虹色旋風
「“虹色旋風”!」
ネイロの前に発生する虹色の竜巻。
それはもはや天災と言っても過言ではなかった。
「うわあああああっ」
突撃した精鋭たちは為す術もなく虹色の竜巻に巻き込まれる。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
天災を前にして人間が勝てる道理なんてものはなかった。
「お気に入りの服だったのに……これはもう処分確定ね」
空から降ってきたのは肉塊と血霧雨。
ネイロの限定魔法に巻き込まれた者は原型を留めていなかった。
「“光輪縛鎖”!」
視界の悪化を好機とばかりに思わぬ反撃。
命中こそしたがダメージらしいダメージは受けてない。
そのことはネイロの経験上マズい事に分類された。
「何よ。これ……」
案の定ネイロの手首には動きを制限するような光の輪。
すぐさま破壊を試みたところで非物理的なものであるがゆえに破壊は不可能。
瞬時に思いつく解決策としては術者に解かせるかあるいは殺すかの二択だった。
「くっ……」
そうこうしているうちにどっと押し寄せてきたのは強烈な倦怠感。
まるで不眠不休での戦闘を何日も強いられているかのようだ。
その事から判断して四人の殺戮部隊の紅一点の限定魔法は脱力系。
一対一ならまず相手にならないが、現状では厄介な使い手となり得た。
「ああ……思い出した。あなたは確か殺戮部隊のスカウトリストに載ってた予知能力者」
「それは私の能力の一つに過ぎません。本職はあくまで戦闘員です」
「そうだったの。とりあえずあなたは厄介だから最初に殺すわね」
「追い詰めれているのにその余裕は流石ですね」
「あら、ハンデとしては丁度いいぐらいに思っているのだけど」
「今回の戦いで犠牲になった方々はあとで必ず弔います。貴女を含めて」
「無駄話をするな序列四十三位。好機だ、一気に畳み掛けろ!」
攻撃を躊躇する手下に総攻撃を命じる全身包帯姿の男。
殺戮部隊のメンバーが動き出す気配を見せないことからネイロの消耗を狙っているのは明らかだったが、それが分かっていてもなおネイロは限定魔法を発動せざるを得ない状況だった。
「“虹色旋風”!」
命知らずな愚者を盛大に蹴散らす七色の狂風。手下は成す術もなく全滅した。
光の輪の影響か一回の攻撃で消耗した魔力は通常時の倍以上。
体感的な疲労はすでにピークを迎えていたが、ここで倒れるという選択肢はなかった。




