属性の相性
「“散氷乱雨”!」
空気中の水分を凝縮した高密度の氷の飛礫。
数千あるいは数万にも及ぶ“氷弾”はレグナが手を振り下ろすのを合図に絨毯爆撃のようにミラとセルヴァスに襲い掛かった。
「“天地雷鳴”!」
迎撃するように限定魔法を発動させるセルヴァス。
広範囲に雷撃を展開するセルヴァスの限定魔法はレグナの攻撃を蒸発させ完全に封殺する。
「うはっ、相性悪すぎっしょ……。一対一じゃまず勝てる気しないッスね……」
呆れ果てるようにそう漏らすレグナ。
魔法使いとしてセルヴァスとレグナ――両者の実力に大きな差はない。
ゆえに勝敗を左右するのは限定魔法の相性。
それは捕食者と被食者の関係といっていいぐらい一方的なものだった。
「申し訳ないっすけど、あとはよろしくッス」
だが戦いは二対二。
一方の相性だけで勝敗が決まるほど単純なものではない。
「フン……」
レグナの言葉を受けて前に出るベルガ。
ベルガがおもむろに右手を前に突き出すと、避雷針とばかりにその手に雷撃が集中した。
「“雷獣変化”!」
その名を“麒麟”――電気を帯びた獣へと変化するベルガ。
民家を見下ろせるほどの巨躯。
大昔の戦争でそのほとんどが死に絶えた《幻獣種》と呼ばれた亜人の生き残りは怯むこと無く反撃を開始する。
「“雷啼”!」
大きく開いた口から放たれた雷光は瞬時に草木を蒸発させ地面を穿つ。
――事実上の即死攻撃。
右手で受けた魔法をもとにその属性の獣へと変化できるベルガの限定魔法は対峙した相手を絶望のどん底に叩き起こすには充分過ぎる代物だった。




