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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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美少女による、修羅場一歩手前の娯楽



 ……聞こえたインターホンが、まるで死刑執行を告げるベルのように聞こえたのは、無意識に理解してしまったからだろうか。



 今訪れた人物が、とんでもなくヤバい人物だということが。



「あれ、開いてる? 無用心ね」



 ガチャ……誰かがドアノブを回す音が聞こえる。鍵は閉めた……ハズなのに扉は開いていく。



 鍵を閉め忘れたのか、それとも俺が気づかないうちにエルシャが開けたのか知らないが……とにかく、鍵は閉まってなかった。やっちまったでは済まされない。



 そして向こうから聞こえる声は、俺の幼なじみの声なわけで……



「ヒロトー、さっきはその、取り乱しちゃってごめ……」



 勝手に入ってきた謝罪よりも先程の件の謝罪をするのは、優先度がそちらが申し訳ないと思っているからか。



 姿を現した扉の向こうにいた人物……アカリは部屋の中の俺を見ると……いや正確には、シャツ一枚のエルシャをお姫様抱っこした俺を見ると、固まってしまった。



 整理しよう。今俺は、寝ている女の子をベッドに運んでいる。しかもシャツ一枚という格好。うん、はいアウト!はいダウト! ……何だろうこのデジャブ感。



「えっと、待てアカリ。これはだな……」



「やっぱり……同室を受け入れたのはそういうことしたかったからなんだ」



「落ち着け! この状況じゃ誤解するかもしれないけど、お前は誤解している!」



 うつむいているアカリの表情は見えないが、スゴい圧力を感じる。これヤバい、マジヤバい! 今度はビリビリで済まないこれ!



「待てって! ここ寮だから! せめて外で……」



「大丈夫、ちゃんと威力は抑えてあげるから……ね?」



 ヤバい、目がマジだ。見事に据わってらっしゃる。このままじゃヤられる! ……くそ、何とかエルシャが起きてくれれば弁解の余地もあるのに……!



「ん……」



 その時俺の願いが通じたかのように、エルシャが声を漏らす。そのまま体を揺らす。



 いろいろ揺れたり当たったりしているが命の危機だ、それどころじゃない! よし、起きてくれ! そんで俺の無実を証明してくれ!



「エルシャ! アカリの誤解を解いてくれ! な!?」



「んー……」



 完全に目覚めたらしく目を擦っている。キョロキョロと辺りを見回してから、状況を理解したのか声を上げる。……口元にうっすらと笑みを浮かべて。



「キャーオソワレルー」



 これ以上ない棒読みだったが、そんなの怒りに燃えているアカリには関係ない。何てことを! おのれ、失敗した!



 わかっていたことじゃないかこのクソ神の性格的に! 火に油を……いやこれじゃ油に火を注ぎ込んだようなもんだ! 何言ってんだ俺!



「やっぱり……襲おうとしてたんだ……」



 このままじゃ俺はおろか部屋まで吹き飛んでしまう。恨めしそうにエルシャを見ると、かわいらしく舌を出してしたり顔で笑っている。鍵開けたのこいつか!



 あわやアカリ大爆発……そんな大惨事になりそうなところへ、廊下の方から誰かの声が響いてきた。



「何事ですの!?」



 誰かが走ってくる足音、そしてそこに現れたのは、アカリと一、二を争う“神力”使い、オルテリア・サシャターンだった。腰まで伸びた青髪を揺らし、息を弾ませて参上。



 現場を見たオルテリアは、状況を分析するためか固まってしまう。当然だろう。



 俺達も、突然現れた乱入者に動きを止めてしまう。そりゃこんだけ騒げば誰か来るよな。それからしばらくして、何かに思い至ったのかオルテリアは手をパンと叩く。



「これが修羅場というやつですわね?」



「分析してないで助けてくれ!」



 こうなったら第三者に助けてもらうしかない。俺は必死に目線で合図を送る。



「……は! って、いい加減降ろしなさいよ!」



 フリーズしていたアカリが戻ってくる。俺も方も言われてようやく、エルシャを抱っこしたままだったことに気づいた。とりあえずこの体勢じゃ弁解も何もあったもんじゃない。



 こんな現場を招いたエルシャのことだからてっきり抵抗されると思っていたが、予想外にもすんなり下りた。そして一言……



「私より大きい……だと……」



 オルテリアのある一点を見ながら、自分のある一点……まあ胸元だが。そこを触る。どこ見てんだよ。どこ触ってんだよ。



 ……しかし気持ちはわからんでもない。エルシャだって、結構大きい部類に入るだろう。しかしオルテリアはそれを越えるお胸の持ち主だ。



 ……そしてアカリは……



「!な、何よ変態! スケベ! 誰がまな板よ!」



胸元を押さえて睨まれてしまった。まな板って、そこまで言ってねえよ。てか視線を向けただけで?



「こ、これでも少しは、あ、あるんだからね……」



 と言いながら自分の胸元を触るアカリ。聞いてないし俺はどう反応すればいいんだろうか。しかも自分で言っといて泣きそうになる始末。



 先ほどの怒りは消えたようだが、これはこれでやりにくい。



「で、結局何なんですの? この方は?」



 それてしまった話題を正すようにオルテリアが口を開く。アカリも、泣きそうな瞳で俺を睨んでくる。残念ながら今は全然怖くない。



 とはいえこのまま誤解させておくわけにもいかないので、オルテリアへの説明やアカリへの誤解を解くのを交えて説明する。



 もちろん、エルシャが神様だということはオルテリアには内緒で、その辺りは危なげに誤魔化して。そして説明を聞き終わり、アカリの反応は……



「なぁんだ、そうだったんだ。そうよね、ヒロトにそんな度胸ないわよね!」



 と満面の笑み。すんなり信じてくれたのはありがたい。誤解が解けて何よりだが男としては何だか複雑だ。



「男女で同室…これは楽しそうですわ!」



 とはオルテリア。変な疑いを持ってなくて安心はしたが、何だか価値観が違う気がする。楽しいとかそんな次元ではないのだが……



「ちぇー、もうバレた」



 最後につまんない、とエルシャ。こいつホント勘弁してくれないかな。 しかしまあ……こうして美少女が一同に俺の部屋に集まるのは、何というか得した気分になるな。



「でもアカリちゃんって面白いよねー。からかいようがあるよ」



「ちょっ、それどういう意味!?」



「お二人は仲良しさんですのね」



 出会って少ししか経ってないのに、もう打ち解けている。エルシャとオルテリアなんてつい今だ。コミュニケーション力高いなぁ。



 それからしばらく雑談が続いたため、俺は蚊帳の外になる。だってガールズトークとやらに入れないんだもの。



「では、私はこれで失礼しますわ」



 時間が過ぎ、先に退散したのはオルテリア。この中で一番後にエルシャと会ったのに、一番打ち解けていた気がする。二人共……どっちかといえばオルテリアの方が積極的だ。



「しっかし人間の中にも少しは話せる奴がいるみたいね。どっかの胸なしと違って」



 エルシャの方もオルテリアを気に入ったらしいのだが、何故そこでアカリに喧嘩を吹っ掛けるのか。いや、アカリだと気づいた俺も大概だが。ごめんなさい。



「っ……まあ、無駄な脂肪を抱えてる者同士お似合いよね」



 負け惜しみと言わんばかりにアカリも反論。だがその反論は間接的にオルテリアにも言ってることになるのだが……まあいっか。



 お互いに睨みあっているその姿は、まさに犬猿の仲、というやつだろう。



「さ、胸なしはとっとと自分のお部屋に帰って胸がおっきくなるよう祈ってなさいよ」



「うっさい神様もどき! だいたい何よその格好! そんなんでヒロトをゆゆ、誘惑しようだなんて!」



そういえばアカリは神様崇拝者だったと思うが……すでにその気持ちはないらしい。ふん、と花を鳴らして、喧嘩上等の姿勢だ。



「何よ!」



「やるの!?」



 二人の睨みあいが続く。やだなー、怖いなー。……まあでも、アカリの意見には賛成である。こんな格好のままいられたんではたまったみのではない。



「だって着替えないんだもん」



「もんじゃないわよ! なら……私の服貸すから」



…………



 アカリの提案に、一瞬の沈黙。エルシャが何を考えそして何を見たのか、残念ながらわかってしまった自分が恨めしい。アカリも、気付いたらしく……



「見た! 今胸見たわね! サイズが合わないとか思ってんでしょ!」



 まだ何も言ってないのに、一気に捲し立てるアカリ。いったい何と言い訳するのかと若干びくびくしていたが……そこでエルシャがとどめの一言。



「うん」



「うぇえええええん!!」



 さっきと同じように、アカリは泣きながら去っていく。かわいそうに……とは思わない。半分ほどは自滅だもの。



 それから結局、エルシャは着替えてくれず……一波乱過ぎた部屋は静かになる。さっきまでの騒がしさが嘘みたいだ。



「はぁ……いちいちアカリをからかうの止めろって」



「嫌よ、こんな面白いこと。それに私がキミと同室になったのは、半分くらいアカリちゃんをからかうためなんだから」



 にやりと笑っている。ちくしょう、そうだったのかよ! そんなんで人の生活をかきまわさないでくれるか! 危うくいろんな意味で人生が終わりそうだったんだけど!



「それにキミも面白いし」



 ほれほれ、と胸元をちらつかせてくる。天然の可能性も0.1パーセントくらい疑ってたが、やっぱりからかってやがったのかよ、このやろう。



「はーあ、楽しかった。神様やってたときはこんな娯楽なかったもんなぁ」



 挙句の果てに娯楽扱いかよ。しかしさっきも言ってたが、神様なんかだと周りが誰も近寄って来てくれないからそれなりに悩みはあるんだろうか。



 そこで、俺はふとさっきの話が気になった。



「なあ、聞かせてくれないか? さっき言ってた、過去の出来事……」



 こんなことを聞いて嫌な顔をされないかと若干勇気がいったが……心配はなかったようだ。その言葉に、きょとんとしながらこちらを見つめてくるが、しばらく考え笑みを浮かべる。



「えぇ、いいわよ。まだ全部を離してたわけじゃなかったし……教えてあげる、何があったのか」

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