次代の聖女
「“火龍演舞”!」
大火が燃え盛るかのように眩く灯るミラの身体。
「はああああああああああああっ!」
師が師なら弟子も弟子。馬鹿正直な真正面からの正攻法。
普通に考えれば先刻の自分と同じく結界に阻まれ強引な突破を試みたところで弾き飛ばされるだけだろう。
最初こそそう思っていた四条要だったがミラの体に思わぬ変化が生じ始めた。
「あれは……まさか……」
その背中には天使を彷彿とさせる純白の翼。
ミラ自身はその変化に気付いていないようだったがまず間違いない。
「ククク……」
「ダヴィンチ! 何がおかしい?」
「数奇な運命を感じる。どうやら次代の聖女はお前の弟子のようだな」
「……そうのようだな」
オルレアに託された《意志》と《剣》の本来の持ち主は自分などではなかった。
それを悟った四条要は静かに天を仰ぐと問い掛けるように小さく息を吐く。
「俺は通過点だったか……」
できる事なら自らの手で片付けたかったと思う一方で肩の荷が下りた清々しい気持ち。複雑に絡み合う二つの感情は到底合理的な処理ができるものではなかった。
それでも思うことはただ一つ。
弟子が自分の期待を裏切るはずがないという自負にも似た確信。
意識的に隠そうとしても口元の緩みだけはどうにもならなかった。




