真実
「君がそうか……お初にお目に掛かる。ミラ・アースガルド」
「初めましてダヴィンチさん。なぜボクのことを?」
「その姿、やはり血は争えないな」
「えっ?」
「両親のことはその男からなにも聞かされていないのか?」
「よせ、ダヴィンチ」
「組織の命とはいえ君の本当の両親であるエリス・アンフルとルロイ・アンダーソンを殺めたのは紛れもなくそこにいる男だ」
じつの両親を殺めたのは師である四条要やウインド・ネイロであるという可能性。
何度も考えはしたが意識的に否定し続けてきたミラにとってダヴィンチの言葉はまさに心に刃を突き立てられたようなものだった。
「貴様ッ!」
激昂した四条要がダヴィンチに襲い掛かるも、それを容易く往なしたダヴィンチは意地悪そうに口元を緩める。
「なにをムキになる必要がある。彼女には知る権利があるはずだ。殺戮部隊に所属していた両親が我々を裏切った結果、粛清された事もな」
「世の中には知らなくていいことだってある。余計なことを言いやがって!」
「子の将来を案じ、苦肉の策として盟友にすべてを託し、自らの死をもって組織の目を欺いた立派な両親だ。機会があれば是非とも一度会ってみたいと思っていたが、まさかこのような形で出会うとはな」
魔法使いとしての潜在的な資質は両親はおろか自分すらも凌駕するかもしれない。
ダヴィンチは一目ミラを見た瞬間からそれを感じていた。
「もしも両親との再会を望むのならば一緒に来るといい」
「何を言って……」
「信じられないだろうが俺は過去をやり直すつもりだ。もしも君にその気があるのならば一緒に連れていってもいい。望めば両親が死なずに済む未来を創ることもできる」
常識的にいえばそんなことは不可能。なぜなら魔法は全能ではないからだ。
一重に魔法と言っても、できる事とできない事の大まかな境界線ぐらいはある。
過去をやり直すなどは明らかに後者。どう考えてもできない事に分類される。
それが分かっていてもなお「もしかしたら……」と思ってしまう心理。
自分でも違和感を覚えるほどにミラは初対面の男に心を揺さぶられていた。




