脱出
「ネイロ……もしかして死んだか?」
「もしも私が死んだら故郷の墓地に埋めてくれる?」
「なんだ生きてたのか」
「残念ながら死に損なったみたい」
「んじゃさっさと掴まれ。ここから脱出するぞ」
「なんかカナメ君が白馬の王子様に見えるんだけど、それは私の気のせい?」
「気のせいだ。頭を強く打ったんだろう」
「ひどい。レディーに対する気遣いとかもう少しどうにかならないの?」
「……やっぱ置いて行こうか?」
「ダメダメ。意地悪しないで助けてよ~」
「ちっ、仕方ねぇーな」
「ありがと。大好き」
抱擁するように抱きつくネイロ。崩落する洞窟から脱出する前にダヴィンチの死に顔を一目見た四条要は別れを告げるように視線を逸らすと洞窟の出口を目指して走り出す。
「痛い! また石が当たったから気をつけてよ!」
「うるせえ黙ってろ。文句があるならここで降ろすぞ」
「やっぱカナメさんって血も涙もない人だね~」
「ところで私とミラちゃんってどっちの方が触り心地いいの?」
「……知るか」
お互いを励ますように馬鹿なやり取りをしている間に薄らと見えてきた一筋の希望の光。
達成感と安堵で胸がいっぱいになりそうだったが、それに堪えた四条要は最後の最後まで気を抜く事無く一気に洞窟を脱出した。




