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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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ハチャメチャな一日と修羅場の予感



 何の前触れもなく増えてしまったルームメート。いろいろと問題はあるが、今はまあ風呂と飯だ。腹が減ってが何とやら。



 とりあえず風呂の湯を張り、湯が溜まるまでのその間に冷蔵庫を確認する。思えば今まで一人だったから、誰かに料理を作るということはなかった。



 献立を考えていると、暇なのかゴロゴロしていたエルシャが俺に話しかけてくる。



「ねえあんた、ホントに学園最弱なの?」



 最弱……まあ“神力”を使えない俺なんて、使える奴らからしたらクソザコモブ以下だから相手にすらならないどころかその辺の石ころ程度にも思われてないだろうから最弱だろうけど……ぐっさりくるな。



「そうだけど、何でだ?」



「ほら、よくあるじゃない。この手の主人公はとんでもない力を持ってるのに、学園ではその力を測る設備がないから仕方なく最弱に留まってますぅ、みたいな。天界で読んだ人間界の書物にいっぱい書いてあったわ」



 何かとんでもないこと言い出したぞ! 何てこと言うんだこの子! 言ってはならないことを!



 肩をすくめながら、何か知らんが腹の立つ顔をしている。煽っているつもりだろうか。口調も心なしかムカつくし。



 ……まあ、そんなことを考えなかったわけでもない。こんな俺でも実はものすごい力が備わってるんじゃないか、とか。



 いや俺だけじゃなく、大抵はそんなことを考えたことがあるんじゃないだろうか。けど……



「残念ながら、そんな展開はないよ。おれは“神力”も使えない、正真正銘学園最底辺の最弱の男だよ」



 こうも自分を貶すというのと、悲しいを通り越してむしろ清々しいな。悲しくなってくる……という感情すら湧いてこないってのは、どうなんだろうな。



「なぁんだ、つまんないの。もしそうなら、オレツェエエオツ!とか言ってやろうかと思ったのに」



 ……こいつ本当に神様だよな? 天界で読んだって言ってたけど、え、神様って暇人? 人じゃないけど。



 ……というかそういう言葉は色んなところに喧嘩売りかねないから止めろよ。神様だから関係ないってか? やかましいわ!



「あ、じゃあじゃあ、私の力を使えたとき、これで俺が最強だ!とか思っちゃった? ずっと力が持続すると思ってた? 残念でした~一回きりですぅ~」



 ベッドに座りながら俺を煽る煽る。な、殴りたい……と思える。こいつ今何の力もないんだよな? 俺だって全く“神力”使えない訳じゃないし、相手は女だ。いざとなったら力付くで……



「あ、もしかして力付くなら勝てる、とか思ってる?残念、力を失ったとはいえ私は神よ? 見た目がか弱い女の子だからって、油断しないことね」



 それは……力でもお前には負けないぞ、という意味なのだろうか。何にせよその迫力に押された俺は、押し黙るしかなかった。



 それに女の子に手をあげるなんて論外だ。考えるのやめよう。そして何事もなかったように、冷蔵庫に目をやり今日の献立を考えることにする。



 食材の量が心配だったが、幸い二人分の量くらいはあった。食堂もあるにはあるが、自分で作ることが日課になっていた。明日買い出しにいかないとな……休みでよかった。



「Eランクのカルバジナ君は何を作ってくるのか楽しみですなー」



 とは、ソファに座っているのんきな神様だ。やっぱりこいつ暇なんじゃねえだろうか。ランク関係ねえし。



 さっきからちょくちょく話しかけてきやがる。今まで一人だったから、気が狂うな……



「ご期待に添えるように頑張りますよ」



 それから少しして、風呂が沸き上がったことが音声により知らされる。飯作りの合間に湯を溜めておくとは、時間の有効活用よ。



 ま、一人じゃ湯に浸かるなんて贅沢、やってなかったんだけどね。



「へぇ、ちゃんとお湯が溜まったら知らせてくれるんだ。“神力”頼りかと思ったらちゃんとハイテクじゃない」



 何もかもを不思議な力に頼っているわけではない。どうやら、エルシャも不思議な力の言い方を“神力”と呼ぶことにしたらしい。



 曰く、“聖なる力”よりも“神力”のほうが技名っぽくてカッコいいからだとか。考えてることはわからんでもないが。



「じゃ、私お風呂入ってくるから。覗くんじゃないわよ? ま、どーぉしてもって言うなら構わないけど?」



 まるで当然だと言わんばかりに、我が物顔で一番風呂をいただきに行く神様。元々そのつもりだったけどさ。



 そこで俺にかけられた言葉の真意はわからないが、人間ごときに裸を見られても一切気にならない。そんな口振りだった。



「いいから行けっての」



 もちろん魅力的な言葉だったが、ここで首を縦に振ってしまえばこの部屋での、いや今後の生活で上下関係が決まってしまうような気がしたから止めた。



 それに、そこまで節操なしだと思われたくない。俺は紳士なのだ。



「……作ろ」



 ……それからしばらく、そろそろ料理も完成しそうだというのにまだエルシャは風呂から戻ってこない。女の風呂は長いと聞いたことがあるが、長すぎない?



 呼びに行きはしないが、料理が冷めてしまいそうになれば仕方もない。



 ちなみに今夜はカレーだ。材料と時間さえあれば比較的簡単に作れるために選んだのだが……ルーを煮込んでいるこの長い時間にも帰ってこない。



 もしや人の風呂場が事件現場になってないだろうな、と心配になってきたところ、脱衣室の扉が開く。



「遅かったな。今夜はカレーだ、もうできる……ぞ……」



 扉が開く音に、俺は反応する。お玉で具を混ぜ込みつつ返答したのだが、出てきたエルシャの姿を見て俺は唖然とする。



「あらぁ? どうしたの?」



 何とエルシャは、おれの制服用のカッターシャツを着ているではないか。それも下には何も履かず……見た目にはシャツ一枚という格好だ。



 あれだ、履いてない。しかも胸元がキツいのか、ボタンを三つほど開けて胸元が露になっている。これはいくら何でも……



 顔をそらすが、白くふっくらした胸元とすらりと伸びた健康的な脚は頭から離れない。何考えてんだ!



「お前、その格好……」



「だって、着替えないんだもの。何かないか探してたら、それがあったから」



 にしても羞恥心とかあるだろうが! そりゃ気付かなかった俺も悪いんだけどさ。……いかん、意識しまいと思っても頭に刷りついて離れない! 心頭滅却! 去れ煩悩!



「わぁ、何それ! おいしそー!」



 色々ギリギリな俺に構わず、カレーを目にするやまるで子供のように駆け寄ってくる。



 シャツ一枚しか着てないからか度々揺れる胸元と、シャツの裾が揺れ太ももから上が見えそうになり気になってしまう。



「か、カレーだよ。知らねえのか?」



「かれー、って言うんだ。これがそうなのね。ふん、神様であるこの私が、人間界の食べ物なんて知るわけないでしょ? 人間界の勉強なんてろくにしてこなかったんだから!」



 そうですか。その割には変な知識はあるみたいだけどな。しかし偉そうにする前にとりあえず離れていただきたい。堂々とするから胸元がすんごい。



「ん? ……もしかして、照れてるの?」



 ついこの瞬間までカレーに目を輝かせていたくせに、俺の様子を見てか得意気に笑いわざと胸元を寄せ谷間を見せつけてくる。こいつ絶対わざとだろ。



 成る程、俺は甘く見られてるみたいだな。そんなに男をからかうと、痛い目にあっても……



「くんくん……ねぇ、何か変な匂いしない?」



「お前、いい加減にしないと……ん、変なって……あぁー!?」



 適当に注意をそらしたのかと思ったが、そんなことはなかった。カレーの火を付けっぱなしだったことに気付き、慌てて火を止めるも……どうやら少し焦げてしまったらしい。



「やっちまったぁ……そもそもお前がなぁ……」



「んん、変な匂いだけど妙に癖になる……ねぇ、早く食べましょ!」



 焦げてしまっても構わずに、テンションが上がったままだ。そもそもカレー自体知らないのなら焦げてるのすら知らないのかもしれないが……な。



 というか俺、まだ風呂入ってないんだけどな……



「……」



 無言で、しかも目を輝かせながら見つめられるとはぁ、とため息を一つつく。まあいっか。この調子じゃ俺が風呂入ってる間に食い尽くされそうだし。



「わかった、食おうか」



「早く準備しなさい!」



 相変わらず偉そうだが、それとは裏腹にはしゃいでるのを隠しきれていないな。こういうとこは子供っぽいな全く……



「ほい、んじゃ食べますか」



 食器を出し、カレーを盛り机に並べると席に座る。もちろん栄養も考えサラダも忘れない。多少焦げてしまったとはいえ、我ながらいい出来ではないだろうか。



 エルシャも座ったのを確認し、どちらともなくお互いに手を合わせる。



「「いただきます」」



食事前の伝統的な一言。神様もそんなこと言うんだな……と思いながらも、カレーを一口。



 多少の焦げ臭さはあるものの、これはこれで微妙なスパイスになっている気がしないでもない。さて、エルシャの反応はどうかな…?



「あむっ……これがカレー……ピリッとした中に何かこう、ワーッと味の波が襲ってくるみたいね!」



 どうやらこの神様、言語力が少々残念な方らしい。だが黙々と食べ進めていることから、どうやらお気に召したらしい。



 時折「美味しい」とか「んまぃ」とか聞こえるし、作った方としても作ったかいがあったというものだ。



「ま、なかなかの味付けね」



「偉そうに」



「もぐもぐ……誰かとする食事ってのも、悪くないわね」



 ポツリと言ったその言葉に、一瞬固まってしまった。まるで、今までは一人で食事していたかのような……そんな言葉だ。



「それって……」



「あぁ、私神様だから、何か周りが勝手に萎縮しちゃって一緒に食事してくれなかったのよね」



「そう……両親とかって」



「父親はいないし、母親は小さい頃に死んだわ」



 カレーを食べ進めながら淡々と答えるエルシャだが、俺はその台詞に衝撃を受けていた。俺何か、まずいこと言っちゃった? まさか食事の席でこんなシリアスな展開になるなんて……



「なぁ、それってどういう……」



「!くっ、何これ! すっぱぁい!」



 もちろん無理に聞き出すつもりはない。話すのを嫌がるなら打ち切ると決めその先を聞こうとしたが、急にエルシャが声をあげる。



 マンガなら目がバッテンになっているであろう顔で、俺に言う。



「何よこれ! この酸っぱいの!」



「え、あぁ……トマトだけど」



 サラダに盛り付けてあったプチトマトを摘まみながら、見た目にもご立腹だとわかる態度で告げる。眉を寄せ、わかりやすく表情を崩している。



「うぇえ、飲み込んじゃった……私これ、キライ!」



 どうやら食べたプチトマトが気に入らなかったらしく、そう言ってトマトを避けてしまう。いや、子供かよ。



 さっきまでシリアスムードだったのに、何だかそんな空気じゃなくなってしまった。……いや、これでよかったのかもな。



「「ごちそうさまでした」」



 しばらくして食事を終え、合掌する。ちなみにトマトはおれが食った。エルシャはカレーが気に入ったらしく、また作るように頼んで……もとい命じてきた。



 まあ量は残ってるし明日もカレーなんだけどさ。カレーはいい、明日どころか量によってはその次も種ることが可能だ。しかも日を追うごとにうまくなる素晴らしい食べ物だ。



 これこそまさに不可思議な力。



 少し焦げてしまったが、それでも美味しそうに食べてくれたのでこちらとしても大満足だ。いつもこんな素直ならいいのに。



 そして俺も、遅めながら風呂に入ることにする。エルシャはテレビに釘付けだ。天界にはなかったのだとか。さっき聞きそびれたこと、風呂から上がったら聞いてみよう。



 ……風呂に入り、今日一日のことを思い返す。いきなり神様に出会ったと思ったら、チンピラに襲われ、それを追い返したのも束の間アカリに黒焦げにされ、挙げ句神様と同室……



 しかも、さっき言っていたこととは一体……まだ今日は聞くことがある。さっさと体を洗い流し、風呂から出る。



 エルシャは相変わらずテレビに釘付けで、画面では最近人気のお笑い芸人が出ていた。



「あっははは! 何これ面白っ!」



正直俺はあまり好みの芸風じゃないんだが、エルシャのツボにはハマったらしい。価値観の不一致だな。だが今はそんなことはどうでもいいんだ。



「なあエルシャ……ちょっといいか?」



「えー、これ終わるまで待ってー」



 満喫しすぎだろこいつ。ソファーに寝転がりシャツ一枚でテレビを見る……まるで一人で生活しているよう。



 仕方なく俺はリビングの椅子に座り、番組が終わるまで待つことにしたのだが……



「くかーっ……」



 番組が終わる前に、エルシャが寝てしまった。何てこった……聞きたいことが聞けなくなった。さすがに無理に起こしてまで聞くのは気が引けるので、今日はこのまま寝かせておこう。



 とはいえソファーでこんな格好で寝てると風邪を引く。いや神様に風邪の概念があるかは知らんけどな。けどこのままにはしておけない。



 つまり俺がベッドまで運ばないといけないわけだが…



「……いかん落ち着け俺!」



 いかんせん相手はシャツ一枚という、非常に危うい状態だ。下手すれば色々見えてしまう。見えてもいいじゃない、と思うかもしれないが、一日目からそんな誘惑に負けていてはこの先が思いやられる。



 だからなるべく見ないように運ばないと。大丈夫、ソファーからベッドまですぐだ。さっとやればいいだけだ。



「うわ、軽っ……」



 まずはその身体を持ち上げる。自然とお姫様抱っこという形になってしまうのだが、これが軽いのだ。とても人一人の重さがあるとは思えない。人じゃないけど。



 何にせよ持ち上げたわけだが、その柔らかいこと。持ち上げているだけなのに触れている部分から柔らかさが伝わる。しかもシャンプーの匂いが漂い、俺の理性を蝕んでいく。



 俺も使ってるのに。落ち着けヒロト、焦るなヒロト。お前はできる……やればできる子だ。



 自分に暗示をかけ、運んでいく。たった数歩が、とても長く感じられる距離……そのとき、最悪のタイミングで来客を知らせるインターホンが鳴り響いた。

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