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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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神殺し



 ……何が起こったか理解が追い付かず、呆然と立ち尽くす。現状を把握するには、頭をフル回転しても少しだけ時間が掛かった。



「……! ちょ、ちょっと!」



 何が起こったか……それを、思い返す。アカリちゃんをぞんざいにあつかったヒロト……その行為に頭の中で何かがキレた私は、彼に向かって走りだし、銃口を向けられ、そして……



 バンッ……!



 ……そして、銃弾から私を庇うようにあの女が立ち……その身に銃弾を受けたのだ。倒れていく影……その光景を目に我に帰った私は、倒れたあの女に……元神に駆け寄る。



「あ、あんた、何で……」



 倒れたそいつの胸からは、赤い血が流れ出していた。単なる銃弾……神の力が少しとはいえ戻ったこの女に、そんなもの効くはずがないのに……何で?



 ……いや、今はそんなことはどうでもいい! そもそも何で、私を庇って……



「うっ、はぁ……はぁっ」



「な、何で私を助けるのよ! 私は、あんたを……!」



 助けなければいけない。それはわかっているのに、口から出てくるのは心配の言葉ですらないものだった。でもそれは、単純な疑問でもあって。



 そうだ、私は今まで、こいつのことを……散々に扱ってきた。た責めたり、無視とか、酷いことをたくさん……こんな風に助けられる資格なんて、ないのに。



 なのに、どうして……?



「げはっ……へへ……だ、って…………親友の、妹……だもの。…………良かった……無事で……」



 ……親友の……お姉ちゃんの、妹。答えはただそれだけの、シンプルなもの。……でも、私はあなたに……何を、してきたか。わからないはずないでしょ?



 あんな態度をとられて、私のことを鬱陶しく思ってたんじゃないの?



 消え入りそうな声で告げるその顔色は、徐々に悪くなっていく。血の気が引き、白い肌が目に見えて白くなっていく。



 胸から流れ出す血が、服を、地面を赤黒く染めていく。バカみたいにうるさく、鬱陶しいくらいに賑やかな女の姿は、もうそこにはなかった。



 まるで消え入りそうな命の灯は、彼女の元気な姿を欠片も残さないほどに奪っていた。



「あ、あんた! 神様なんでしょ! こんなダメージくらい、何とも……ないはず……なのに」



「ふふ、お忘れですか? それは、“神力殺し”の弾丸ですよ」



 神様にこんな攻撃聞くはずがない、さっさと回復してしまえ。……それを一蹴するかのように……声を圧し殺して笑うキルデがいた。



 話を聞く余裕はない。そのはずなのに、その声はなぜだか耳に入り込んでくる。まるで耳元で囁かれているように。



「神力とは、元を辿れば神の力も同然。“聖なる力”、とも言いましたか……そんな汚らわしい力。それを殺せる唯一の力、それが今彼女を蝕んでいる力。その力をその身に受けては、もう助からない」



「そんな……」



「それに弾丸はまだ体内に残っている。いずれ残る力も全て殺し尽くす……いかに神であろうと。まさに"神殺し"だ!」



 苦しむ彼女の身を撃ったのは……神殺しと呼ばれる、力だと。聞いたこともないその言葉が、私に重くのしかかってくる。



 だってそれは、言葉通り神を……彼女を、殺す力だということだから。それがハッタリでないことは、火を見るよりも明らかだ。彼女の様子が、それを物語っている。



「そもそも、おかしいとは思いませんでしたか?」



 神の力は殺され、私の天使の力も使えない。このままではどうなってしまうか、明白だ。なのに、私にはできることが……ない。



 キルデの問いかけにも、ぼんやりと反応することしかできない。



「ヒロト・カルバジナの力ですよ。なぜ、神力を打ち消すなどという“神力使いの人間を殺すためだけにあるような力”が彼に発現したのか」



「あ……」



 ぼんやりしていた思考に、まるで電撃が走るように……その言葉に、私はハッとした。



 ……彼の神力が発現したその光景を見たとき、確かに妙な力だとは思った。神力を打ち消す神力なんて、見たことはもちろん聞いたこともなかったから。



 だけど、神力の用途は様々だ。アカリちゃんのように炎を出すのを得意としたり、オルテリアさんのように水や氷を操ったり、ネコ先輩のように電撃を使ったり、浮遊したり姿を消したり……



 だから、もしかしたらそういう力もあるのかもしれないと、思っていた。けど……違和感は、残っていた。



 違和感と呼ぶにはあまりに小さな違和感。ヒロトが神力が使えるようになったと、喜ぶアカリちゃんの姿にそんな違和感はかき消えてしまうほどの。



 でもそれは、まるで水面に広がる波紋のように大きくなり……気づけばこんな大きな事態にまで発展していた。



 取り返しのつかない事態になってしまった。後悔しても取り返しのつかない事態に。



「ふふふ……その力こそが、彼が我々魔族の頂点に立つに相応しいという証! 今日ここで! その力で! 神を殺し、魔王として完全なる存在となるのです!」



 ……神力を殺す、その力。それはここにいる神を確かに死に追い詰め……今まさに、神殺しが完遂されようとしていた。

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