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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
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ハーフエンジェルの異変



 三ヶ月、オルちゃんと共に生き残った人を探す日々を送り……あの日、スカイくんを見つけた。彼とも行動を共にして……それからも三ヶ月の月日が経った。この間、他に人を見つけることは出来なかった。



 つまり、この半年間で見つけることのできた人間は、スカイくん一人だけ。他には誰も見つけられなかった。……そう、生きている人は。



 無惨に、転がっている死体は嫌なほど見てきた。五体満足なものも、体の一部が欠損しているものも。それらはきっと、魔物や魔獣の餌にされたのだろう。そして我が物顔で、あちこちを闊歩している。



 ……あの悲劇の日、私とオルちゃんは偶然か必然か同じ場所に飛ばされた。神力学園付近ではない、知らない場所に。辺り一面砂だらけで、あれが砂漠という場所だとわかるのにそう時間はかからなかった。



 あの場にいたのが一人じゃなくてホッとしたけど、オルちゃん以外には誰も……誰もいなかった。



 あの時は……ただ、混乱してただけだったっけ。今の今まで神力学園にいて、悪魔が攻めてきて、たくさんの大切なものを失って、目の前で"彼女"が私達を守るように戦ってくれて……私達は、全てを失った。



 後はただ、消されるのみ……そう、思っていた。だけど運命は……いや、"彼女"は私達を生かした。"彼女"が起こした光……それに包まれた瞬間だった。その眩しさから目を閉じ、そして開いた次の瞬間には……知らない場所にいた。



 おそらく、攻撃が衝突した際に生じたあの光で私達を、彼女が……エルシャが、それぞれ別の場所に転移させたのだろう。



 あのままあそこにいたら、確実に殺されてしまっていた。だから……死地から、安全地帯へと。もっとも、今の世の中に安全なところなんてないけどね。



 状況を整理するには、時間を要した。頭は混乱してたし、傷は深かったし……何より、私の体が尋常じゃない異常をきたしていたから。



 あの戦い……神力学園で起こった、世に"人魔戦争"と呼ばれる人と悪魔との戦いで、私は天使としての力を解放した。……いや、解放し続けた。



 天使と人間のハーフである私は、普段は天使の力を封印していた。正体を隠していたのと、まだ未熟な私じゃ力を解放しても制限時間があるからだ。限られた時間の中で天使の力を解放する……私はこれを、"限定解除"と呼称していた。



 だけど私は、あの人魔戦争で、本来許されている時間をはるかに超えて"限定解除"をしてしまった。……その結果だろう、体に異常が起こったのだ。



 天使化の名残か、元々茶髪だった私の髪には、天使状態の髪の色と同じ金色が混ざり……茶色と金色とが、混ざり合った髪の色になってしまった。



 それに影響は瞳にも。右目はそのまま元の茶色だが、左目が同じく天使状態のエメラルドグリーンへと変化していた。一般的にオッドアイと呼ばれる、左右で色が違う瞳に変化していた。



 どうしてこうなったのかはわからない。でも、"限定解除"の時にしか使えなかった天使の力が……今では、時間の制限なく使えるようになっているのは大きな変化だ。



 それに、以前は人間状態では神力のみ。天使状態では天力のみと片方ずつの力しか使えなかった。それが、今となっては両方の力を同時に扱うことが出来る。神力と天力とを、いっぺんに。



 つまり、以前と見た目は変わったけど、以前より力の使い勝手がよくなった、ということだ。これだけなら、それほど問題はない。むしろ、戦いにおいてはメリットしかない。



……変化がこれだけなら、ね。



『うっ……ぁあ、ぅあああぁああっ!?』



 人魔戦争から逃れた直後に私が感じた体の異常は、尋常なものではなかった。何かが、体の中で暴れまわっている感じ。例えるなら、体内の血の流れが一気に早くなって、かと思えば逆流したようにも感じ、良くないことだというのはすぐにわかった。



 それでいて頭痛や吐き気、吐血、寒気、と。……とにかく、考えうる全ての苦痛が、同時に襲ってきたことで、私の体の中がかき回されるほどに気持ちが悪かった。。



 元々負っていた傷が深かったのもあるのかもしれない。その苦痛は、それこそこのまま死んでしまうんじゃないか……と思えるほどに、経験したことのないもの。



 カーリャさんのところで修行していた時、あまり長い時間"限定解除"をしていると、体調が悪くなることはあった。それを重ねて、逆算的に自分なりに"限定解除"の制限時間を計算したんだけど……



 でも、それをはるかに超えてしまったからだろうか。死にそうなほどの苦痛に、私は襲われた。何分か、何十分か、何時間か……もしかしたら一瞬だったかもしれない。それも覚えてないほどに、体内時間も狂っていた。



 その後……短いのか長いのかわからない時間を経て何とか体の苦痛が収まった頃。気づけば、髪の色が、瞳の色が、変化してしまっていた。見た目が、以前とは変わってしまっていた。



 死ぬことはなかったが……それからというもの、断続的にあの苦痛が襲ってくる。あの時ほどにひどくはないし、感覚的にも長くないけど……痛いものは、痛い。



 幸運というべきか、戦いの最中に苦痛が襲う……ということはなかったし、それほど戦いに苦戦する敵に会わなかった。単なる魔物ならば天力で簡単に倒すことができる。



 その苦痛が表れた時には、トイレと誤魔化したりタイミングよく注意がそれていたりしたためにスカイくんには気づかれていない。



 ……私の体の中身をを除けば、深刻な支障は出ていない。



 まあそのせいで、スカイくんにはお腹の緩いお姉ちゃんという印象を与えてしまっているけど……女の子として、失ってはいけないものを失ってしまっている気がするけど気にしてはダメだ。



 ただ、この苦痛の正体がわからないというのは……正直怖い。何が起こっているのか、確認したい。でも、それを確認する手立ては、ない……怖い。



 この半年、体の苦痛と付き合い、よくわかった。痛みは当初ほどない、けれど……確実に事態は進行している。もしかしたら、私の体は、もうそんなに長くは……ないのかも、しれない。

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