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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
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これから、ぶん殴るために



 このわけわかんない世の中で、自分の体すらどうなっているかわからない……そんな私を、ずっとフォローしてくれていたのは他ならぬオルちゃんだ。



 彼女も、状況がわからず混乱していたのは同じだ。そんな中でも、私を助けてくれたんだ。神力学園での戦いの前までは、悪魔と何の関わりもなく育ってきたのに……そして、あんなことがあってオルちゃん自身、心を痛めているはずなのに。



 そう、オルちゃん自身は、悪魔とは何の関わりもない人だった。関わりがあったのは……彼女の幼なじみだという、あの男だ。正確には、幼なじみという記憶を彼女に植え付けていた男。



 その男の名前は、キルデ・オスロ。自ら、悪魔大参謀と名乗り、実際にその身には魔力を宿していた。それも、悪魔四神とはまた別格の。



 その事実をオルちゃんは知らなかったし、キルデもオルちゃんに危害を加えた。……といっても外傷、という意味ではなく、『神力を使えなくする』という行為によって。これは、悪魔のというより、彼ならではの能力だろうか?



 詳細は定かではないが……これにより、オルちゃんは戦線を離脱。傍観を余儀なくされた。私達の大きな戦力を、一つ潰されたのだ。



 ……けれど、時間が経って。改めて考えたとき……この一連の行為に、違和感を感じたんだ。普通に考えればあの行為は、厄介な戦力を取り払うための行為でしかない。実際に、そうであったようたに。



 でもそれとは別の考えも浮かんでいた。……もしも、もしかしての想像だけど……キルデは、オルちゃんに大怪我をさせないためにあんなことをしたのではないか……と。そんな考えが、生まれてしまった。



 事実戦場に加わることのできなくなったオルちゃんは、必要以上の傷を負うことはなかった。



 もちろん、これは単なる可能性の話で、もしもこれが本当ならどうなんだ、という程度のものだ。本当であっても、だからキルデを許せるか、それは別の話だ。



 キルデはオルちゃんに、幼なじみという記憶を植え付け……私達人間を、そして、ヒロトを監視するために、人間として過ごしていた。



 ヒロト・カルバジナ。アカリちゃんの幼なじみで……神力を打ち消す神力を持つ、落第生と呼ばれていた少年。その正体は……魔王、だった。



 魔王としての力と記憶が封じられてはいたけど、人魔戦争をきっかけに魔王として復活してしまった。……アカリちゃんの死を、きっかけに。



 そう、ヒロトを魔王として復活させるために、キルデは私達に取り入り、そして監視していたのだ。



 礼儀正しい人……それがキルデの第一印象。その実、中身はやはり悪魔のそれだった。人間を見下し、まるで物のように扱い……みんなの必死の想いを笑い飛ばす、非情な性格。



 そんな彼が……オルちゃんにだけは、違った態度を見せた。



 全てが終わる前……エルシャが力を使いきる、その前の一連の出来事。オルちゃんに自分の正体をばらし、決別を告げた去り際……彼はわずかに微笑んだ、ように見えた。バカにした、とかいうのではなく、純粋な笑顔。



 相手は悪魔だ。こちらの心を乱す行いもしてくるだろう。けど……あれが嘘だとは、思えない。



 この気づき、仮説を、オルちゃんには話していない。話してどうなる問題でもないしそれに……オルちゃんは、もしかしたら既に気づいているのかもしれない。本人が、一番わかっているのかも。



 彼女がキルデに対して何を思っていたのか……そして、今何を思っているのか。それは、私にはわからない。それは、きっと聞くべきではない。



 少なくとも、オルちゃんが自ら話してくれるまで待とうと……私は、追及しないことにした。



 ……話はそれたけど、ともあれ。死にそうなほどの苦痛に襲われている私を、辛い状況にあるオルちゃんは看病してくれた。そのおかげで、こうして無事(ではないけど)回復した私は、オルちゃんと旅を始めることにした。



 私が動けなかった間、当然悪魔の侵攻が止まることはなく……瞬く間に、人間界は支配されていった。



 支配されたこの世界を……取り戻す。そんな言い方だと聞こえはいいけど、そんな風に世界を救うヒーロー、みたいな思いでいるわけじゃない。



 私はただ……魔王となったあの男を、一発ぶん殴ってやりたい。そう、思っている。いろんな想いを……思い切り、ぶつけて。もう、元通りにはならないけれど。



「ふふ…もう、このまま寝ちゃいましょうか」



 ふと。物思いに耽っていた私に、オルちゃんが語りかける。思考が現実に戻され、状況を確認する。今私達は、一つの布団の中で丸まっている状態だ。



「うぇえ……」



 あ、安心するとはいえ……そ、それはさすがに……恥ずかしいというか……



「あら、さっき甘えさせてくれる、と言ったではありませんか」



 真っ赤になる私に、オルちゃんはまるで悪戯っ子のような笑みを浮かべている。うぅっ、確かに甘えてみてよとは言ったけど……それを引き合いに出されるとなぁ……



「わ、わかりました……」



「ふふ、やりましたわ!」



 そう言って、オルちゃんはいっそうに私を抱きしめる。は、恥ずかしいけど……でも、やっぱり安心するや……人の温もりは、安心する。



 これからのこと、スカイくんのこと……考えるべきことはたくさんあるけど、せめて今だけは全部忘れてもいいよね。



 恥ずかしさの中に徐々に安心感が上回り……いつの間にか、私は眠りについていた。この日……私は、いつぶりかに心底安心して眠ることが出来た。

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