介入
「これは……まさか……」
本来ならば取るに足らない頬の掠り傷。
四条要を狼狽えさせたのは傷を負ったという事実そのものではなく自身の身体に宿っているはずの不死の再生能力が発動しないということだった。
よもやとは思いつつも理由なんてものは一つしか思い浮かばない。
「ただの剣ではないと思ってなかったがやはり何か能力があるな……?」
「不死者はその能力にかまけて胡坐をかく者が多いが序列四位。やはりお前は違うな」
「さっき言ってた勝算ってのは不死者の不死能力を封じる剣ってことか。もしも相討ちを狙ってたら今頃はヤバかったな……」
思いもよらなかった状況に冷や汗が頬を伝う。
――不死封じ。
その存在は以前より知っていたが実際にお目にかかる機会は今までになかった。
もしもミラの横顔が浮かばなければ今頃は相討ち覚悟で勝負を仕掛けていたかもしれない。
四条要は自らの用心深さを心の底から感謝した。
「カナメさん!」
そんな中で唐突に四条要の耳に届いた女の声。
慌てて振り返ってみるとそこには本来いるはずのない人物が立っていた。
「ミラ……なんでお前がここにいる?」
「なんだか悪い予感がして……その、呼ばれた気がしたの」
「……何を言っている?」
「わからないけどそう直感したの。カナメさんが危ないって……」
ミラの答えは四条要の理解の範疇を超えていた。
内心では馬鹿馬鹿しいと思いつつも頭を冷やし冷静に現状を分析する。
そして最善と思われる選択肢を導き出した。
「来てしまった以上は仕方がない。あの男がダヴィンチだ」
「序列一位……」
「油断するな。俺と同じぐらい強いぞ」
「うん。それは見ただけで分かった」
もしもダヴィンチが奥の手を隠し持っているとしたら敗色は濃厚。
ミラという援軍は四条要にとってもダヴィンチにとっても誤算でしかない。
――果たしてそれは吉と出るか凶と出るか。
自分の弟子が戦いの鍵を握っているような状況に四条要は妙な高揚感を覚えた。




