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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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地獄へ



……



「……ん……?」



 放たれた強大な攻撃。もう手立てはないと、覚悟を決め目を閉じたが……いつまで経っても、体に痛みはない。どころか、何の衝撃も起きない。



 恐る恐る目を開けると、そこには驚くべき光景があった。



「……エルシャ……!?」



 防ぐことなんて不可能だと思われた魔の力。巨大で強大なエネルギー弾を、片手で受け止めているエルシャの姿がそこにあったのだ。



「……これは驚いた。ただでさえ貴女は本来の力を失っている。それに加え神殺しの弾丸をその身に受け、今尚その力を奪われ続けている。だというのに……」



 これにはさすがのキルデも予想外だったようだ。平静を装っていても、実際に驚きを隠せてはいない。



「一体、どんな仕掛けを?」



「仕掛け……? …………そんなもんないわよ。神舐めんなバカヤロー!!」



 不可解に表情を歪めるキルデに対し、笑みを浮かべるエルシャは受け止めているエネルギー弾を、握りつぶした。まるで、片手でトマトでも握りつぶすかのように。



「なっ……?」



「うらぁ!」



 それがキルデの動揺を誘う。一瞬の隙を見逃さず、エルシャは勢いを込め……思い切り、奴の顔を殴り飛ばす。



「ぐっ……!」



「がはっ!」



 しかしキルデを殴り飛ばすも、もう自分が殴った衝撃にも耐えられないらしく……エルシャは吐血する。その拳からも、血を流しながら。



「エルシャ!」



「全く……じゃじゃ馬な神様だ。だが、もうこの程度とは」



 エルシャの力は、もう残っていない。ただのパンチでさえ、もう……



 残された手段……ふと、先生の姿が浮かぶ。彼女のとんでもない力なら、この場をどうにかしてくれるかもしれないと思ったのだ。



 すがるように、先生が倒れていた場所へと視線を向けるが……今までそこに倒れていたはずの先生の姿が、無くなっていたのだ。どこへ行ったのか、それは考える間もなく……



「はぁああああ!」



 先生は、ヒロトの下へと走り出していたのだ。エルシャが、一瞬でもキルデの注意をそらしたその隙を狙ったのだろう。邪魔する者は、どこにもいない。



「許せカルバジナ!」



 ああなっても生徒だと、まだ先生は信じている。生徒に手をあげる苦痛よりも、生徒を元に戻したい……そんな気持ちが伝わってくる。



 そして、その気持ちを乗せた先生の拳が振りかぶられ……それは、何の妨害もなくヒロトの胸板へとめり込んだ。



 ……はずだった。




「ふわぁ~……」



 その拳を受けてもヒロトは倒れるどころか、平然としている。というかのんきにあくびをしている。そこには痛みどころか、動揺すら見せていない。



「なっ……に……?」



 驚愕は当の先生と……それを見ていた、私もだ。嘘でしょ……?



 生徒相手とはいえ、今のヒロトに半端な攻撃は意味がない。今のは、今出せる先生の全力の拳だったはずだ。全力ではなくても、何も手応えが感じられないなんて……



 その拳をモロに受けて、何故平然としているの……?



「っ、か……!」



 驚愕に呆気にとられてしまい、気づけば……先生は地に伏していた。その腹に、逆にヒロトの掌底を受けて……加えて、黒い波動を打ち込まれたことでダメージを受けていた。



 踏ん張ることはできず、その場に倒れてしまう。



「ぐぁ……!」



 抵抗なく倒れる先生。その顔を、何とヒロトは蹴り飛ばしたのだ。まるでボールでも蹴るように。驚くことに、先生の体も、ボールのように飛んでいくのだ。



「そんな……」



 あの先生ですら……全然歯が立たない。悪魔四神すら足蹴にしていた、あの先生が。



 それは、絶望に絶望を重ねるには充分な光景であった。



「やれやれせっかちな人だ。魔王様は目覚めたばかりなのだから、もう少しそっとしておいてほしいものですよ」



 キルデは当然とばかりに、ヒロトの力が先生のそれを上回っている。でも、目覚めたばかりということは……それってつまり、寝起きの状態でこれってこと……?



「まだ……魔力、が安定してない……ものね……」



 魔力が安定していないと……そう指摘するのは、エルシャだ。確かに彼女の言うように、その力は強大だけど、どこか安定してないように思える。



 それで、この有り様なのだ。恐ろしいを通り越して、どう対処すればいいのかわからない。



「今の状態ならまだ人間に……貴女達の知ってるヒロトに戻せる、とでも? ……もう遅いんですよ、何もかも」



 何もかもが、もう遅い。……その言葉には、確かな絶望があった。それを、確信するに思える重みが、そこにあったからだ。



 さらに、奴の言う絶望はそれだけに終わらない。



「ぐ……? これ、は……?」



 聞こえたのは先生の戸惑ったような声。確認するために視線を移すと……先生の体が、黒く染まっていたのだ。それも、ただ黒くなっているわけではない。



 あれは……闇に、侵食されている?



「……え?」



 黒くなった自らの左手を見つめる先生の体は、既に半分以上が黒く侵食されていた。何が起きたか、それを考える間もなく……全身が黒く侵食された先生の体は、その場から消えた。



 今の今までそこにいたはずの先生が……消えてしまったのだ。存在も、何も感じられない。今の今までそこにいたのが嘘のように。



「……せん、せい……?」



 何が……起きたの? 先生が、消えた……?



 ……私は知ってる。これに似た現象を。以前、メルガディズと戦った時だ。私は一人、別の空間に転送された。……今のは、その転送に似ている。



 ……でも、嫌な予感しかしない。ただ別の場所に飛ばされただけならまだいい。だけど今のは……先生の力を軽く上回る、魔王の力によるものだ。



 それが、単に別の場所に飛ばすだけで済むだろうか……?



「先生……先生は、どこ……!?」



 言いようのない不安が私を襲う。絞るように出した言葉に、答えるのは愉快そうに笑うキルデだ。



「彼女はもうこの世にはいませんよ」



 答えたのは、私をさらなる絶望に落とすかのような言葉だった。この世に……いない? それってつまり……まさか?



「死んではいませんよ。まだね」



 死んでしまったのか……そう嫌な予感がしたのを否定したのは、他ならぬキルデだ。しかし、その言葉に不穏なものを混ぜて。



「ま、だ……?」



「彼女は先程、魔王様から闇のエネルギーを注入されました。それにより、彼女はこの世界でも魔界でもない異なる場所……どこにも干渉しない世界の狭間に飛ばされました」



「世界の、狭間……?」



「えぇ。そこからは、何者も抜け出すことは不可能。何もない、ただ無しかない空間にて、死ぬより辛い孤独を味わいながら……やがては死んでいく」



 死んではいないと言う。ただそれは、今現在の話。魔王の力により飛ばされたのは、世界の狭間と呼ばれる、何もない無の空間だと言うのだ。



 それって、つまり……死ぬまで、そこから出られない牢獄のような場所ってこと?



「無の空間を永遠にさ迷う地獄……すなわち無間地獄。彼女はそこで、孤独の闇に呑まれて死んでいくのですよ」

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