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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
129/314

求めた先に



 見つけた、他とは異質な空間。見たところ何もないけど、天使の力に反応して何かが起きるかもしれない。あれだ、力を示せ、みたいな感じで。



 ということで試しに私は、天使の翼を出現させる。天使がここにいますよアピール。



 ……何も起きない。



「合言葉とかどうでしょう! なんか、天使特有の言葉とかないんですの!?」



「あ、合言葉……?」



 合言葉かぁ……あり月なものではあるけど。残念ながら、天使特有とかそんなものはわからない。


「…開けゴマ!」



 ……何も起きない。さすがに、安直過ぎたか。



「愛よ! きっと愛が扉を開くのよ! 愛、愛、愛ィイイイ!」



 後ろでなぜか興奮しているミシェルさんがうるさい。急にどうした!



 ……ともあれ、せっかくそれっぽい場所を見つけたのに、これじゃお手上げ状態だ。このままここで、ただ立ち往生しているわけにもいかないしなあ。



 頭を抱え悩んでいると、後ろにいたはずのスカイくんが一歩前に出る。おやおや、どうしたのだろうか?



「……リー姉ちゃん、ちょっとごめん」



「へ?」



 じっと、何もない空間を見ていたかと思うと……私に突然、謝罪をしてくる。え、私、何か謝られるようなことしたっけ? あったとしても、なぜにこのタイミングで?



 その言葉の意味を問う、その前にスカイくんは私に近づいてくる。おもむろに手を伸ばし、そして……



 ブチッ



「はぅ!?」



 私の天使の羽を、一枚むしり取った。



 ……え、何で!? 何で今、私は、スカイくんに羽をむしられたの!? ねえ、教えてよ!



 体にそれほどの痛みがあるわけではない。注射の針が突き刺さる「チクッ」とした感覚があるくらいだ。でもいきなりのことだったので、思わず涙が出てきてしまう。小さな痛みでも、覚悟してない痛みは痛いのだ。



「スカイくん、いったい…」



 さすがになんの意味もなしに、羽をむしられたのではたまったものではない。なぜこんなことをしようとしたのか理由を問いたい。だがその間にも、彼の行動は続く。



 スカイくんは、私からむしり取った天使の羽を何もない空間に近づける。すると……



「わっ」



 空間が、割れた。まるで、鞄のジッパーを開けたときのように。空間が割れ、向こうに見えるのは真っ暗な光景だけ。でも、先程より天使の気配が強くなっている。



 カードをかざしたら、自動ドアが開く、というシステムがある。これはそういうものなのだろうか。



「何ですのこれ……向こうから、何か感じますわ! 何と言うか、温かい感じがします」



 と、オルちゃん。他のみんなも同じような反応をしていることから、空間が開いたことで、力を隔てるものがなくなったのだろう。



 それにしても……翼を広げるのはダメで、羽をかざすのはオーケーなのか。どんな仕組みになっているんだ。むしらなきゃダメなのか、無駄に痛い思いするだけじゃないか。



 というか……何で、スカイくんは、この仕組みを知っていたんだろう?



「ねぇ、スカイくん……」



「さすが私の天使ちゃんねー! すごいわー! ご褒美ア、ゲ、ル!」



「アーッ!」



 疑問を問いただそうと振り向いた先のスカイくんは、ミシェルさんの逞しい腕に抱きしめられ抱えられ、頬にチュッチュされていた。今問いただすのは、無理みたいだ。主に精神的な意味で。



「ここから中に入るんですのねー!」



 ……それからしばらくして。ミシェルさんはツヤツヤに、スカイくんはガリガリになった頃、らんらんとはしゃいでいるオルちゃんを視界の端に置きつつ、倒れ込んでるスカイくんに私は、聞く。



「ねえスカイくん、どうして今の仕組みわかったの?」



 生気でも吸われたんじゃないかというほどに弱ったスカイくんは、



「……わかん、ない。急に頭の中に……こうするんだ、って、浮かんで……がはっ!」



 そう言って、力尽きたかのように泡を吹く。ミシェルさんに吸われて、こんな状況になってもちゃんと答えてくれるなんて、いい子だ。でも意識途絶えちゃったしこれ以上は無理そうだ。



 ……『頭の中に、こうするだ、って浮かんできた』か。それの意味することは何なのだろう。元々、荒れ果てた街に一人で居るところを見つけた少年。本人は、名前以外覚えていないという記憶喪失状態。



 記憶喪失以前、天使と関わりがあったのかあ? それが、ここにきて一時的に思い出された……とか。



「リーさん? 何してるんですの! 行きましょう!」



 オルちゃんやみんなは、天使が居るであろう向こう側に興味津々のようだ。



 ……まあ、あれこれ考えても仕方がない。今は、今すべきことをしよう。私は、スカイくんを抱き上げ、空間の割れ目へと向かった。



「じゃ、行きますわよー!」



 まるで遠足気分のようなオルちゃんに、張り詰めていた気が削がれてしまう。まあ、変に気負ってしまうより、リラックスしていた方がいいかもしれない。それを狙っているかは、わからないけど。



「待ってよ、オルちゃん!」



 先に入ってしまったオルちゃんを追いかけるようにして、私も足を進めていく。エドさんやミシェルさんらも後について来ているようで、それを確認し……全員が通ると、空間が閉じる。



 まるで扉一枚を通ったような感覚。空間に足を踏み入れる前とは、景色が全く違っていた。



 闇が覆っていた空はそこにはなく、以前のような青空が広がっている。周りには建物が並んでおり、先程までボロボロの屋台しかなかった風景とは随分違う。



 何より……そこには、大勢の人間がいた。人だけではない、その中に、翼が生えた者もいる。私が感じた天使の気配は、間違いなんかじゃなかったんだ!



「人々を保護してる、天使の組織……ここが、そうなんだ」



 目的の場所へと、ついにたどり着いたんだ!

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