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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
世界崩壊
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温もり



 旅を始めてから、ずっと一緒だった……そんな彼女に、私はいつもずっと助けられていた。それに気づかなかったわけではないけれど、改めて気づかされる。



 でも、そればかりだと罪悪感がある。私ばかり甘えてしまって、オルちゃんに負担ばかりかけているのではないかと。



「……ありがとうオルちゃん。でも、私ばかりオルちゃんに甘えちゃって申し訳ないっていうか……オルちゃんも私に甘えていいんだよ?」



「あらあら、うふふ。そんなこと気にしてたんですの? 別に気にする必要ないですのに。でも、そう言うなら……ぎゅーっ!」



「わっ!?」



 私が彼女の重荷になっていないかと、その胸のうちを伝える。が、自分でも何を言ってるのだろうという台詞を続けてしまう。



 すると彼女は笑みを浮かべて、私に抱き着いてきたのだ。そのいきなりのことに私は受け身を取れず、二人その場に寝転がる。



 急に何事かと思ったが……感じる、オルちゃんの、温かさを。



「甘えてもいいんなら、こうして甘えちゃいますわ! ぎゅーっ!」



「こ、こんなのでいいの……?」



 確かに甘えてもいいと言ったけど、まさかこんなストレートに、物理的に来るなんて……しかもこれ、甘えてるって言えるのかな?



「こんなのがいいんですの。それにリーさんは、生物の欲求がわかってませんわね。リーさんちっちゃくて可愛いんですから、抱き締めたい。それは真理で、ずっとこうしたかったんですのよ?」



「は、はぁ……」



 それって、甘えるというより単に抱きしめたい衝動に駆られただけなのでは……?



 っていうか、いつの間にか顔が胸に埋まってるんですけど! ふわっふわで超気持ち……いや、ちょっと苦しい……息が出来ない……!



 でも、オルちゃんの行為に抗えない。気持ちいいからとかじゃなくて……いやそれもあるんだけど。



 何ていうか…落ち着く、っていうか。……あぁ、困ったな。オルちゃんの体温が温かくて……これじゃ、なんだかんだ言ってまた私が甘えさせてもらってるみたいじゃん。



「……ありがと」



「……何のことですの? 今は、私が甘えているだけですわよ?」



 顔が埋まっているとはいえ、何とか喋れる。



 私からも、少しだけ抱きしめ返す。安心する……オルちゃんってば、お母さん属性でもあるのかな?



「……お母さん」



「……せめて、お姉さんにしていただけません?」



 あ、てっきり口に出ちゃった。ま、お母さんだと年上すぎるか。オルちゃんの返答に、思わず笑みがこぼれた。



 ……私は……お母さんと、直接会ったことがない。いつも会話を通してだけ。何か天界との通信モニターみたいなので画面越しにはあったことはあるけど、実感というものはない。



 私のことは、お父さんが男手一つで育ててくれた。だから、母親の温もりを知らない。



 本当のお母さんとは別に、私にとってのもう一人のお母さんがいる。お姉ちゃんの友人であり、私に天使の力の使い方を教えてくれたカーリャさんは、言わば育ての母だ。



 でも、あの時は寂しかったとはいえ……カーリャさんに対してオープンになるのは気恥ずかしさが勝っていたのか、抱きしめてもらったことはない。



 だからもし、お母さんが抱きしめてくれたら……今みたいに、こんな風に温かかったのかな。



 オルちゃんの温もりに包まれて……さっきまであの夢を見て最悪な気分だったのが、溶けていく。このままぐっすりと、眠ることが……



「すぴー……もう、食べられないよぉ……」



 この眠気に、身を任せてしまおう……そう思っていたところへ、何ともこの場におマヌケな台詞が飛ぶ。それはオルちゃんのものでも、もちろん私のものでもない。



 その台詞の正体……それは、向こうの布団の中で、幸せそうな顔をして眠ている少年のものであった。



「な、なんてベターな寝言を……」



「自分で言うのもなんだけど、あの騒ぎで起きないなんて……感心するよ」



 あの騒がしい空間で、安眠を保っているこの少年……名を、スカイ・バランティアという。名は体を表すというのか、綺麗な空色の瞳をした少年だ。



 あの悲劇の日より三か月後……今より三か月前から行動を共にしている、小学生くらいの男の子だ。



 彼……スカイくんは三ヶ月前、旅の途中に立ち寄った街で見つけた男の子だ。街といっても、既に廃墟と化していたため何もなかったけど……



 それまで、度々魔物や魔獣、悪魔と遭遇し戦い、倒してきた。が、残念ながら人っ子一人として見つけられなかった。



 そんな時に、彼と出会った。廃墟となった街で、一人さ迷う彼に。



 スカイくんの話だと、気がついたらあそこにいたのだと言う。何もわからず、世界の状況がどうなっているのか、親の名前さえも……ただ一つ覚えていたことは、スカイ・バランティアという自分の名前だけ。



 つまり、記憶喪失ということだ。



 悪魔に支配されてしまったこのご時世だ。……例えば、悪魔にひどい目にあわされたとか、一人でいたということは……最悪、目の前で親を殺されたとか。



 そういったショックな出来事から、記憶を失ってしまった、あるいは自ら閉ざしてしまったというのは充分に考えられる。



 記憶はないが物分かりは元々いいのか、今世界で何が起きているかなど、教えたことはすぐに理解してくれた。



 わかっているのは名前だけ。……もし、有名な家の出ならそこから手がかりが掴めるかもしれないけど……バランティアなんて家名、聞いたことがない。



 名家であるサシャターン家のお嬢様であるオルちゃんも、バランティアという名前は聞いたことはないらしい。ということは、あの子は一般家庭の男の子ということだ。



 それに……あの子からは神力の気配を感じない。何の変哲もない、正真正銘普通の男の子。そんな子が、何であんなところにいたのか……何で無事でいることができたのか。



 何度考えても、答えが出ることはなかった。

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