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殺戮部隊と弟子  作者: 水無月14
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白銀世界

 「“白銀世界スノーホワイト”」


 辺り一面を氷の世界に変化させるほどの大魔法。

 草も木も水も建物さえも例外なく凍てつき氷のモニュメントと化した。

 限界を超えた代償として雪のように真っ白になったレグナの体は所々にヒビが生じ、やがては音を立てて崩壊を始める。

 「綺麗な雪景色ッスね……」

 最後に満足げな表情を浮かべてレグナの身体は粉々に砕け散った。


 「その覚悟、しかと見届けたぞ」


 戦士として仲間の最後を称えるベルガ。

 感傷もほどほどにベルガは残された自分の責務を果たさんと歩き始める。

 「終わりだ小娘。貴様もレグナ同様粉々に砕け散るがいい」

 レグナの命と引き替えに体の芯まで氷漬けとなった少女。

 氷塊と化したミラを完全破壊する事こそがベルガに残された責務だった。


 「むっ……?」

 不意にパチパチと何かが弾ける音。最初は気のせいだとも思った。

 「何だ……?」

 脳裏をよぎる悪い予感が意図せずベルガの足を加速させる。

 普通に考えればあり得ない。あっていいわけがない。

 そうは思いつつもベルガの心には確かな焦りがあった。

 「まさか……そんなはず……」

 氷塊に走るヒビ。それは瞬く間に全体に広がった。

 もはや割れるのは時間の問題。

 あまりの光景にベルガは唖然としたが、すぐに気を持ち直した。

 「くっ……させるか!」

 中途半端な攻撃で粉砕できるほどレグナの氷はヤワじゃない。

 ベルガは目標目掛けて跳躍した。

 岩盤をも砕く必殺の拳で周囲の氷もろとも完全に小娘を粉砕することだけを念頭にベルガは拳に力を込めた。

 「これで終わりだ!」

 拳が氷塊に激突すると同時に殻を破るように溢れ出たのはベルガの巨体を押し戻すほどの水蒸気。

 耐え難い熱気。

 ベルガは逃げるようにその場から退いた。


 「ハァ……ハァ……」


 やがて聞こえてきたのは自分とは明らかに違う息遣い。

 今にも倒れそうな足取りではあったが件の少女が蒸気の中から姿を現した。

 「なんてやつだ……。だが、これで仕留める!」

 ベルガにとって人体破壊など造作もない。ましてや満身創痍の状態ならその防御力は常人に等しいだろう。

 それでも念には念を込め――ベルガは拳にありったけの力を込めミラ目掛けて走り出した。


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