天使の組織と悪魔の親分
エドワードさんが見たのが天使、ということなら。その『組織』というのは、天使達で構成された、もしくは天使を主体とした組織だということだろうか?
人間達を保護し、匿っているという組織……その中に天使がいるというのなら、その存在にも納得できる。悪魔から人を守ることも、対抗できる力も持っているだろうし、その存在を秘密裏に動くことも可能であろう。
人々を保護し匿っている組織の存在。そして今のこの人間界で天使が動いているという情報……たった二つの数少ない、しかしこの上なく大きな情報を得ることが出来た。この半年、旅を続けていたけどはそんな情報源はどこにもなかったし。
これから、もしも天使達と合流できれば……それは、心強い味方となってくれるはずだ!
それにもしかしたら、その中に……カーリャさんが、いるかもしれない。私の師匠であり、私にとってのもう一人のお母さんである……カーリャさんが。
「その人も強かったけど……向こうの悪魔の方が、上手だったみたいだ。体の大きさは人の倍以上あって。それでもあの人は諦めず向かっていったよ……その姿は、しっかり覚えてる」
その時の出来事を思い出すエドワードさんが、話す。その人、というか天使なんだけど……ま、どっちでもいいか。
きっとその人は、ここに捕らえられている人達を救うために精一杯の力で望んだに違いない。その悪魔相手に…………ん? ちょっと待って。
「あの、今……その悪魔のこと、体の大きさは人の倍以上、って言いました?」
「あぁ。力も凄まじかったよ。武器を振るっただけで、まるで空気が震えるような感覚がしたんだ」
と、天使を倒した悪魔の説明。
だけど待って……その説明は、おかしい。だって、私達がここに来た時に倒した悪魔は、五体とも全員人の平均身長、もしくはそれより少し大きいくらいで……倍以上だなんてことはなかった。
あの中に、エドワードさんが話す特徴の悪魔はいなかった。と、いうことは……ここで私に、一つの可能性が浮かぶ。それはつまり。
「もう一体……いる?」
周辺に魔力は感じない。それは間違いないはずだけど……そうとしか、考えられない。どこかに、六体目の悪魔が潜んでいる?
……その、直後だった。急激に、どこからか魔力が近づいてくるのを感じる。間違いない、ここに向かってきている。まさか、今話していた六体目の悪魔か!?
「くっ……みんな、とりあえず隠れて……」
ひとまず、みんなに隠れてもらう……そう言い切る前に、何かが着地する。その衝撃で砂が舞い、もろくなっていた家は外壁が吹き飛ばされる。な、なんて衝撃だろう……まるで目の前で爆弾でも爆発したみたいだ。
「何ですのー! 目に砂がー!」
「みんな! 大丈夫!?」
神力で風を起こし、辺りを晴れさせる。視界は良好になり、咳き込む人や擦り傷を負った人はいるみたいだが、どうやら大きな怪我はないみたいだ。と、とりあえずよかった……
「おのれらか? わしの部下をヤったのは…」
砂埃が晴れた中にたたずむ、一つの大きな影。まるでどこぞの怖い人みたいな口調で、ドスのかかった低い声だ。その姿は人の倍以上はある大きさで、額には一本の角。そして手には巨大な金棒らしきものを持っている。黒い翼は生えているが、悪魔というよりはまるで鬼だ。
だけど何より目を引くのが、足だ。一見すると二本足なのだが、よく見ると三本目の足が存在している。四本足ならケンタウロスという生き物という見方も出来たのに。変な鬼……いや悪魔だ。
「こいつが……」
この悪魔が、さっきの悪魔達を束ねていたボス的な存在だろう。部下、と言ったのはおそらくそういうことだ。旅の中で見てきた悪魔達よりも、その見た目や雰囲気……何より感じる力が、並みの悪魔とはレベルが違うことを感じさせる。
しかも、天使を倒したほどだ。基本、天使は悪魔に対して相性がいい。らしい。カーリャさんのとこで暮らしてた時、あった本にそう書いてあった。
「部下の気配が消えたから戻って来てみれば……おのれら、覚悟はできとるんじゃろうのぉ」
は、迫力がすごいな。口調がもう、怖いよ。チンピラ集団の親分かよ。以前の私なら泣いてたかもしれない。
けど、今そんなことは言っていられない。これまでの相手のように油断は出来ない。ここは、心してかからないと。天使の力を解放して、一気に勝負をかける!
「待ってくれ」
その時だった。畳みかけるために構える私に、制止をかける声があったのは。それはオルちゃんのものでも、もちろんスカイくんのものでもない。それは……
「僕に、やらせてくれないか」
いつの間にか私の隣に立つ、エドワードさんのものであった。




