英雄の戦い
「ずいぶんと仲が良い。正直羨ましいよ」
「なんならあんたも仲間に入れてやろうか?」
「フッ、ありがたい申し出だが遠慮しておく」
戦いとは無縁とも思える和やかで落ち着いた場の雰囲気。
ミラの脳裏には和解という二文字が浮かんだ。
――しかし、それは儚くも消えた。
ほんの一瞬で様変わる場の空気。
そこにいたのはピリピリと張り詰めた空気を醸す二人の殺人鬼だった。
「んじゃ、やるか」
「ああ、ゆくぞ!」
踏み出す一歩から繰り出す剣筋までが示し合わせたように鏡写し。
両雄一歩も譲らない剣撃の応酬は援護で貢献しようと息巻くミラを傍観者に仕立て上げるには十分過ぎる迫力だった。
「“光の波動”!」
絶妙なタイミングでの目くらまし。
百戦錬磨の戦績に裏付けられた恐るべき戦闘巧者。
一時的に視界を封じられた四条要は一手遅れて防御に転じる。
「“闇の波動”!」
そんな四条要の動きを先読みしたダヴィンチの魔法。
大砲から撃ち出されたかのような放物線を描いた四条要の体は勢いよく壁に激突した。
「がはっ……」
吐瀉物のような吐血と全身を駆け巡る鈍い痛み。
しかし今はそんな事どうでもいい。
不死者の自分が感じる痛みは完治するまでの間だけだが弟子は違う。
あろうことか四条要は敵であるダヴィンチよりもミラを視界に捉えようと必死だった。
「壁にめり込んだ状態では流石のお前でも避けれまい。これで終わりだ!」
四条要の前に躍り出たダヴィンチはトドメとばかりに剣を振り上げる。
魔法での攻撃は布石。
すべては不死者である四条要の動きを封じ込めるための策略だった。




