師弟
外に出るなり子犬のように駆け寄ってくる人影。
四条要はそれを微笑ましく思いつつ弟子の頭の上に優しく手を置いた。
「ちょっと……子供扱いしないでくれる?」
「実際ガキだろうが」
「で、どうだったの。私達でやらせてくれるって?」
「ああ、そのかわり失敗したら殺すってよ」
「さては強引に押し切ったわね……」
容易に想像できるその場のやり取り。
すべてを任せられるほどの信用がないとまず成立しなかっただろう。
とてもじゃないが今のミラには真似できないことだった。
「ネイロのやつはどこいった?」
「さあ……? なんか風と話してくるって言ってたけど……」
「あいつが牙を磨くって相当だな」
「ふーん、そうゆうことだったんだ」
「それよりも腹減ったから飯食いに行こうぜ」
「さっき食べたばかりなんだけど……」
「成長期なんだから付き合えよ。でないと将来ネイロのようになれないぞ」
「あのね、デカけりゃいいってもんでもないでしょ!」
「おかしいな。俺は胸の話なんてした覚えはないんだが……」
「嘘つき! 絶対にボクの胸を見てから言った!」
「いい加減わけのわからんキャラ作りやめて“ボク”は卒業しろよ。気付いていないみたいだから教えといてやるが傍から見るとすげー痛々しいぞ」
「うっさい! 今日こそブン殴ってやる!」
「バーカ、お前のノロマなパンチなんて誰が当たるかよ」
「ムキーッ! 今日こそは!」
多くの聖騎士が迷惑そうに見守る中で普段通りに振る舞う師弟。
騒ぎを聞きつけテントから出てきたアウロはその光景を見て頭を抱えた。
「……ホントに大丈夫なのか」
だが、そのぐらいの余裕がないと困る。
世界の命運を左右しかねない状況で不謹慎だとは思いつつもアウロはそんな二人に期待の眼差しを送ると静かに元いた場所に戻っていった。




