表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
102/314

名前



 点々としていた違和感が、一つの線として繋がっていく。思い返せば、ヒロトが人間でない証拠は、あちこちに転がっていたのだ。それなのに……



「げほっ……はは、銃って、こんなに痛いん、だ……」



 ……だけど、他のことに気を取られてもいられない。こうやって話しているうちにも、私の腕の中にいる元神の体は冷たくなっていく。



 神力殺しの力を受けてるとはいえ、神様の体だから丈夫なのか……それとも、急所が外れているのか……意識はまだあるようだ。それでも、このままではいずれ力尽きることは明らかだった。



「待ってて、今治して…………くそ、くそぉ!」



 神力は効かなくても、天力なら効くはず! この天使の力なら……治せるはずだ!



 ……そのはず、なのに……私の力はもう、残っていない。さっきから全然、力が湧いてこない。銃で撃たれた、こんな傷さえ治せないほどに……



 自分の無力さが,嫌になる。お父さん、アカリちゃんを見殺しにして、……そして…



 ……目の前で救える命があるのに。私は……また私は……!



「あんた、し、死にそうになってるんじゃないわよ! 私まだ、あんたに言いたいことも……やりたいこともたくさんあるんだから! こ、こんなとこで死ぬなんて、許さないわよ!!」



 今にも目を閉じてしまいそうだ……体も、冷たくなっていくのがわかる。このままじゃ、私は何も出来ないままだ。何も……



「起きなさい! 寝るんじゃないわよ! また私に、悪口とか言わせてよ! 色々話をさせてよ!」



 また、私は何も……



「お姉ちゃんの話とか……あんたの話とか……私の話とか……」



 何も出来ないの……?



「だから、死なないでよ…………エルシャ!!」



 恨んでいたはず……憎んでいたはずの、相手。それなのに、今私は、彼女に対して……ただ生きてくれと、そう思っていた。その私の言葉を聞いて、彼女は小さく笑う。



「……あ、はは…………やっと、名前……呼んでくれ、た……」



 名前を、呼んでくれたと……ただそれだけで、そんな嬉しそうな顔で、笑ってんじゃないわよ。



「そ、それを言うなら……あんたも私のなま、え……呼んだこと、ないじゃない……」



 声が、震える。視界がぼやける。さっきから、涙が止まらないのだ……それに気づけないほど、私は……



「……そう、だったわね…………ファルニーゼを……貴女のお姉さんを、助けられなくて……ごめんな、さい…………リーシャ」



 私の頬に手を添えながら……エルシャは言う。私のお姉ちゃんを、奪ったことに対しての謝罪を。今までずっと溜め込んでいたであろう、気持ちを。



 ……でも……



 ……ホントは、わかってたんだ。彼女が……エルシャが悪くないことくらい。お姉ちゃんが……大切な親友を、命を懸けて守ったことくらい。



『リーシャ、私ね、神様と友達なんだよ!』



『ホントに!? すごぉい!』



『でしょー? 身分違いってのはわかってるけど……それでも、私の大切な親友。いつか、リーシャにも紹介できたらいいな』



 いつだったか、お姉ちゃんとこんな会話をしたのを覚えてる。天使と人間のハーフである私の存在は公にできない。それこそ、神様に紹介なんて出来やしないだろう。



 それでもお姉ちゃんは、私の自慢の妹を、私の親友に紹介したいと……そう、言ってくれた。



 その時のお姉ちゃんは、とても嬉しそうな声で、笑顔で……その相手が、そんなに大切な親友なんだというのが伝わってきた。私も、会いたくてたまらなかった。



 ……だけど、お姉ちゃんが死んだと聞かされた時、私は……お姉ちゃんが死んだ現実を受け入れられなかった、受け入れられなかった結果……現実を悪い方に考えてしまった。



 エルシャさえいなければ、お姉ちゃんが死ぬことはなかったと……お姉ちゃんを殺したのはエルシャのせいだ、と。



 でも、それは私のただの勝手な逆恨みだ。エルシャは、何も悪くない。



 お姉ちゃんは大切な親友を、命を懸けて守り抜いた。ただそれだけのこと。それだけ……それなのに、その相手を、私は……!



 だから、貴女が私を庇う道理なんて、どこにもないのに……



「なに……泣いてん、のよ。今まできつい視線、ばっか向けてたくせに……」



 涙を流す私に心配をかけないためか……からかうような口調。それは、いつも通りの飄々としたもので。



「ごめん……ごめ、なさ……」



 対して私は、謝ることしか、できない。なのに、それすらもうまく言葉が出せない。意思とは関係なく、頬を涙が伝っていく。



「……謝るのは、私だよ…………あなたの言う、通り。あな、たの、お姉ちゃんが死んだのは……私の、せいなんだから……」



 ……やめてよ。そんな、ことを言うのは。



「お姉ちゃん、を奪われて……悲しかった、よね。そんな理不尽、許せない……よね……」



 そうだ……お姉ちゃんを失ったという突然の出来事に、宣告に……私の心はズタボロだった。エルシャを憎む気持ちを抱くことによって、心が壊れるのを阻止していたのかもしれない。



 ……でももう、とっくに、壊れていたのかもしれない。



「本当に…………ご、め……なさ……」



 ……何で今、そんなことを言うのよ。……そんなの、もう遅いよ……



 こんな時に謝罪なんてされても、全然嬉しくなんかない! こんな、時に……



「謝るんなら……もっと、謝ってよ。この先、もっと……私も、謝るから。だから、こんなとこで……死な、ないでよ……!」



「リーシャ」



 すがるような私の思いは、しかし届かない。死なないでと……そんな気持ちだけで命を繋ぎ止めることなんて、できやしないのだから。



 それはわかっている。わかっているけど、止められない。言わずにはいられない。けれどエルシャは、そんな私の気持ちを吹き飛ばすように……



「……ありがとう。親友の妹に会えて、嬉しかった」



 ありがとうと……私にはもったいない言葉を、与えてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ