほどの信頼があれば、愛想を尽かされることもない、ってことか。なら私も、精霊……レイに愛想をつかされないように、頑張らないと。まずは、仮契約状態だけど。



 水色に淡く輝くレイに対して、双子精霊であるセイは赤色に淡く光っている。



「それにしても、セイとレイって名前…」



「や、別に私が名付けたわけじゃないからな? 勘違いするなよ?」



 カーリャさん自体も名前について思うところあったのか、即座に、違う違うと否定する。どうやら名付け親、というわけではないらしい。



 セイとレイ、合わせてセイレイと、安易ではあるが精霊を彷彿とさせる名前ということは、精霊の中でもやはり位の高い存在なのだろうか。精霊に位があるのかとか、位がどうこうとかはよくわからないけど。



「では……ありがたく、連れていかせてもらいます」



「あぁ。そうそう、そのレイね。あなたのお母様と実際に契約してた精霊なのよ」



 ……この子が、お母さんと契約してた、実際の精霊。それを聞かされ、何だか胸の奥が温かくなっていく。



 強力な存在を手に、これからの旅に連れていくことを決める。同時に、契約……とまではいかなくても、これからそれなりにレイからの信頼も勝ち得ていかないとな。

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