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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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力を失った神様の過去



「教えてあげるよ、神様である私がどうして力を失い、今人間界でこんな状態になっているのか……一人くらい事情を知ってる人間がいてもいいしね」



 ベッドに座り、俺に視線を向けながら話すエルシャ。先ほどまでのおちゃらけた雰囲気はもうない。真剣な声色だ。俺も聞く体勢に入るため、正面にある椅子へと腰を下ろす。



 自然と空気が張り詰めていくように感じ、喉の渇きを覚える。渇いた唇を舐め、軽く深呼吸。そんな中、エルシャは話し始めた。



「昔々……天界、神様や天使が住まう地に、驚くほどにそれはそれは美しい神様が住んでいました」



「え、何その語り口調……」



「お黙り!」



 シリアスな話になるかと思いきや、その口調は何とも軽いものだった。



 もしくは、あえてそうしているのかもしれないが。美しい神様、ってのは自分のことなんだろうなぁ、多分。いや絶対そうだ。



 というか怒られてしまった。口を挟んだ俺が悪い……のか?まあ話し方が気になっただけであって、本人が話しやすいならいいけどさ。中断されてしまった話が、再開する。



「正確にはまだ神様ではなかったけど……幼くして母親を失ったことで、神様の力を受け継ぎました」



 そう言って、昔のことを思い出しているのか天を仰ぐ。映るのは空ではなく残念ながらな天井だが。



 ……今の話を要約するに、神様だった母親が死んだことで、その神様の力が子供であるエルシャに移ったってことか。



「母親を失い、幼くして神様としての役割を背負ってしまった彼女。一人前の神様になるために勉強やら何やらしていました。そんなある日、事件は起こりました」



 まるで、昔話をするかのような話し方。だが後半、事件、と口にした瞬間心なしか、口調が重くなったように感じる。



「天使と対を為す存在、悪魔が天界に攻めてきたのです。魔界からは大量の魔族が押し寄せ、圧倒的な戦力差もあり混乱する天界人達は次々殺されていきます。

 その魔の手はもちろん、神様にも迫ります。ですが神様は、体のそこに強大な力が眠っており……解放された力で、悪魔を追い返しました。でも……」



 ……悪魔に攻められた、天界。まず悪魔という存在が出てきたのも驚きだが、それがエルシャの、エルシャ達の日常を壊したのだ。



 その日常を守るために、エルシャは力を解放して……というかっこいい展開ではないようだ。



 解放された力、ということは、マンガにありがちな自分の意思とは関係なしに発動した覚醒した力とやらだろう。



 悪魔に攻められ、それを追い返す。言葉通りならエルシャの功績は多大なものだろうが……そこから少し言葉が詰まり、再び話し始める。



「それは一度きりの力で、何とか悪魔を追い返してもそれで悪魔に対抗する力は無くなりました。

 そして残されたのは、眠っていた力が呼び起こされた自分と半壊した天界……それから数年、娘は立派に神様としての務めを果たしていました。しかし悪夢は前触れなくやって来ます」



 長く語り、疲れてしまわないようにお茶を飲んで喉を潤す。ちなみにこのお茶は、話が始まる前に俺が用意したものだ。一呼吸置いて、話を整理するように言葉を話す。



「再び悪魔が進行してきたのです。来るべき日に備え力を付けていた天界人達でしたが、それは悪魔も同じこと。

 悲劇は再び繰り返されることになったのです。成長した神様も力を回復していましが、その膨大な力を持ってしても太刀打ちできませんでした。

 何より、その力は悪魔を追い返したものに比べると些細な力でしかなかったのです」



 どれほどのものか知らないが、言うように膨大な力を持っていたエルシャで勝てなかったなんて、悪魔ってのはとんでもない奴なんだとわかる。



 実際、エルシャの力の一端を見た身としてはその話だけで寒気が走るほどだ。



「そしてとうとう悪魔の親玉に捕まり、神様がその命を散らそうとしたとき、一人の天使が文字通り命をかけて神様を助けました。

 その際力を奪い取られ、あわや生命力まで奪われそうだった神様ですがその天使……親友のおかげで、命からがら天界から地上へと落ちてきました」



 ……落ちたってそういう意味だったのか、文字通り。最初変なことでもして神様の地位から落とされたのかと思ったが、似て非なる意味だったようだな。



 そういうツッコミは無粋だから止めておこう。



「しかし地上に降りてからも、悪魔の息のかかった人間に命を狙われる日々。“聖なる力”……いや"神力"か。

 それが通用しない神様に対し人間達は、銃という古典的な、しかし効果的な武器で神様の命を狙いました。

 逃げ回る日々……そんな肉体的にも精神的にもボロボロになっていたある日、神様は一人の少年に出会ったのでした」



 "神力"が通用しない……何気に言った情報は驚くものであったが、納得するものもある。



 チンピラに襲われた時、アカリに電撃を放たれたと時……どちらも、エルシャには通用してなかった。俺だけ黒焦げになってたのはそういう意味だったのか。



 話の最後、一人の少年て……というところで、俺を見る。その少年、というのが俺なのだろう。ここまで話し終えたエルシャは、軽く一呼吸つく。



「これが神様の……私の身に起きた全てよ。もう何度挫けそうになったか……

 いつ狙われるともわからない恐怖から満足に眠れもしないし、誰が敵かわからないから人里にも降りれない。正直死のうかとも思った……

 けど、この命は、私を助けてくれた天使が……私の親友が必死に繋いでくれたものなの。だから、私は死ねない……例え誰かに頭を下げることになっても、生き延びてやる」



 そこには、確かな決意が見て取れた。なるほど、さっき悔しそうにしながらも先生に学園に通わせてと頼んだのは、こういう思いもあったからなのかな。



 さっきまでのふざけた態度とは違う、真面目な表情……そのギャップに、俺は思わず背筋を伸ばしてしまう。



「そっか……色々あったんだな」



 大変だったんだな、とはいえない。聞いただけでわかったつもりになれるわけがないし、それではあまりに他人事のような気がするし……せっかく話してくれたのに失礼だと思うから。



「それで、これからどうするんだ? 神様の力を失ったんなら……人として生きるのか?」



 狙われているのから身を隠すために学園に保護してもらい、その後のことだ。エルシャはどうするつもりなのだろう。



 その問いかけに、何故か不思議そうな表情を向けられる。そしてこう続けた。



「何で? あいつらに仕返しするに決まってるじゃない。やられっぱなしは気が済まないし……力を取り戻す方法を探りながら、とりあえずは人間界の生活に身を任せるわ」



 冗談だろ、とは言えなかった。だってあまりに自信に満ちた顔をしているから。嘘を言っているようにも見えなかった。



 あっけらかんとしつつも、そこにはやはりやはり、先ほどと同じ決意が垣間見えた。



「ふぁあ……何だか眠くなっちゃった」



 話し疲れたのか、あくびをする神様エルシャ。緊迫した空気が壊れるが、それを狙ったのかもしれない。……ま、エルシャの場合素だろうな。いちいち俺に気を遣う理由はないし。



 無邪気にあくびをしたり、いやに馴れ馴れしかったり、人をおちょくったり。そういうとこは子供っぽいっていうか、神様っぽくないなぁ。



 これは多分、力を失って云々の前に、神様やってたときからこんな性格だったんだろうな。



「寝てもいいけど、着替えろよ? ちゃんとしたの出してやるから……」



「くかーっ……」



 シャツ一枚で寝られて風邪でも引かれたらかなわん。神様が風邪を引くのかは知らんがな。まあ、どのみち力を失った今は人間と同じようなものだろう。



 ……だが俺が言い終えるまでもなく、寝息が聞こえてきた。



 もう寝たのかよ……しかもその格好で。そりゃ人間をそういう対象として見てないのかもしれないが、こっちからしたらたまったものじゃないよな……



 呆れてため息が出るが、その寝顔を見ていると自然と笑みが浮かんでくる。そうだよな、満足に眠れなかったんなら……今くらい好きにさせてやるか。



 色々見えそうなのを必死に見ないようにしながら掛け布団を掛け、そのまま寝かせてやる。



 少し夜風に当たろうと、窓際に行く。窓を開けると少し肌寒い風が吹き通り、思わず身を震わせる。エルシャの話を聞いて、今後何をすべきか……そんなのはわからない。



 けどせめて、エルシャがこれまで辛い思いをしてきたのなら、これからは楽しい思いをさせてやろうと、ぐっすり眠るエルシャを見つめながら、そう思う。



 安心したように寝やがってまったく……



 ……力を奪われた神様と、力のない“神力”使いか。……何とも奇妙な組み合わせが出来上がってしまっものだなと軽く笑い飛ばしながら、夜空に浮かぶ満月を眺めていた。

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