殺戮部隊
凍てつく場の空気。初対面の、ましてや少女を相手に失礼極まりないその質問。
ミラは四条要という人物の情報を四方八方手を尽くして時には触法行為にまで及んで収集したが、結局はそのほとんどが分からず仕舞いに終わり――ごく限られた情報から四条要の人物像を想定していくつかの対応パターンを考えていたが、四条要のその一言はミラの努力を一蹴するに等しかった。
「なんなの……こいつ……」
「まずは俺の話を聞いてくれ」
「まさか四条要がこんなクズだったなんて計算外だわ……」
「俺の体に打ち付けれている聖釘は肉体的に清らかな女しか抜けない代物なんだ」
「はぁぁ……最悪。どうしてこんな男が頼みの綱なの……」
「今の俺の話聞いてたか?」
「聞いてたわよ! バカ! 死ねッ!」
「お前絶対聞いてなかっただろ……」
噛み合わない会話。双方にとってその第一印象は最低最悪だった。
デリカシーのない男と話を聞かない女。それは双方が最も苦手とするタイプ。
――どうしてよりにもよってこいつなのか?
奇しくも二人が思ったのはまったく同じことだった。
「……躾のなってない番犬を外に放っていたのはお前達か?」
突然背後から投げ掛けられた声にミラ達一行は慌てて振り返った。
「ドレイク! メイ!」
どさりと投げ捨てられたのは外で待機を命じられたはずの二人の聖騎士。
不吉を孕んだ漆黒のローブを纏った三人組が一行の前に立ち塞がった。
「聖騎士を殺るとは驚いた。何者だ?」
「……聖騎士団団長のバートミックス・アウロか」
「私の質問に答えろ!」
「我々は“亡霊”だ。地獄の底よりお前達に復讐しにきた」
明確な殺意。背筋をゾッとさせる悪寒が疾風のように全身を走り抜ける。
ミラは即座に亡霊と名乗った連中から十分に距離を置いて身構えた。
「なんて乾いた殺意……。まるで何も感じない」
人には感情があり魔法使いならそれを気配として感知することができる。
たとえ相手が具体的に何を思っているのかまでは分からずとも、自分に向ける感情が一定以上の強さであるならば喜怒哀楽といった大まかな分類ぐらいは十分に可能。にもかかわらずローブの者達からは殺意以外に何も感じない。通常ならば憎しみや悲しみといった負の感情があって然るべきなのにそれがない。ミラはそのことが不気味で仕方がなかった。
「ミラ、下がってなさい。連中はプロだ。人を殺すことに抵抗がない」
「そんな……」
「一人一人が私と同程度。それほどにまでに彼奴らは強い」
聖騎士団団長のアウロと言えば今や大陸一の魔法使いとして呼び声高い人物。
そんな男の背中に冷や汗を流させるほどの強者――。
アウロは直感してしまった。そして思わずそれを口走ってしまった。
「殺戮部隊か……」