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突然異世界-死んでたまるか  作者: ロマンス飯田
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「御伽、この前できた今からゲーセン行こうぜ」

「やだよ、それより美琴と押井誘って裏山いこ」

「なんで裏山?」

「お化けがでたんだよ!でもなー、たっちゃんおばけにがてだったっけー」


俺がたっちゃん-音無達也-と出会ったのは7年近く前になる。その当時の記憶はないが、俺とたっちゃんは幼馴染で中学3年になってもいまだ仲良くしている。美琴と押井は俺とたっちゃんの中学からの友達で、俺たち4人でよく遊んでいる。音無達也、スポーツ万能の体育会系の男、美琴隆二、こいつは自他ともに認めるイケメン、押井守はなんでも知っている知識人。俺の頼れる友達だ。


俺とたっちゃんは学校の門で待ち合わせて、美琴と押井と一緒に裏山にいった。


「守ー、お前お化けって信じる?」

「いや、信じないね。非科学的すぎる。そう言う達也は信じているのか?」

「まぁ、な」

「へぇ、意外だな、達也に怖いものがあるなんて」

「美琴と違ってたっちゃんはビビリだからね」

「うるせーよ」


俺たちは裏山を目指し歩いていた。裏山に着くのにそう時間はかからなかった。裏山にはちらほらと登山する人の姿も見え、それに続いて登り始める。


中腹まで行くと、それまでの整備された道から外れ、獣道を歩いて行く。


「こっちだよ、お化けがいんのは」

「新川誰から聞いたんだ?」

「美濃さん」

「って、あの学年1可愛いとされている…」

「っても、新川くんお化けとか好きそー、って半分バカにされてだけどな」

「それはネタ、面白すぎだろ」


たわいのない会話をしながら歩いていると、目的の場所についた。


そこは大きな木の根元で、その横にはいばらの木が生えていた。


「ここかー?」

「そーだよ」

「んで、どんなおばけがでたんだ?」

「んー、詳しくは知らないけど、30年くらい前RPGのような格好をしたお化けが現れたらしいよ」

「RPGって、どんなお化けだよ」


確かに勇者や魔法使いのような格好をしたお化けとか想像できない。


「来たはいいけど、なんもないな」

「あのいばら、通れそうな道があるぜ」

「いってみようぜ」


大きな木の横、いばらの生い茂ってるなか、不自然にいばらのトンネルができていた。俺たちは美琴に促され、屈みながらその穴を進んでいった。


数分ほど歩いた時、出口が見えた。


「なんだ、ここは?」


たっちゃんが呟く。


俺たちがでた場所は、先ほどまでいた裏山とは違い、ひらけた場所だった。木は所々に生えていて、元来た方を振り返ると、どこまでもいばらが広がっていて、穴の横、少し離れた場所には小さな石碑がたっていた。紋様が彫られているが、見たことのあるものではなかった。


「少し探検してみるか」

「「「賛成!」」」


俺たちは満場一致で賛成し、この奇妙な場所を探検することにした。


少し歩き回って分かったが今いる場所は山じゃなかった。坂道はなく、木の数も裏山ほど多くない。多分森、それも木の数はそこまで多くない森だ。


20分ほど歩いた時だった。遠くで金属のこすれる音した。それも大量に。


「なあ、たっちゃん、いってみる?」

「もち」


俺たちは、音のなる方へ歩いて行く。出会いは突然だった。そして、別れも訪れた。俺たちの歩いているその先の、木の陰からそいつはでて来た。


グサッ


嫌な音が響く。何が起こったのかとっさには理解できなかった。


「えっ、うそ、だ、…」


そういってたっちゃんは倒れた。腹部からは大量の血が流れ出し、素人が見ても、それは死んでいるのが分かった。


「うわあああああ!」

「っくそ、に、逃げろ!!」

「えっ、ま、まじかよ」


俺たちは半狂乱になりながら逃げた。木の陰から出て来て、たっちゃんを刺し殺した犯人、それはゲームでよくいるキャラに似ていた。俺たちより少し小柄で、尖った耳をもち、その顔は形容できないほど醜かった。ゴブリン、なんで、どうしてあんなやつが実在する!一体何が起こっているんだよ。


そうして、体力の続く限り走り続けた。


俺たちが止まった時、森を抜けて、100メートルほど進んだところだった。ひざ下の草が生い茂り、木がまばらに生えている。森に比べ多少見晴らしがいい。ここならもう一度襲って来ても逃げれる。そんな心理が働いたのかもしれない。


「なんだよ!あれはっ!」


美琴が叫んでいる。それを聞きたいのはこっちの方だ。


「達也…、死んだのかな?」

「あたりまえだろっ!腹を刺されてたんだぞ!」


押井と美琴が言い争う。俺は何も言えない。口から言葉が出でこない。訳のわからない場所にきて、訳のわからない生物に、目の前で親友だった幼馴染が殺された。当然起こったこれらの出来事を頭が理解しきれていない。


その時、たまたまふと振り返った。目に入ったのは大量のゴブリン。お粗末ながらも金属製の装備等をして、明らかにこちらを狙っている。


「美琴!押井!後ろから…あいつらが!」


2人も振り返り森の方を見つめる。そして、真っ青な顔をしてぼそりと呟いた。


「俺たち、死ぬのかな…」


その言葉は重く俺たちを包み込んだ。死、自分が死ぬことなど、つい先ほどまで考えたこともなかった。しかし、目の前の景色は、死が目の前であることをどうしようもないくらいに物語っていた。


ゴブリンたちはこちらに向かって歩いてくる。俺たちは何をするでなく、ただただ立ち尽くしていた。俺はもう、諦めてしまっている。


ゴブリンの振り上げた粗雑なナイフが振り下ろされる。


その時だった。俺は思い出した。10年前の約束を、たっちゃんとの思い出を。




「ねぇ、オトちゃんとたっちゃんどっちがわたしのお婿さんになるの?」

「俺だ!」

「僕だよ!」

「そーねー、じゃあ2人のうち長生きする方がわたしとけっこんするの!」

「「分かった!!」」

「オトギ、俺とお前で、アキちゃんを守るんだぞ!」

「うん、分かった!」



これは、俺とたっちゃん、そして、中水流秋穂の小さい頃の約束。秋穂は、僕らが小学校に入るとき転校した。こんな約束覚えているのは俺だけかもしれない。でも、この頃の俺は、このことだけが生きがいだったから。自分の過去を否定したくないから、俺がこの約束を破るわけにはいかない!


目の前に迫り来るナイフを、首を強引に捻って避ける。ナイフはほおを擦り、ほのかに痛みを感じる。首をひねった反動で、そのまま体もひねり、その拳を思いっきりゴブリンの顔面にぶつける。


メキャ、と音をたてゴブリンが吹っ飛ぶ。殴った拳と、切られた頰が痛む。でも、この痛みは生きている証だから。俺は立ち上がり、目の前のゴブリンどもに吠えた。


「うおおおおおお!!!」


俺の声を皮切りにしてゴブリンどもが襲いかかってきた。そして一番先頭のゴブリンか俺に達するかどうかという時、風をきって飛んできたものに、そこゴブリンは貫かれた。あれは、矢…。でも、なんで?矢は次々に飛んできて、どんどんゴブリンを殺していく。半数が倒れたあたりでゴブリンたちは森へ帰っていった。


「助かったのか…?」


矢が飛んできた方を見ると1人の女がいた。その女はこちらへと歩み寄ってくる。反射的に身構えてしまう。


「--------」

「え、なんて?」


言葉がわからない。でも、助けられたようだ。後ろを見れば美琴や押井も怪我こそしているが、ちゃんと生きている。その女は腰にかけていたバッグから何やら瓶を3本抜き出し、俺たちに渡してきた。促されるままそれを飲むと、頬の傷や、拳の怪我がどんどん治っていった。


「すげぇ!」

「まじかよ!」


美琴や押井が驚いている。俺も驚いた。一体どういう原理なのだろう。


女はついてこいという仕草をし歩き始めた。俺は何が何だか分からなかったが、頼れる当ても他になく、とりあえずついていくことにした。


連れていかれた場所は町だった。俺たちがいた草原から少し行ったところには道があり、道沿いにほんの10分程度歩いたところに町はあった。町と言ってもそれほど大きな町ではなかったが、煉瓦造りの家が並ぶ綺麗な町だった。でも、このような町は見たことがなかった。裏山にいたはずの俺たちは一体どこにきてしまったのだろう。


俺たちが連れていかれたのは大きな建物だった。そこで1人の老人にあった。老人は俺たち3人に指輪のようなもの配ってきた。はめてみろという仕草をされたので、試しにはめて見る。


「言葉がわかるか?」


老人が喋りかけてきた。突然のことに驚いたが、言葉が理解できたことが少し嬉しかった。


「ああ、わかる。でも、どうして?」

「その指輪には意思疎通の魔法がかかっているからな。言葉を理解しているのではなく、そのいみをりかいしているだけだ」

「ここはどこなんだ?」

「アルカディア大陸西端の町、アルカスだ。アルカスは勇者の町、という意味だ」


聞いたことのない地名だった。俺は言ったをあのいばらの場所へ行きたかった。訳のわからない場所から帰りたかった。


「俺たちは帰りたい。森の中を案内してくれないか?」

「分かった。クリスティア、連れていってやれ」

「わかりました」


クリスティアと呼ばれた女性は、先ほど俺たちを助けてくれた人だった。俺たちはもう一度あの森へ戻ることにした。


クリスティアは俺たち3人にナイフを渡してきた。ゴブリンか出たときの自衛用のようだ。


順調に森に進むことができた。ほんの30分ほど歩くと、いばらの場所へ戻ってくることができた。


「帰れるな」

「ああ」

「よかった」


俺たちはいばらの中へ入っていった。


しかし、その穴は行き止まりだった。もらったナイフでいばらを切りながら進む。光が見えた。出口だ、と美琴が叫ぶ。でも、景色は変わらなかった。ただ単に、いばらの生えていだ場所を抜けただけだった。


俺たちはもとの世界に帰ることはできなかった。


その後、町に戻った。帰りしは一言も喋らなかった。美琴や、押井も沈んでいるのがわかる。俺も実際かなりきつかった。遊び半分で幽霊探しに行き、何もわからない場所にきて、いつの間にか友達1人を失い、元の生活には戻れないと知った。気が狂いそうになる。


クリスティアはまるで俺たちが帰れないという子どか分かってたかのように落ち着いていた。


日は暮れかかっていた。俺たちは一旦、休ましてもらった。案内してもらったのは、町の宿屋だと言われた場所だった。部屋は小綺麗にされていて落ち着く雰囲気が出ていた。そして、3人で今後について話し合った。


「これからどうする?」

「この世界で生きていくしかないだろ」

「信じらんないよな、こんなことが起こるなんて」

「ああ」

「じゃあ明日はあの町長に話を聞くか」

「うん、そーだな」


そう言って眠りについた。


翌朝、町長に話を聞いた。


この世界には魔物がいて、魔王がいた。そして、魔王を倒す勇者が何年かに一度、突然のこの町の近くに現れること、その人は言葉がわからないこと。そして、その勇者は俺たちのうちの誰かであること。この他にも、この世界のことをたくさん聞いた。終わったら、俺たち全員に袋を渡してきた。中を見ると、たくさんの金貨が入っていた。この世界の相場を聞く限り、かなりの量だ。


俺たちはその後冒険者ギルドに行った。ギルドに加入し、俺たちの魔力量を鑑定してもらうためだ。


加入の手続きは簡単らしい。名前を聞かれた後、魔力量の鑑定をしてもらい、職業を決めるらしい。この際、魔力量によって、つける職業が変わるらしい。


ギルドに着くと、なかは人で賑わっていた。受付で加入申請したいと告げると、奥の部屋に通された。名前を聞かれた後、少しの間待たされた。数分後やってきたのは見るからに魔法使いのようなお姉さんだった。俺たちに魔力鑑定をすると言って何らやブツブツと呟きだした。


「真紅の瞳に映りしものよ、その姿、その心、全てをさらけ出せ、鑑定(アナライズ)


お姉さんか呪文のようなものを唱え終わると、嫌な感じに襲われた。うまく言い表せないけど、なんかじっと見られているような、そんな気分になった。


「あなたたちの魔力は、魔力量数値化基準に基づいて数値化すると、オトギシンカワ300、リュウジミコト9900、マモルオシイ8500です。オトギシンカワは9級、リュウジミコトは2級、マモルオシイは3級に区分されます」


ん?1人桁が違ったような…。俺、500?5000じゃなくて?美琴や押井に比べて少なすぎだろ。お姉さんはさらに追い討ちをかけるように告げる。


「リュウジミコト、マモルオシイは剣士、盗賊、狩人、道化師、野伏、魔法使い、僧侶、魔法剣士、聖騎士、暗殺者、錬金術師のいずれかです。オトギシンカワは剣士、盗賊、狩人のいずれかです。なりたい職業が決まったら、あちらの方で所定の用紙に記入してください。それで加入手続きは完了です」


俺は職業というものに疑問を持って聞いて見る。


「職業が違ったら、どうかわるんですか?」

「はい、職業毎に付与される能力が違います。後にお渡しする冒険者プレートには、職業毎に能力を付与する魔法がかかっております。」

「そうですか、ありがとうございます」


どうして職業毎に能力を付与するのだろう、全部の能力を全員に付与すればいいのでは、と少し疑問に思ったが置いておく。


「守、何にする?」

「錬金術師かな、美琴は?」

「魔法剣士だな!まあ、新川は、残念だったな」

「新川、どんまい」


慰められた。確かに俺だけなれる職業の数が少ない。それに美琴や押井は魔法剣士だか、錬金術師だかかっこいいのに対し、おれは、剣士、盗賊、狩人と、何ともチープだ。でも、何の職業にするかは重要だ。説明を受けた限り、剣士は剣に扱う、盗賊はナイフを、狩人は飛び道具を使うと言った感じか。


「俺は剣士になるよ」

「おう、がんばれよ」

「そうだぞ、がんばれよ」


2人の上から目線感に少しイラッとしつつも、登録を済ませた。その後少し待たされて、金属製のプレートを渡された。これは冒険者ギルドに所属していることを証明するもので、無くさないようにと言われた。よく見ると、オトギシンカワ、剣士、10級と書かれていた。何だろうこの10級というのは。


「あの、この10級というのはなんですか?」

「冒険者ランクを表しています。ランクが高いほど数字が減っていって、一番上は0級です。5級から上はプラス、マイナスがつき、1つの数字で3段階となっています。ランクによって受けれる依頼が変わっていますので、ランクを上げれるよう頑張ってください」

「ありがとうございます」


俺たちは受付のお姉さんから職業に関する説明書的な分厚い本をもらい、ギルドをあとにした。


俺たちはその後買い物するため市場へ行った。多くの露天商があり栄えていた。3人バラバラに動いて買い物をすることにした。俺は武器屋へ行って、鋼の剣を一本買った。貰った金はかなり余っていたため、革のコート、革のズボンを買い、ポーションもいくつか買った。服や下着、食べ物も買い込み、3人で集まった時には日が暮れかかっていた。一度クリスティアさんにオススメされた宿屋へ向かい、休憩をした。


美琴や押井も装備や雑貨を買い込んでおり、明日、町の外を見て回ることを約束し就寝した。


翌日、俺たちはギルドへ行き、薬草採取の10級依頼を受けたのち、町の近くを探索することにした。


押井の錬金術師には1つの効果があった。押井曰く、ものを見るとそれが何かわかるということらしい。文字として頭に浮かんでくる。そう言っている。そして、どう合成すれば、何ができるのか、そんなこともわかるらしい。実際押井は採取した薬草を使って、何やら青い液体を作り出していた。多分、ポーションだ。


試しに俺や美琴を見てもらうと魔力の量が500、7900と頭に浮かんできたらしい。それと、俺は肉体強化、美琴は勇なる者、と言う言葉も一緒に浮かんできたらしい。もしかすると、それが俺や美琴の固有スキルなのかもしれない。町長に聞いた話では、人は1人1つずつ特別な力があるらしい。町長は望遠という固有スキルで、遠くのものまではっきりと見える、そんなスキルだといっていた。ちなみに、その際魔力は消費するらしい。


押井は自分をみることはできないらしく、押井の固有スキルはわからない。町長はそのうちわかると言っていたので大丈夫だろう。


本によると、剣士のスキルは剣覇というもので、剣を構えていると、相手が怯えるらしい。格上の魔物には通じないらしく、何とも言えない微妙な能力だ。それに比べて、魔法剣士の能力は魔法付与というものらしく、剣などに魔法を付与することができるらしい。それを聞いて少し羨ましかった。魔法剣士になれば、憧れの火炎斬やら氷結切りができるというのだ。


薬草の採取は順調に進んだ。丘陵て採取していたのだか、取り尽くしたためもう少し町から離れたところに行った。少し歩くとそこには奇妙な洞窟の入り口があった。


「なあ、入ってみない?」


美琴が提案する。俺や押井は賛成し少し洞窟探検をすることにした。


洞窟のなかは意外に広く、少し寒かった。美琴か火をつくってくれたため、あかりには困らなかった。


「あ、コウモリ!」

「コウモリじゃねーだろ」

「多分違うよ。羽が4枚あったし…」

「というか、この洞窟とても広いな」

「ああ、美琴の言うとうりかれこれ20分は歩いているぞ」

「あれ、もしかして押井つかれたの?」

「おまえといっしょにするなよ、疲れるわけないだろ」


俺たちは雑談しながら奥へと進んでいた。


この時俺たちは油断していた。初めての異世界の冒険で浮き足立ったのか、はたまた、元の世界のような軽い気持ちで歩いていたのか、とにかく油断していた。だから、こんな結末になってしまった。


物陰から現れたのはゴブリンだった。数は全部で二体。俺たちは腰から剣を抜く。押井は杖を持っていた。


町長やクリスティアさんの言う話では、ゴブリンは1対1でも落ち着いていれば冒険者じゃない人でも倒せるらしい。俺が1体、美琴が1体、押井は俺たちの補助という形で戦いを始めた。


はじめにゴブリンに仕掛けたのは美琴だった。振り下ろされた剣はゴブリンの腕を切り落とした。美琴はその感触にか、少し嫌な顔をしていた。その一撃が合図となって戦闘は始まった。俺は1体のゴブリンと向かい合う。ゴブリンはナイフを振り上げ襲いかかってくる。俺はそれを剣で受け止め、力ではじきかえす。そこを切った。嫌な感触が手に伝わる。傷は浅く死んではいないようだ。俺は剣を振った反動でこけてしまった。その時押井がナイフを振りかざして走ってきて、ゴブリンの胸元へナイフを突き立てた。


押井は俺の方に振り返り、やったぜ、という仕草をしてきた。俺も指を立て、ナイス、と声をかけようとした時、ナイフで胸を刺されたゴブリンが起き上がり、それに気づいていない押井にナイフを振りかざした。


グサッ


それは一瞬だった。俺たちは油断していた。殺し合いということを忘れ、ゲーム感覚で戦っていたのかもしれない。


「大丈夫か!?」


俺は押井に駆け寄る。倒れているゴブリンにナイフを突き立て殺しておく。美琴の方も戦闘は終わっていて、駆け寄ってきた。


「押井、大丈夫か!?」

「守!大丈夫か!?」


押井は呻きながら答えた。


「…み、すった。なん、で、こんなこ…」


そう言って、押井の頭はがくりとたれた。死んだ?押井が死んだ?なんで、こんなことに…。


たっちゃんに続いて、押井も死んでしまった。俺たちはそのことに心を失ってもう何も考えれなかった。


俺と美琴がどうやって町に帰ったのかは覚えていない。


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